第5編 遺産をどうするか
第五編 相続
第7章 天国へ行く前に伝えておきたいことを
第七章 遺言
第5編 第8章 相方に死なれても住み続ける
第5編 第6章 相続する人がいない場合
第1節 この章全体でいえること
第一節 総則
遺言を書くには
- 第960条
- 民法の規定にそぐわない遺言は、認められません。
原文
(遺言が認められる年齢)
- 第961条
- 十五歳になったら、遺言が認められます。
原文
原文
- 第963条
- 意識を失っていたり、人に情報を伝える能力を失っている時に書かれた遺言は認められません。
原文
遺言をしたら、遺言をしても
- 第964条
-
遺言をしたら、遺産の割合に応じて譲ったり、具体的な遺産を指定して譲ることができます。
遺言をしても、相続人には一定の遺産を受け取る権利として遺留分が認められますので、この規定に従えば遺言があっても相続人の遺留分は保証されます。
原文
相続の場合と同じように
原文
後見人のためになる遺言は
- 第966条
-
契約は約束ができない理由があるから後見を受けているわけだから、後見人のためになるようなことが書かれている遺言というのは正確性や公平性を見極めることができません。
したがって、後見の清算が終わった場合をのぞき、後見人やその結婚相手あるいはその子や孫に有利なことが書かれている遺言というのは、有効とは認めません。 - 2
- 両親・子や孫・結婚相手・兄弟姉妹が後見人を務めている場合は、有利な遺言だからといって無効とはみなしません。
原文
第2節 遺言の遺言のやり方
第二節 遺言の方式
第1款 普通はこのやり方で
第一款 普通の方式
特別のやり方をのぞき
- 第967条
-
遺言は自筆証書、公正証書、秘密証書のどれかによって行います。
場合によっては特別のやり方も認められることもあります。
原文
自筆証書による遺言
- 第968条重要
- 自筆証書による遺言は、全ての文章、日付・氏名を自分で書き、捺印を押す必要があります。
- 2
-
遺言の中に財産の目録を記載する場合に限り、自筆でなくてもかまいません。
自筆でない部分には必ず該当するページ全てに自筆の署名と捺印が必要です。
裏表に自筆でない部分がある場合、その両面に自筆の署名と捺印が必要です。 - 3
-
遺言や財産目録の追加や変更をするには、自分で変更場所を指定し、変更を行なったことを書き添え、署名し、変更した場所に押印をする必要があります。
これらがされていないと追加や変更は有効になりません。
原文
公正証書による遺言
- 第969条
- 公正証書を使って遺言をする場合は、以下の手続きをふんでください。
- 一
- 二人以上の人の証人に立ち会ってもらってください。
- 二
- 遺言をする人は公証人に遺言の内容を話して伝えてください。
- 三
- 公証人は言われたことを記録し、書き終わったら遺言をした人と証人に読み聞かせて確認するか、自分で読んで確認をしてもらってください。
- 四
-
記録の内容に間違いがないこと確認したら、遺言をした人と証人は署名と捺印をしてください。
遺言をした人が署名をすることができない場合には、公証人が事情を書き添えれば署名をしたことと同じ扱いとなります。 - 五
- この証書がこれまでの手続きをきちんとふんでいることを公証人が書き添えて、署名し、捺印をしてください。
原文
特別な事情がある場合の公正証書による遺言
- 第969条の2
-
話す力の無い人が公正証書による遺言をするには、通訳できる人を介して公証人や証人の目の前で遺言をする人の言いたいことを汲んで遺言の内容を聞き取ってください。
公証人は本人から言われたことを記録する代わりに、通訳の人に書き記してもらってください。 - 2
- 聞く力のない人が公正証書による遺言をするには、書き記した内容を当人や証人に確認してもらうことで、読み聞かせによる確認の代わりとすることができます。
- 3
- 話すことができない人や聞く力の無い人のために遺言の公正証書を作成した場合は、証書に、話す力や聞く力の無い人のための方法で証書を作成したことを書き添えてください。
原文
秘密証書による遺言
- 第970条
- 秘密証書を使って遺言をする場合は、以下の手続きをふんでください。
- 一
- 自分が作った遺言書には署名と押印をしてください。
- 二
- 自分で証書に封筒に入れて封をして、遺言書に押印した印鑑で封筒の封の部分にも印を押してください。
- 三
- 一人の公証人と二人以上の証人の前で封書を差し出して、自分の名前と住所を明らかにして、自分が作成した遺言書であることを伝えください。
- 四
- 証書を受け取った日付と、遺言書を作成した人の名前と住所を封筒に書き添えて、遺言をした本人と証人といっしょに署名と押印をしてください。
- 2
- 自筆証書による遺言書に追加や修正をする場合の規定(第九百六十八条第三項)は、秘密証書による遺言の場合も同じように適用することとします。
原文
秘密証書としては不備があっても
- 第971条
- 秘密証書による遺言の手続きの不備のために秘密証書による遺言としては成立しなかったとしても、自筆証書による遺言の手続きに不備がなければ、自筆証書による遺言として成立します。
原文
事情がある場合の秘密証書による遺言
- 第972条
-
話す力の無い人が秘密証書による遺言をする場合、次の方法で秘密証書としてとしての手続きとすることができます。
- 公証人と証人が見ている前で、用意してきた証書が自分が作成したもので間違いないことを伝える
- 自分の名前と住所を、通訳の人に聞き取ってもらうか自分で封書に書き記す
- 2
- 話す力の無い人が通訳の人の力を借りて秘密証書による遺言書を整えた場合、公証人にそのことを封書に書き記してもらってください。
- 3
- 話す力の無い人が自分で封書に書き記して秘密証書による遺言書を整えた場合、公証人がそのことを封書に書き記して、秘密証書としての手続きを整えてください。
原文
成年後見人が遺言をする場合
- 第973条
- 成年後見人に面倒を見てもらわなければならない人であっても、遺言をすることができるぐらい体調が良くなった場合には、二人以上の医師が立ち会うことを条件に、遺言を作成することが認められます。
- 2
-
成年後見人が遺言をする場合、遺言書には立ち会った医師の署名と押印をもらうだけではなく、問題なく意識も判断力もあることを書き添えてもらう必要があります。
成年後見人が秘密証書による遺言をする場合は、自分で署名と押印をするだけではなく、問題なく意識も判断力もあることをその封筒に書き添えてください。
原文
遺言の証人や立会人になれない人
- 第974条
- 以下に該当する人は、遺言の証人や立会人としては認められません。
- 一
-
- 未成年者
- 二
-
- 相続人に該当する人
- 遺言により遺産を受け取る権利が得られる人
- 上記の人の結婚相手やその直系の親族
- 三
-
- 公証人の結婚相手や四親等以内(いとこ相当)にあたる親族
- 公証役場に勤務する書記官や職員の方々
原文
二人以上で一つの証書に遺言をしても
- 第975条
-
遺言は一人一人が個別の証書に記載してください。
二人以上で一つの証書に記載したら、遺言としては認められません。
原文
第2款 特別な場合はこのやり方で
第二款 特別の方式
今にも亡くなりそうな人の遺言
- 第976条
-
病気や怪我で死にそうな状態での遺言は、三人以上の証人に立ち会えば、その内の一人が聞き取るという方法が認められます。
聞き取った人は内容を記録し、遺言をした本人と証人に読むか、聞かせて内容にまちがいのないことを確認してもらう必要があります。
確認ができたら、証書に証人の署名と押印をしてください。 - 2
- 死にそうで、ちゃんと口が聞けない状態での遺言は、話を聞いてもらう代わりに、証人の目の前で通訳ができる人に訳してもらいそれを記録する方法が認められます。
- 3
- 遺言をする人や証人の中にちゃんと耳が不自由で聞き取り確認ができない場合、この人に伝わる方法で通訳してもらい、記録した内容を確認する方法が認められます。
- 4
-
この条の方法で遺言をした場合、その日から二十日以内に家庭裁判所に遺言を認めてもらうように要請をします。
この要請は、証人の一人か、遺言による利害に関わる人が行います。 - 5
- もし家庭裁判所が本当にこの内容で遺言をしたのか疑わしいと判断したら、認めない場合もあります。
原文
伝染病にかかっても
- 第977条
- 法定伝染病にかかったため隔離されている人は、一人の警察官と一人以上の証人が立ち会えば、遺言書を作成することができます。
原文
航海中の船乗りも
- 第978条
- 航海中の船乗りは、船長か船舶事務にあたる乗員一名と、二人以上の証人が立ち会えば、遺言書を作成することができます。
原文
遭難した船の中での遺言
- 第979条
- 乗っていた船が遭難して、いつ命を落とすかもしれない緊急事態の場合、紙に記録をしなくても、二人以上の証人が内容を聞いてくれれば、遺言をすることができます。
- 2
- 遭難したのが話す力の無い人だった場合、遺言を成立させるためには、ちゃんと通訳をしてもらう必要があります。
- 3
-
遭難して船中で遺言が行われ、正式な遺言書として認めてもらうには、無事に上陸した後に次のことを行う必要があります。
- 遺言の内容を記載して、証人の署名押印する
- 証人か、遺言によって利益を得る可能性がある人が家庭裁判所にすみやかに遺言書の内容の確認を要求する
- 4
- 裁判所が確認しても本物の遺言かどうか疑わしい場合の規定(第九百七十六条第五項)は、遭難中の遺言作成の場合にも同じように適用することとします。
原文
関わった人は署名・押印を
原文
署名・押印をしない人がいたら
原文
普通の場合の規定も同じように
原文
普通のやり方で遺言ができるようになったら
- 第983条
-
特別な場合の遺言に該当する場合、正常な状況判断の下で遺言をしていないケースが想定されます。
普通のやり方で遺言ができるようになって六ヶ月以上生き長らえたら、正常な状況判断の下で遺言を作り直せるように、その際の遺言は無効となります。
原文
国外で遺言をしようと思ったら
- 第984条
- 国外においても領事が駐在している国であれば、公証人による手続きが必要な公正証書を使う遺言や秘密証書を使う遺言を希望したら、公証人の代わりを領事に務めてもらって遺言をすることできます。
原文
第3節 遺言に従って
第三節 遺言の効力
遺言の効力が始まる
- 第985条
- 遺言は、遺言を遺した人がお亡くなりになった時から効力が始まります。
- 2
- 遺言の中に条件がついている場合は、遺言を遺した人がお亡くなりになった後で、その条件が達成された時に遺言の効力が始まります。
原文
遺産を受け取る権利の放棄
- 第986条
- 自分の意志に反して、遺言によって遺産の権利を受け取ることになったとしても、遺言を遺した人がお亡くなりになって、遺言が実現される段階になったら、受け取る権利を放棄できるようになります。
- 2
- いったん遺産の権利の受け取りを放棄したら、遺言の実行によって受け取った遺産の権利は返還しなければなりません。
原文
遺言通り受け取るのか、放棄するのか
- 第987条
-
遺言によって遺産を受け取る権利を得た人が、その権利を行使するのか放棄するのかはっきりしてもらわないと、遺産の実行が進みません。
そこで、この人に対して、遺産の権利を譲り渡す側の関係者や遺産による利害の関係者は、十分な期間の内に行使するのか放棄するのかを決めるように、催促をしてもかまいません。
もしその期限内に何も返事をしなければ、「遺言通り権利を受け取る」と理解をしてもかまいません。
“遺産の権利を譲り渡す側の関係者”のことを《遺贈義務者》といいます。
原文
どうするか決める前にお亡くなりになったら
- 第988条
-
遺言により遺産を受け取る権利を得た人が、この権利を行使するのか放棄するかを決める前に、お亡くなりになることがあるかもしれません。
その場合は亡くなった人の代わりに、その相続人が受け取る権利を行使するのか放棄するのかを決めることになります。
もっとも遺言の中でこのような場合の指示が記載されていれば、その記載が優先されます。
原文
受け取りを認めたり放棄をしたら
- 第989条
- ひとたび遺言によって遺産を受け取る権利を行使するか、放棄するかを決めたなら、後になってこの決定を翻すことはできません。
- 2
-
相続の承認や放棄の決定を撤回する場合の規定(第九百十九条第二項と第三項)は、遺言により遺産を受け取る権利の行使か放棄かを決める場合にも同じように適用します。
そのため、遺言の内容がこの章の規定に違反している場合は、決定の変更や取り消しが認められるようになります。
しかし、規定違反による決定の取り消しが認められてから六ヶ月たっても取り消しをしなければ、この決定は変更できなくなります。
原文
もらえる財産の割合を指定された人も
- 第990条
- 遺言で、割合を指定されて遺産を受け取る権利を得た人は、他の相続人の同等の権利を有して遺産を分け合う権利があります。
“遺言で、割合を指定されて遺産を受け取る権利を得た人”を《包括受遺者》といいます。
原文
もらえるはずなら担保を
- 第991条
-
遺言によって、時期がきたら遺産もらえることになったら、その時本当に遺産もらえるように、遺産を引き渡す立場の人に何か担保を要求できます。
遺言によって、条件が満たされたら遺産をもらえることになったら、その条件が確定した時本当に遺産をもらえるように、遺産を引き渡す立場の人に何か担保を要求できます。
“遺言に従って、遺産を引き渡す立場の人”のことを《遺贈義務者》といいます。
原文
遺産の利息や利潤も
- 第992条
-
「遺言通り遺産を受け取りたい」と請求できる瞬間から、その遺産から得られる利潤や利息も受け取る権利が認められます。
しかし、遺言の中に、「その利潤や利息を受け取る権利は認めない」という記載があれば、その記載通りにしてください。
原文
遺産を譲り渡す側でかかる経費は
- 第993条
- 留め置き費用の請求に関する規定(第二百九十九条)は、遺言によって遺産を譲り渡すまでにかかる管理費用を支払った場合にも同じように適用します。
- 2
- 遺産から得られる利潤や利息を回収するための費用を支払った場合、得られた利潤や利息の額を超えない範囲であれば、遺産を受け取る人に請求できます。
原文
先にお亡くなりになったら
- 第994条
- 遺産を譲り渡す、と遺言で指名された人が、遺言した人より先にお亡くなりになったら、遺言通りにする必要がなくなります。
- 2
-
条件がかなったら遺産を受け取れる、と遺言で指名された人が、条件がかなう前にお亡くなりになったら、遺言通りにする必要がなくなります。
しかし、遺言の中に、「条件がかなう前にお亡くなりになったら、このようにしてくれ」というような記載があれば、その記載通りにしてください。
原文
遺言通りにならなくなったら
- 第995条
-
遺言通りにする必要がなくなった場合や、遺言で得られた権利を放棄した場合、あるいは権利を失うようなことをやらかした場合、宙に浮いている権利は本来の相続人のものとなります。
しかし、遺言の中に、「遺言通りにならなくなったら、このようにしてくれ」というような記載があれば、その記載通りにしてください。
原文
自分のではないものを譲ると遺言しても
- 第996条
-
「死んだら譲る」と遺言しても、その時点で自分のものではない権利や財産を人に譲ることはできません。
その遺言の意図が、「自分の遺産で何かを購入して、それを譲る」ということなら、遺言通りでOKです。
原文
- 第997条
- 購入したり、譲ってもらうことにより、遺産として譲ることができるのであれば、遺産を譲り渡す責任を負っている人は遺言にかかれた通りに実現する必要があります。
- 2
-
手に入れられるはずだったのに手に入れられなくなったり、不手際により手に入れるための予算が足りなくなったら、遺産を譲り渡す責任を負っている人はそれに見合う費用を弁償しなければなりません。
しかし、遺言の中に、「手に入れられなくなったら、このようにしてくれ」というような記載があれば、その記載通りにしてください。
原文
遺産を引き渡す立場になったら
- 第998条
-
遺言に従って遺産を引き渡す立場になったら、財産や権利は相続開始時点の状態のまま引き渡してください。
特に遺言の中で状態について指定がある場合は、指定をした時点の状態のまま引き渡してください。
あえて遺言の中で状態を変更する指示がある場合は、その指示に従った状態にして引き渡してください。
原文
壊されたり、くっついたりした場合
- 第999条
- 遺言によって遺産として引き渡すつもりのものが、減らされたり、失くされたり、壊されたり、改造されちゃったせいで、損害賠償を受けることになったら、ものの代わりに損害賠償を受け取る権利が譲られたとみなされます。
- 2
-
遺言によって引き渡すつもりのものが、他のものとくっついたり混ざり合ったりして、一つのものになれば、その状態で遺言が実行されることになります。
これによって遺産が全て受け取る人一人のものになる場合は、まるまる全て受け取る人の持ち主とみなされます。
これによって遺産を共有で持ち合うことになる場合は、共有で持ち分のみの持ち主とみなされます。
原文
- 第1000条
- 削除
何かをしてもらえたり、お金を譲り渡すと遺言したのに
- 第1001条
-
遺言で、債権を譲り渡すと記載していたのに、自分が生きている内にその債権の弁済を受けてしまうとその債権は消滅してしまいます。
その場合に、債権によって何かものを受け取っていて、それが遺産の中に残っていたら、それを遺言で譲り渡される債権の代わりに受け取ってもらうことになります。 - 2
-
遺言で、具体的な金額に関係する債権を譲り渡すと記載していたのに、実際に相続が実行される段階になってみると記載の金額に見合う債権がなくなっていることがあります。
その場合は、債権の有無には関わらず、遺言の意図は具体的な金額であると判断されます。
原文
何かしなければもらえない遺産
- 第1002条
-
その人が何かしてくれたら遺産を譲るという内容の遺言を受けたら、それをしなければ遺産を譲ってもらうことはできません。
とはいえ、譲ってもらえる遺産に見合う負担を超えてまで何かをしなければならない、というわけではありません。 - 2
-
遺産を受け取ってもらえないことになったら、何かをしてもらうことによって利益を受ける人がいれば、この人が何かをしてもらう代わりに遺産を受け取ることができるものとします。
しかし、遺言の中に「遺産を受け取ってもらえない場合は別の方法で対処する」という記載があれば、その記載通りにしてください。
“何かしてくれた人に遺産を譲る”ことを《負担付遺贈》といいます。
原文
何かしなければならない条件が軽くなるケース
- 第1003条
-
その人が何かしてくれたら遺産を譲るという内容の遺言を受けても、次のようなケースでは想定よりも遺産が少なくなることがありえます。
これらのケースでは、遺産を譲ってもらうためにしなければならない条件も遺産が減る分だけ軽くすることが認められます。- 負債が多いために相続を限定承認したケース
- 相続人への遺留分が認められて遺産がそちらにも回されるケース
しかし、遺言の中に「限定承認や遺留分が認められた場合は別の方法で対処する」という記載があれば、その記載通りにしてください。
原文
第4節 遺言通りにするために
第四節 遺言の執行
遺言書があったら
- 第1004条
-
遺言を保管している人は、「相続が始まった」という知らせを受けたら、すぐにでも家庭裁判所に遺言書があることを申し出て、検査確認の要請をしてください。
遺言を保管していたわけではなくとも、相続が始まってから遺言書を見つけ出した場合も、相続人はすぐにでも家庭裁判所に遺言書があることを申し出て、検査確認の要請をしてください。 - 2
- 公正証書による遺言がある場合は、家庭裁判所に遺言があることを申し出る必要はありません。
- 3
- 相続人かその代理人が家庭裁判所へ行って、立ち会う場合以外、遺言書の封印を開けてはなりません。
原文
勝手に遺言を実行したら
- 第1005条
-
次のような手順をふまずに遺言を実行したら、ペナルティとして五万円を支払わなければなりません。
- 家庭裁判所に遺言書があることも知らせずに遺言を実行した
- 家庭裁判所で遺言書の検査確認を受けずに遺言を実行した
- 家庭裁判所以外の場所で遺言書の封を開けた
原文
遺言の実行人を決める
- 第1006条
- 遺言の中には、遺言の実行役を指名したり、遺言の実行役の決定約を指名して、書き記すことができます。
- 2
- 指名された遺言の実行役を了解したら、相続人たちに「自分が遺言の実行役になること」を遅れることなく通知する必要があります。
- 3
- 指名された遺言の実行役を了解をしない場合は、相続人たちに「自分は遺言の実行役にならないこと」を遅れることなく通知する必要があります。
原文
遺言の実行を任されたら
- 第1007条
- 遺言の実行役を引き受けたら、直ちにその任務にとりかかってください。
- 2
- 遺言の実行が始まったら遺言の実行役は取り急ぎ相続人に遺言の内容を伝える必要があります。
原文
実行役を引き受けるかの回答は
- 第1008条
-
遺言の実行役を引き受けるかどうかの返事をしないと、手遅れになる前に相続人やその遺言による利益に関わる人から「どうするつもりなのか」回答を催促されることになります。
催促の期間が過ぎても実行役を引きるけるかどうかの回答をしないと、実行役を引き受けたことになります。
原文
遺言の実行役をすることができない人
- 第1009条
- 遺言の実行役をすることができないのは、未成年の人と破産している人です。
原文
遺言実行役を選び出すには
- 第1010条
- 遺言の実行役を決めていない場合や、決めていた実行役がお亡くなりになった場合は、遺言により利益を得られるかもしれない人からの要請により家庭裁判所が遺言の実行役を選び出すことができます。
原文
相続されるべき財産の目録
- 第1011条
- 遺言の実行役になったら、無意味に遅くならないうちに相続される財産の目録をとりまとめ、相続人に配布してください。
- 2
-
相続人は、遺言の実行役に要請して、相続される財産目録の取りまとめに自分も立ち会うことができます。
相続人は、遺言の実行役に要請して、公証人に相続される財産の目録を取りまとめさせることもできます。
原文
遺言を実行をする際の権利と責任
原文
遺言の実行を妨げてはいけない
- 第1013条
- 相続人は、遺言の実行役に対して、相続財産の扱いなど遺言の実現する行為を妨げてはなりません。
- 2
-
相続人が、遺言の実行役の妨害をして遺言とは異なる進め方をしたとしても、遺言の実現という意味では無効となります。
ただし、実行役が妨害をしたことを知らずに、異なる進め方で影響を受けた人に対しては無効になることはありません。 - 3
- 遺言の実行役がいる場合であっても、被相続人に対する債権者は遺言の内容に関わらず、優先的に債務の履行を要求することが認められます。
原文
特定の財産だけが遺言の対象だったら
- 第1014条
- 遺言により特定の財産を譲り渡す場合、その財産に対して次の規定が同じように適用されます。
- 2
-
遺産の中の特定の財産について、ある所定の相続人だけに継がせると指示した遺言のことを《特定財産承継遺言》といいます。
遺言の実行役は《特定財産承継遺言》を実行するために、その他の相続人たちの法定相続分とは異なる相続が行われたことを登記したり登録することが認められます。 - 3
-
遺言の実行役は預貯金に関する《特定財産承継遺言》を実行するため、登記などを行う他に、預貯金の払い戻しや解約をすることが認められます。
もちろん解約できるのは、《特定財産承継遺言》の実行に必要な分に限られます。 - 4
- 《特定財産承継遺言》が残された後で、これとは別の遺言が遺されていたら、後の遺言に従うことになります。
原文
遺言の実行役がしたことは
- 第1015条
- 遺言の実行人がその任務のためということで行うことは、相続人の代わりに行ったこととして扱われます。
原文
遺言の実行役を人に任せることは
- 第1016条
-
遺言の実行役になっても、自分の責任においてその役割を他人に任せることが認められます。
とはいえ遺言の中で実行役がその役割を他人に任せることについての記載があれば、それに従ってください。
原文
遺言の実行役が何人もいる場合
- 第1017条
-
遺言の実行役が何人もいる場合、どうのように役割を果たしていくかを決めるのは実行役たちの多数決で決めることとします。
ただし遺言の中で、役割の決め方が指示されている場合は、その指示に従ってください。 - 2
- 相続財産を維持するために必要な処置に関しては、実行役たちの多数決にかける必要はなく、実行役が各々の判断で処置をしてもかまいません。
原文
遺言の実行役の報酬は
原文
遺言実行役を辞めるには
- 第1019条
-
次の場合に、遺言によって利益を得られるかもしれない人が家庭裁判所に要求したら、遺言の実行役を辞めさせるように命じられることがあります。
- 遺言の実行役がその役割をちゃんと果たしてくれなかった場合
- 遺言の実行役を辞めさせるれっきとした理由がある場合
- 2
- 遺言の実行役を辞めるには、ちゃんとした理由があって家庭裁判所が許可を得る必要があります。
原文
遺言を実行するための経費
- 第1021条
- 遺言を実行するために必要な経費は、遺留分をのぞく相続財産から支払われます。
原文
第5節 遺言を取りやめる
第五節 遺言の撤回及び取消し
遺言の撤回
- 第1022条
-
遺言を書いた本人なら、いつでも、その内容の一部でも全面的にでも撤回できます。
遺言を撤回する場合は、遺言に関する規定にしたがってください。
原文
前後二つの遺言の優先度
- 第1023条
- 新たに書き直された遺言の内容が、以前に書かれた内容と矛盾する場合は、以前に書かれた内容は撤回されたものと見なされ、新たに書き直された内容が有効となります。
- 2
-
次の場合も、遺言が撤回されたものと見なされ、以前に書かれた遺言の内容は無効になります。
- 遺言を書いた後でそこに書かれた財産を誰かに譲ってしまった場合
- 遺言の内容とは異なる約束や契約を結んでしまった場合
原文
遺言書を破り捨てたり、書かれた財産を手放したら
- 第1024条
-
遺言を書いた本人が、遺言書をあえて破り捨てたりした場合、その部分は遺言を撤回したことになります。
遺言を書いた本人が、遺言で指定した財産をあえて手放した場合も、同じように遺言を撤回したことになります。
原文
遺言を撤回したら
原文
遺言は誰かが勝手に撤回できない
- 第1026条
- 自分が書いた遺言は、誰かが勝手に撤回することはできません。
原文
決められたことをやらないと
- 第1027条
-
何かをしてくれたら遺産を受け取ることができる、ということにになっているのに、その気がない場合、決められた期間内にちゃんとしてくれと、相続人から催促されることになります。
決められた期間内にちゃんとしてくれそうにない場合、相続人から家庭裁判所に、この遺言の取り消しを要請されてしまうことになります。
原文
第5編 第8章 相方に死なれても住み続ける
第5編 第6章 相続する人がいない場合
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