第5編 遺産をどうするか
第五編 相続
第4章 相続を受けるか放棄するか
第四章 相続の承認及び放棄

第5編 第5章 遺産は勝手に使っちゃいけません
第5編 第3章 相続をしたら
第1節 この章全体でいえること
第一節 総則
相続を受けとるか、放棄するか
- 第915条重要
-
相続によって自分のところに遺産や権利が回ってくるとわかったら、3ヶ月以内にどうしたいのかを次の3つの方法から選ぶ必要があります。
- 単純承認
- 限定承認
- 放棄
- 2
- 相続により影響を受ける人や検察官から裁判所への要求によって、3ヶ月という期限を伸ばしても良いとお墨付きをもらうことができます。
原文
999
- 第916条
- 受けるか、放棄するかをあきらかではないまま相続人がお亡くなりになって、その相続の権利が自分のところに回ってきた場合、それ以前の期間がどうであれ、わかってから3ヶ月以内にどうしたいのかを決める必要があります。
原文
1000
- 第917条
- 未成年が相続人になった場合や、成年被後見人が相続人になった場合、本人がそれを知った時ではなくて、その法定代理人が相続のことを知った時から3ヶ月以内にどうしたいのかを決めれば良いこととします。
原文
1001
相続の決着がつくまで維持管理は
- 第918条
- 相続の決着がつくまで、遺産を預かっている人は自分の財産と同じように維持管理に心がけてください。
相続の決着が付く前に、相続を放棄すれば、遺産の維持管理の役目も終えることになります。
原文
1002
相続の承認や放棄の決定を撤回したり、取り消したり
- 第919条
- 相続の承認や放棄を決めたら、3ヶ月間の猶予がある場合でも、その撤回は認められません。
- 2
- この章の規定に違反していたら正当な理由が認められるので、相続の承認や放棄の決定後でも取り消しが認められます。
- 3
- 決定の取り消しができることがわかっているのに6ヶ月間を超えても取り消しをしなければ、取り消しの権利は時効によって消滅します。
- 4
- 正当な理由が認められて限定承認や放棄の取り消しをしようとする場合、家庭裁判所に対してその経緯をきちんと説明する必要があります。
原文
1003
第2節 遺産を受け継ぐ
第二節 相続の承認
第1款 全て受け継ぐ
第一款 単純承認
全て受け継ぐことを承認したら
- 第920条
- 亡くなった方が遺したものは、財産であっても負債であっても、権利であっても義務であっても全て受け継ぐ、と承認することを《単純承認》といいます。
原文
1004
法律的に単純承認となるケース
- 第921条
- 次のようなケースでは、本人の意思にかかわらず、単純承認をしたことになります。
- 一
-
受け継いだ財産の一部でも使ったりしてしまった場合
ただしメンテナンスをした場合や、短期間の賃貸(詳しくは第602条に規定)については、単純承認をしたことにはなりません。 - 二
- 承認をするかどうかを決めなけれなならない期限(第915条第1項)内に、限定承認も相続の放棄もしなかった場合
- 三
-
限定承認や相続の放棄をしたくせに、たとえ一部であっても相続するはずの財産を隠していたり、こっそりと使ってしまった場合
遺産に該当することがわかっていたのに、相続のリストに載せなかった場合
ただし、相続を放棄した遺産の分け前を別の相続人が受け継ぐと承認した後は、相続人が確定しているので、隠したりこっそり使ったとしても単純承認をしたことにはなりません。
原文
1005
第2款 負の相続の方が多いなら
第二款 限定承認
財産を受け取った分までしか負債は
- 第922条
-
受け取る相続に負債があるかもしれない場合、受け取った財産価値よりも多い負債については返済しない、という条件をつけることができます。
この相続の承認方法のことを《限定承認》といいます。
原文
1006
一人でも限定承認は嫌だといったら
- 第923条
- 相続人の内の一人でも限定承認は嫌だといったら、限定承認はできません。
原文
1007
限定を承認をすることになったら
- 第924条
-
限定承認をするには、家庭裁判所に相続財産のリストを添えて「限定承認をします!」と伝える必要があります。
これは「相続を受けとるか、放棄するか」を決める期限(第915条第1項)の3ヶ月以内に行う必要があります。
原文
1008
限定承認をしたら権利も義務も
- 第925条
- 限定承認をしたら、被相続人からの権利も義務も消えることなく受け継ぐことになります。
原文
1009
限定承認をしたら遺産の管理は
- 第926条
- 限定承認をしたのであれば、負債の分まで面倒をみることになっても、相続の決着がつくまで自分の財産と同じように維持管理に心がけてください。
- 2
- 限定承認をした人が相続遺産を預かることを任された人はその業務の現状報告をしてください。
相続遺産を預かる過程でお金や物を受け取ったら、他の相続人にきちんと返還してください。
相続遺産を預かるための費用や債務は、他の相続人に返還の請求をし、負担してもらうようにしてください。
原文
1010
限定承認の通知
- 第927条
-
相続の限定承認をされると影響を受ける《相続債権者》や《受遺者》に対して、5日以内に限定承認をすることを通知する必要があります。
同時に、「債権や、遺言により受け取ることになる遺産についての請求を一定期間内にして欲しい」ということも伝える必要があります。
これを伝えるためには、家庭裁判所に対して申請をして、《公告》を行う必要があります。
この場合の一定期限というのは最短でも2ヶ月以上の期間が必要です。 - 2
-
この通知には、一定期限内に請求をしないと、債務の返済や遺産の贈与はできなくなるということをちゃんと書き添えてください。
とはいえ、わざわざ改めて通知をするまでもなく、わかっている債務や遺言による贈与に対して、そのことを無視してはいけません。 - 3
- もともと権利関係や連絡先がわかっている債権者や遺産をもらえる人には、個別に限定承認をしたことを伝える必要があります。
- 4
- 《公告》をする方法とは、官報に掲載することです。
相続財産の中に負債がある場合、その債務の債権者のことを《相続債権者》といいます。
遺言により遺産をもらえる人のことを《受遺者》といいます。
原文
1011
一定期間を迎えるまでは
- 第928条
- 相続債権者に対して債務の弁済や受遺者に対する遺産の贈与は、限定承認の通知の中の一定期間(第927条第1項)を迎えるまでは先延ばしとなってもやむをえません。
原文
1012
通知した期限が過ぎたら
- 第929条
-
「請求を一定期間内にして欲しい」という通知をして、その期間が過ぎたら、それまでに届いた請求分を集計して遺産から債務を弁済します。
債権額の割合に応じて支払いを受けるのことが原則ですが、優先権のついた債権は優先的に支払いを受けることができます。
原文
1013
期限前の債権は
- 第930条
- 限定承認をした場合、通知した一定期間内に届いた請求に対しては、返済期限がきていない請求に対しても支払いをしてください。
- 2
- 条件付きのため支払い時期が決まっていない債務や、いつまで払い続けるかが決まっていない債務は、家庭裁判所が指定した鑑定人の評価に見合う分を支払ってください。
原文
1014
受遺者への贈与は後回し
- 第931条
-
限定承認をしたら、最優先で一定期間内に届いた請求を支払います。
受遺者への遺産の贈与はその後で行います。
原文
1015
遺産を競売にかけて負債の支払いに
- 第932条
-
限定承認によって、遺産を売らなければ負債を果たせない場合、遺産を競売にかけてください。
しかし、どうしてもその遺産を手放したくない場合は、家庭裁判所が選んだ鑑定人に評価をしてもらい、評価の額面分の負債は支払いにあててください。
原文
1016
相続財産を競売や鑑定する場合
- 第933条
-
遺産が競売にかけられて格安で現金化されてしまうと、相続債権者には相続財産に対する債権の一部しか回収できなくなる心配が、《受遺者》には贈与される遺産の目減りの心配が発生します。
この心配を軽減するために、自分で鑑定に注文をつけたり、競売に入札して遺産を自分の物にすることが認められます。
ただし、これにかかる費用は全て自分の持ち出しで行う必要があります。
鑑定への注文が受け入れられなかったり、競売で落札できない場合は、共有物の分割の恩恵に加われない場合の規定(第260条第2項)を同じように適用して、鑑定や競売のやり直しができる場合があります。
原文
1017
規定通りの方法で返済をしなかったために
- 第934条
-
「請求を一定期間内にして欲しい」という通知をしなかったために、債務を果たせなくなったら、《相続債権者》や《受遺者》に対する損害賠償の責任を負うことになります。
通知した一定期間の途中で、一部の《相続債権者》や《受遺者》だけに債務を果たして、他の債務を果たせなくなった場合も損害賠償の責任を負うことになります。
同様に、次の規定を守れなかった場合も自分で責任を負うことになります。 - 2
- 不当に債務の返済や遺産の贈与を受けた人がいるために、きちんと負債を果たしてもらえなかった《相続債権者》や《受遺者》も、損害賠償を要求できる場合があります。
- 3
- 損害賠償をすることができる期間に関する規定(第724条)は、《相続債権者》や《受遺者》から損害賠償の責任を負う場合も同じように適用することとします。
原文
1018
期間が過ぎてから請求をしても
- 第935条
-
通知された一定期間内に請求をしないと、その後は遺産からの支払いや贈与が進んでしまうことになります。
期間が過ぎてから請求をしても、その時点で残っている遺産からしか支払いや贈与を求めることしかできません。
例外で、特定の遺産に対する優先的な担保を設定していた場合は、わざわざ請求するまでもなく、期間に関わらず支払いを受けることができます
“特定の遺産に対する優先的な担保”のことを《特別担保》といいます。
原文
1019
何人かで相続財産を分け合う場合
- 第936条
- 何人かで相続をする場合、家庭裁判所に遺産を清算する役割の人をその中から決めてもらってください。
- 2
- 遺産の清算人になったら、他の相続人たちのために、遺産の管理、返済が必要な債務の支払いなど、取り仕切ってください。
- 3
- 相続財産の清算人が決まったら、《相続債権者》や《受遺者》に対して、5日以内に通知をして、必要に応じて一定期間内に請求をしてもらうようお願いしてください。
この通知をしてから一定期間は弁済や贈与の先延ばしが認められ、この期間を過ぎたら集計をした上、優先権をふまえて弁済が行われます。
この期間中に届いた請求は支払期限前であってもさっさと支払いをして、その後に遺贈をしてください。
必要があれば財産を鑑定してもらったり、売却して支払いにあててください。
きちんと通知をしなかったせいで債務が果たせなくなったら、清算人の責任で対処しなければならなくなってしまいます。
《相続財産の管理人》から《相続財産の清算人》に改正されました。
原文
1020
使ったり隠していたら
- 第937条
-
限定承認をしたはずなのに次のような場合は単純承認となってしまうので、その原因となった相続人から取り立てをしてもかまいません。
- 受け継いだ財産の一部でも使ったりしてしまった場合(第921条第1号)
- 相続するはずの財産を隠した場合(第921条第3号)
原文
1021
第3節 相続は受け取らない
第三節 相続の放棄
相続を受け取るつもりがなかったら
- 第938条
- 相続を受け取るつもりがなかったら、家庭裁判所に受け取らないことを連絡しておく必要があります。
“相続を受け取らないこと”を《相続放棄》といいます。
原文
1022
相続は受け取らないという人のことは
- 第939条
- 遺産の分け前を決める時、「相続は受け取らない」と家庭裁判所に連絡した人のことは何も考慮する必要はありません。
原文
1023
遺産放棄をするつもりであっても
- 第940条
- 放棄するつもりであっても、実際に遺産を自分の手にしている場合、遺産の清算人に引き渡しをするまでの間、自分自身の財産を守ろうとしたり活用しようとするの同じように、きちんと管理をし続けてください。
- 2
- 放棄するつもりであっても、実際に遺産を自分の手にしている場合、引き渡しをするときや清算人から要求があったらすみやかに遺産の現状を報告をしてください。
引き渡しまでの間いかかった経費を立替えていたり債務を負っていたら、清算人に請求をしてください。
原文
1024
第5編 第5章 遺産は勝手に使っちゃいけません
第5編 第3章 相続をしたら
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