CONTENTS



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2.物権 3.所有権

第2編 物権:物に関して

第二編 物権

第3章 所有権:ずっと俺のものという権利

第三章 所有権

第2編 第4章 地上権:用地として土地を使える権利

第2編 第2章 占有権:今は俺のものという権利
第1節 所有しているからって

第一節 所有権の限界

第1款 所有権の内容とその範囲

第一款 所有権の内容及び範囲

所有権について
第206条重要

“もの”の所有者は、法令がゆるす範囲内で、自由に“もの”を取り扱い、そこから利益をあげ、処分をする権利があります。
原文
土地の所有権の及ぶ範囲
第207条

土地の所有権は、法律の範囲内で、その土地の上空から地下まで及びます。
原文
第208条

削除
第2款 お隣とのつきあい方

第二款 相隣関係

隣の土地を使わせてほしい場合
第209条

自分の土地と隣の土地との境目やその周辺で、塀や柵、あるいは建物を構築したり、修理するために必要があれば、隣の土地にも立ち入らせてくれと頼むことが許されます。

隣の人から許しが出たら、隣の土地に立ち入って構築や修理をすることができます。
2

もし隣の土地に立ち入った際に、何か迷惑をかけてしまった場合は、その賠償を請求されることになります。
原文
第211条

他人の土地を通らざるをえない場合でも、他人の土地を好き勝手に通って良いわけではありません。

公道に出るために周りにかける迷惑が一番少なく、必要最小限にすることが求められます。
2

公道に出るために他人の土地の通行を許された場合に、必要があれば通路を設けることも認められます。
原文
第212条

公道に出るために他人の土地の通行を許される場合、他人の土地を通行しなければならない人は、その通行によって迷惑をかけてしまう土地の持ち主に迷惑をかけたことに対する賠償金を支払わなければなりません。

その支払いは、通路の開設工事に関わる費用を別にすれば、年単位の支払いが認められています。
原文
第213条

もともと一つの土地だったところを分割したことにより、公道に接していない土地の持ち主となった人は、分割する前の公道に接する土地だけは通行が許されます。

その場合は、通行させてもらう土地の持ち主に賠償金の支払いは必要ありません。
2

ある土地の持ち主が、その土地の一部を分けて他人に譲り渡した場合でも、公道に接していない土地を譲られた人は、分割する前の公道に接する土地だけは通行が許され、賠償金の支払いは必要ありません。
原文
ライフラインを他人の土地に引かせてもらうには
第213条の2

水道、電気、ガスといったライフラインを引くための方法が他になければ、他人の土地に配管や配線をすることが認められます。
2

ライフラインを他人の土地に引く場合、その土地の持ち主の負担や迷惑を最小限にしてください。
3

ライフラインを他人の土地に引く場合、その土地の持ち主に対して、何のために、どんなものを、どこに、どのように引くかを説明する必要があります。
4

他人の土地にライフラインを引くことが認められたら、その土地に立ち入って、その土地を利用することも認められます。

とはいえ、その土地に立ち入る際には土地の所有者に承諾を得てください。
5

他人の土地にライフラインを使用することで、その土地の関係者に迷惑をかけたら、迷惑料を支払ってください。

支払いについては、必ずしもその都度支払う必要はなく、一年ごとに支払う方法でかまいません。
6

他人の土地にライフラインを引くために、その土地の関係者に迷惑をかけたら、迷惑料を支払ってください。
7

他人の土地に引かせてもらったライフラインを、さらに別の人にも使わせてあげることになったら、設置や維持管理に関わる費用を負担してもらうことが認められます。
原文
第213条の3

ライフラインが引かれていた土地を、別々の所有者のために分割してライフラインを引くにあたり、他に方法が無ければ、分割した別の土地を使って配管や配線をしてください。

この場合は、土地を使わせてもらうことに対する迷惑料は認められず、支払う必要ありません。
2

ライフラインが引かれていた土地の一部を分割して売却したら、ライフラインを引くにあたり、他に方法が無ければ、分割した残りの土地を使って配管や配線をしてください。

この場合は、土地を使わせてもらうことに対する迷惑料は認められず、支払う必要ありません。
原文
自然に流れてくる水をせき止めてはいけない
第214条

他人の土地から自分の土地へと自然に流れて来る水をむやみにせき止めてはいけません。
自然に流れてくる水とは、雨水・湧き水・地下水のことのようで、人工的な排水設備から流れてくる水はこれに該当しません。
原文
洪水の原因の改善工事
第215条

天災ややむを得ないアクシデントのため排水が機能しなくなり、洪水状態となって上流へと被害の範囲が広がっている場合、上流の土地の持ち主は、自己負担で排水がうまくできない箇所を改善するために必要な工事をすることができます。
原文
貯水や排水・引水のための施設の修繕など
第216条

貯水や排水・引水のための施設のアクシデントのせいで、自分の土地に損害が及ぶ場合や及びそうな場合は、施設の所有者や施設の土地の所有者にトラブルを起こす施設の撤去や修繕をさせたり、必要に応じて予防工事をさせることができます。
原文
水害施設の慣習的な費用負担について
第217条

水害関連の施設に関する費用負担については、個別に慣習的なルールがあればそのルールに従います。
原文
隣の土地に直接雨水を垂らす構造は禁止
第218条

他人の土地に直接雨水が垂れ落ちる構造の屋根や工作物を設置してはいけません。
原文
水路の変更
第219条

他人の土地に隣接するU字溝や水路は、仮に自分の土地の側に流れていたとしても、向こうの土地の影響も考えずに勝手に水路のルートや幅を変えてはいけません。
2

水路の両側とも自分の土地にあれば自由に水路のルートや幅を変更することができます。

ただしその水路が隣の土地に入り込む場所では、元々あった水路の位置や幅に戻さなければなりません。
3

水路の変更について、個別に慣習的なルールがあればそのルールに従ってもかまいません。
原文
排水のために低地の通過
第220条

浸水した雨水や、生活・農工業用の排水を排出するため、その土地よりも低地に水を通して公共の排水路や下水道まで流すことが許されます。

その場合、低地にとって最も損害が少ないルートや方法を採ることが必要です。
原文
排水施設の利用について
第221条

自分の土地の排水のためであれば、自分の土地よりも高地や低地の他人の土地にある排水施設を活用することが許されます。
2

他人の土地の排水施設を活用する場合は、それにより受ける恩恵に応じて、その施設の設置費用やメンテナンス費用を分担しなければなりません。
原文
堰の設置と利用について
第222条

水をためる堰(せき)を設置する必要がある場合、他人の土地と接する位置に堰を設けることは可能です。ただしこれにより他人に損害を与える場合は、賠償金を支払わなければなりません。
2

他人の土地の堰や水流ルートの一部が自分の土地にもかかっている場合は、その土地の持ち主もその堰を使って水を利用することができます。
3

他人の土地の堰や水を利用する場合は、それにより受ける恩恵に応じて、その施設の設置費用やメンテナンス費用を分担しなければなりません、
原文
境界標の設置について
第223条

土地の所有者は、隣の土地の所有者と共同負担で、《境界標》を設置しましょう。
《境界標》とは隣の土地との境目を示す目印のことです。
原文
境界標の設置やメンテナンスの費用負担について
第224条

《境界標》を設置したりメンテナンスするための費用は、お隣と折半して負担します。ただし測量に関わる費用は、それぞれの土地の面積の比率に応じて分担します。
原文
塀や垣根を作るにあたって
第225条

自分の土地に建つ家と隣の土地に建つ家との間の境界に“塀や垣根”を設ける時は、両者が互いにお金を出し合って建てることができます。
2

両者の間で話がうまくまとまらない時は、高さが2mの板塀か竹垣・もしくはそんなような素材を使った“塀や垣根”にしなければなりません。
“話がうまくまとまらない時”というのは、隣の家と趣味や予算が違うということだと思われ、大きさや材料が決められているのも作り直すのにあまりに無駄な費用がかからないようにとの心遣いかと思われますが…。
原文
塀や垣根はワリカンで
第226条

境界に“塀や垣根”を設ける費用や、その維持にかかる経費は、自分と隣の人とのワリカンで負担します。
原文
隣と意見があわない場合
第227条

隣と意見が合わなくて、「板塀や竹垣よりも立派なものにしたい」「2mより高くしたい」という意見に協力が得られない場合は、余分にかかる費用を自己負担すれば、好みの仕様で建てることも許されます。
原文
塀や垣根を設けることについて慣習があれば
第228条

“塀や垣根”を設けることに関して、地域によって慣習があれば、以下の条文にこだわらず、その慣習に従ってください。
  • 塀や垣根を作るにあたっての慣習(第225条
  • 塀や垣根をワリカンにしない慣習(第226条
  • 隣と意見があわない場合の慣習(第227条
原文
隣の土地の境に設けられたものは
第229条

どちらの物かはっきりしなければ、隣の土地との境界線上に設けられた《境界標》や“塀や垣根”そして《溝や堀》は、自分と隣の人との共有物ということで納得してもらいます。
原文
第230条

建物本体の一部が境界線を示す役割を持たせたような構造の壁などは、隣の土地の境に設けられた塀や垣根などとは違い、あくまでも建物の所有者の持ち物といえます。
2

隣の土地の建物が自分の建物よりもずっと低くて、境界上の“塀や垣根”の高さが隣の建物よりも高い位置まで伸ばさなければならない場合、隣の建物より高く伸ばした部分についても、建物が高い側の自分の持ち物ということになります。
原文
共有の塀や垣根の高さを伸ばす工事について
第231条

隣の人と共同でやらなくても、自分で“塀や垣根”の高さを伸ばす工事をしてもかまいません。

ただしもともとの“塀や垣根”の構造や強度が高さを伸ばすための工事に耐えられない場合は、費用は自分持ちで、必要な強度や構造をなんとかしたり、きちんとした改修をしなければなりません。
2

前項のような事情で、“塀や垣根”の高さを伸ばした部分はその工事をした人の単独の持ち物ということになります。
原文
第232条

自己負担で“塀や垣根”の工事をする場合に、隣の人に損害を出してしまったら、弁償をしなければなりません。
原文
木の枝や根が自分の土地に伸びてきた場合
第233条

隣の土地から自分の土地に木の枝が伸びてきた時でも勝手にそれを切り取ってはいけません。

木の持ち主に枝を切り取らせることはできます。
2

隣の木には共有の所有者かいる場合でも、その内の一人に頼めば枝を切り取らせることはできます。
3

隣の土地から自分の土地に木の枝が伸びてきた時に、次のケースであれば自分で枝を切ってもかまいません。

枝を切り取ってもらうよう、木の持ち主に再三頼んだにもかかわらず、いつまでたっても切ってくれない場合。

木の持ち主がわからなかったり、連絡がつかない場合。

緊急事態の場合。
4

隣の土地から自分の土地に木の根が伸びてきた時は、こちらの判断で切り取ってもかまいません。
原文
隣との境界線付近は建築できない
第234条

隣の土地との境界線から50cm未満の部分には建物を建ててはいけません。
2

隣が境界線から50cm未満の部分に建物を建てようとしていたら、建築を止めさせてその設計を変更させることができます。

しかし、すでに建築が始まり一年を経過した時や、建物自体が完成してしまった後では、中止や変更させることはできませんので損害賠償のみを求めることとなります。
原文
第235条

隣の土地との境界線から1メートル未満の場所には近所のお宅をのぞき見できるような窓や縁側・ベランダを設置する場合は、目隠しを取り付けなければいけません。
2

窓や縁側・ベランダからの隣の土地までの距離の求め方は、窓などから隣の土地に最も近い所から地上に垂直線を垂らした点と境界線を結んでその長さを測ることとします。
原文
慣習で隣との境界を決めても
第236条

地域の慣習が境界線から50cm未満の建物や隣との目隠しに関する条文と異なる場合は、慣習を優先してください。
原文
穴を掘るときの隣との距離
第237条

井戸を掘ったり下水の貯水用の穴を掘る場合は隣の土地から2m以上離した位置に、池や地下室・し尿処理槽用の穴を掘る場合は隣の土地から1m以上離した位置にしなければいけません。
2

導水管を埋めるたり、溝や堀を掘るためには、最大で1mを超える必要はありませんが、隣の土地から掘る深さの半分以上の距離を離さなければいけません。
原文
隣の土地近くで穴掘りの際の注意事項
第238条

隣の土地の近くで穴掘り工事をするときは、土砂が崩れたりせず、水や汚水が流れ出ることがないように十分注意をしてすすめなければいけません。
原文
第2節 所有権を取得するために

第二節 所有権の取得

だれものものでもない時は
第239条

だれのものでもない“もの”は、だれかが「これは自分のものだ」という意志を持って占有することにより、その人の“持ち物”となります。
2

だれのものでもない“土地”は、国が持ち主ということになります。
《国庫》とは、ほぼ“国”という意味で、具体的な‘くら’という意味は含まれないようです。
原文
落し物や忘れ物を拾ったら
第240条

“落し物や忘れ物”を拾ったら、「遺失物法」で決められた方法で“落し物や忘れ物”があることを皆さんにお知らせします。

その後3ヶ月の内に持ち主が現れない時は、これを拾った人のものになります。
“落し物や忘れ物”のことを《遺失物》といいますね。
原文
埋蔵品を見つけたら
第241条

土の中からお宝が出てきたら、「遺失物法」で決められた方法で“埋蔵品”があることを皆さんにお知らせし、その後6ヶ月以内に持ち主が現れない時は、これを発見した人の“もの”になります。

ただし他人の土地で発見した場合は、発見した人と土地の持ち主とで半々ずつ山分けとします。
原文
もともとそこにあったものは誰のものか
第242条

その土地に元からあった物や、建物に据え付けられているものは、その土地や建物の持ち主の“もの”となります。しかし、だれか別の人のものがたまたまある場合については、もちろんその持ち主の“もの”です。
原文
複数のモノが一つのものになったら持ち主は
第243条

持ち主が違う複数の“モノ”を材料にして、新たに一つの“もの”を作り出した時、壊したり・傷つけたり・溶かしたりする必要があって、それが作る前とは同じ“モノ”には戻せなくなることがあります。

その場合、複数の“モノ”の中でも最も要(かなめ)になる“モノ”の持ち主を“もの”の持ち主ということにします。

なお、壊す必要がなくても、元の“モノ”に戻すのに現実的ではないような高額の費用がかかる場合も同様とします。
原文
第244条

持ち主の違う“モノ”を組み合わせて新たな“もの”を作り出す時、どれが要(かなめ)になる“モノ”なのかがはっきりしない場合は、組み合わせる“モノ”の価格の割合に応じて、“もの”の持ち分を共有することとします。
原文
混ざり合って一つになった場合
第245条

持ち主が別々の“モノ”と“モノ”とが物理的または機能的に混ざり合って元の状態に分けられなくなった場合にも、複数のモノが一つのものになった場合の持ち主に関する規定を同じように適用することとします。
混ざり合って一つになることを《混和》といいます。
原文
ものに手を加えたら
第246条

他人の“モノ”になんらかの手を加えた場合でも、基本的には元の持ち主の“モノ”に変わりはありませんが、もし手を加えたことにより“モノ”としての原材料費を大きく超える付加価値をつけた場合には、手を加えた人のものになります。
2

手を加えるといっても高額な材料費のものを取り付けただけであれば、できあがったものの価格から材料費を引けば済むので、もとの“モノ”の価格よりも大きく超える付加価値が就いていなければ、手を加えた人のものとはなりません。
原文
くっつけられたり、混ぜ合わされたりすると他の権利も
第247条

他の人の“もの”と自分の“モノ”に関する規定によって、他の人の“もの”にくっつけられたり、混ぜ合わされたりして自分の“モノ”が吸収されて失くなってしまったら、もともとその“モノ”にかかっていた自分の権利も失くなります。
2

くっつけたり、混ぜあわしたりして他の人の“モノ”を含めて自分の“もの”にした時は、他の人の“モノ”についていた他の人の権利もくっついてきます。

同じように、他の人との共有物となった時は、他の人の“モノ”についていた他の人の権利も、自分に移ってきます。
原文
モノや権利を失った人は
第248条

ものが一つになる規定を適用されたことにより、自分の“モノ”や権利を失う損害を受けた人は、次の規定に従って“もの”や権利を得た人から賠償金を請求することができます。
  • 理由もなく得た利益に関する規定(第703条
  • 損失を与えていると知りながら利益を得た場合の規定(第704条
原文
第3節 共有とは

第三節 共有

共有の“もの”の利用について
第249条重要

ある“もの”に複数の持ち主がいる状態を“共有”といい、その持ち主たちは自分の持ち分に応じてその“もの”の全体を利用することができます。
2

原則として、自分の持ち分を超えて“もの”を使用したら、超えた分については他の持ち主にお礼をしてください。

お礼をする、しないについて具体的なことは他の持ち主と話し合ってルールを決めても構いません。
3

共有物は自分勝手な使い方をしていいわけではありません。

他の持ち主から預かったものだと思って、大切にしてください。
原文
共有の“もの”の持ち分について
第250条

特に決めていなければ、共有している“もの”の持ち主は、頭数で等分した分を自分の持分にしているはずです。
原文
共有の“もの”の変更について
第251条

他の共有者の同意を得なければ、共有のものに勝手な変更を加えてはいけません。

変更とは、形や機能が明らかに変わってしまうことを指します。
2

どうしても他の共有者に連絡がつかない場合、裁判所に請求をすれば、裁判所からその他の共有者の同意を得れば、共有のものに変更を加えるお墨付きをもらうことができます。

他の共有者が誰なのかわからない場合も同様に、裁判所に請求をしてお墨付きをもらってください。
原文
共有の“もの”の扱いを決めるには
第252条

共有者の間で共有物の扱いを決めるには、共有者の持ち分に応じた採決で過半数を得たプランが採用となります。

持ち分による採決で過半数を得ていなければ、共有者の一人が独り占めしている状況であっても、その人のプランが通るわけではありません。
2

次のケースに該当する共有者がいる場合、それ以外の共有者は裁判所に対して、持ち分に応じた採決をして扱いを決めることに関するお墨付きをもらうことが認められます。

だれだかわからない共有者がいたり、どこにいるのかわからない共有者がいる場合。

採決をして共有物の扱いを決めようとしているのに、自分の意見を明らかにしない共有者がいる場合。
3

過半数を得て共有物に変更が加わるプランが決まったとしても、共有物を独り占めしている人が「ダメージを受けるから承諾しない」と言い出したら、そのプランは進めることができません。
4

共有者同士で採決をして過半数を得ても、共有物を使って収益を上げるためのプランについては期限が決められています。

この期限は共有物の種類によって4種類に分けられています

樹木を育てたり、伐採することを目的として共有の山林を賃借するケースでは10年以内。

上記以外の目的で共有の土地を賃借するケースでは5年以内。

共有の建物を賃借するケースでは3年以内。

不動産以外の共有物を賃借するケースでは6ヶ月以内。
5

共有物の形や機能を維持するためのお手入れは、共有者の承認や採決で過半数を得るまでもなく、行うことが可能です。
“共有物の形や機能を維持するためのお手入れ”のことを《保存行為》といいます。
原文
共有の“もの”の管理を任されたら
第252条の2

共有物の管理を任されたら、きちんと管理をしてください。

管理を任されたからといって、共有物の形や機能を変えるようなことをしてはいけません。
2

共有物の形や機能を変える必要がでてきたのにどうしても共有者に連絡がとれない場合、管理を任されている人は裁判所に対して、共有物の変更に関するお墨付きをもらうことが認められます。

その場合は他の共有者全員の同意が必要です。
3

共有者が共有物の扱いを決めたら、管理を任された人はその方針に従って管理をしてください。
4

共有者が決めた管理の方針に従っていないと、それまでの苦労も何も共有者から認めてもらうことができなくなることがあります。

だからといって、その管理人が外部に発注していた業務まで取り消しにできるわけではありません。
原文
共有の“もの”に関する負担について
第253条

各共有者は、自分の持ち分に応じて管理の費用を支払い、その他の管理分担の負担を負います。
2

一部の共有者が一年間、費用などの管理分担に応じない場合、他の共有者がその一部の共有者の持ち分を相応の金額で買い上げることが許されます。
原文
共有の持ち分を譲り受けた人は
第254条

他の共有者の持ち分を買い上げたり譲り受けた人は、付随する管理などの費用の負担にも応じなければなりません。
原文
持ち分を放棄したり、相続人がいない時
第255条

共有者の一人が、「自分の持ち分を放棄した時」や「死亡して相続人がいない時」には、その持ち分は他の共有者のものとなります。
原文
共有の“もの”の分割請求について
第256条

共有者であればいつでも他の共有者に対して「共有物を分割してほしい」と請求することができます。

ただし、5年未満の期間であれば、「分割をしない」という内容の契約をすることは許されます。
2

「分割をしない」という内容の契約は、期間が満了する際に更新をすることができます。その場合の期間も「更新満了の時から5年未満」としなければなりません。
原文
第257条

第229条の中の《境界標》などは、分割できません。
原文
分割方法の話がまとまらない場合は裁判所で
第258条

他人と共有の“もの”を各自の持ち分に即して分割しようとしてもうまく話がまとまらない場合、裁判所にお願いして分割方法を決めることができます。

そもそも話し合いすらできない場合も、裁判所にお願いして分割方法を決めることができます。
2

裁判所では次の方法で分割方法を決めてもらえます。

共有物の現物を切り分ける方法。

共有物を独り占めさせる代わりに、他の共有者にはお金や代わりのものを提供させる方法。
3

切り分けることが困難だったり、独り占めさせることが難しい場合は共有物を競売にかけて、得たお金を共有者で分配することとなります。

切り分けることが可能だとしても、その価値が大幅に減少してしまう場合もこの方法がとられます。
4

裁判所に分配の方法を決めてもらったら、その通りにお金を支払ったり、物を引き渡したり、登記をしてください。
原文
相続財産の分割方法は裁判所では
第258条の2

相続財産は家庭裁判所で相続人同士による協議をして分割をするものなので、相続で受け取った共有物の分割協議がうまくいかないからといって、さっさと裁判所で分割方法を決めてもらうというわけにはいきません。
2

それでも相続をしてから10年が経過したら、相続で受け取った共有物の分割方法を裁判所に決めてもらうことが認められるようになります。

裁判所で分割方法を決めてもらうにあたり、他の相続人から異議の申し立てがあるとこの方法は使えなくなります。
3

この異議の申し立てができるのは、裁判所に分割方法を決めてもらうための請求があり、その通知を受け取ってから2ヶ月以内に限られます。
原文
共有の“もの”のオーナー間に貸し借りがあったら
第259条

共有の持ち物のオーナーの一人が別のオーナーに借りがある状態で共有物を分割することになったら、分割した共有物の一部で借りを返すことができます。
2

共有物の分割にあたり、お金で換算しなければ話がまとまらないのであれば、「共有物を売ったお金でその借りを返してくれ」と、借りのある人に求めることができます。
原文
分割の恩恵に加われないオーナーがいると
第260条

共有物の各オーナーやオーナーに貸しのあるたち人は、分割費用を出し合って、分割を進めることができます。
2

もし共有物のオーナーの中に、「分割したものが欲しい」といっていたのに分割の恩恵に加われないようにされたら、「この分割は認められない!」と言い出すことで、分割は「やり直し!」ということになります。
原文
分割でもメーカー並に責任が
第261条

共有だったもの分割して「一部が自分の“もの”になった」のに不都合が発生してしまった場合、他の元共有者の方々には商品メーカーと同じように不都合な箇所の解消や損害賠償の責任を負っていただくことになります。
原文
分割したら証書を残す
第262条

共有物の分割作業が終わったら、自分たちがどんな割合で分割してどうなったかを証書(登記)として残しておく必要があります。
2

分割して一番大きな部分を手に入れた人が、その証書を残しておくことなります。
3

分割して特に大きいとか小さいということがない場合は、分割した人たちの間で話し合って証書を残す人を決めます。

もし話し合いがうまくいかない場合は、裁判所が証書を残す人を指名することとなります。
4

証書を残す役割にならなかった人が証書を必要とする時、証書を残している人はその証書を使わせてあげなければなりません。
原文
 連絡がとれない共有者の不動産を整理するには
第262条の2重要

共有名義の不動産の場合、他の共有者がどこのだれなのか全くわからなかったり、どうしても連絡がつかないことがあります。

このような共有者のことを《所在等不明共有者》といいます。

所在等不明共有者を整理して、実情にあった名義の不動産にするためには裁判で所在等不明共有者の持ち分を他の共有者の名義に移すことが認められます。

二人以上の共有者が所在等不明共有者の持ち分を移す裁判を起こした場合、共有者がそれぞれの持ち分の比率で所在等不明共有者の持ち分を分け合うことになります。
2

共有の不動産の分割のための裁判が行われていたり、共有の土地の遺産相続の分割協議の裁判が行われている場合、これに関わる共有者が異議申し立てをすると、所在等不明共有者の持ち分整理の裁判は進めることができなくなります。
3

相続により所在等不明共有者が生じた場合、10年間は所在等不明共有者の持ち分整理の裁判を始めることができなくなります。
4

所在等不明共有者の扱いをされて、自分の持ち分を他の共有者の名義に移された人には、名義を得た共有者に対してその代金を請求する権利が認められています。

この代金は請求時の時価で請求することができます。
5

この条文の規定は共有名義の不動産の名義を移すケースの他に、不動産を使用する権利の名義を移すケースや不動産によって収益を得る権利の名義を移すケースでも同じ用に適用されます。
原文
連絡がとれない共有者の不動産を譲渡するには
第262条の3重要

裁判で、所在等不明共有者の持ち分を特定の人に譲渡することを認めてもらうことができます。

ただし、所在等不明共有者以外の全ての共有者がOKをすることが必須条件となります。
2

相続により所在等不明共有者が生じた場合、10年間は所在等不明共有者の持ち分譲渡の裁判を始めることができなくなります。
3

所在等不明共有者の扱いをされて、自分の持ち分を他の人に譲渡された人には、譲渡をした共有者に対してその代金を請求する権利が認められています。

この代金は請求時の時価で請求することができます。
4

この条文の規定は共有名義の不動産の譲渡をするケースの他に、不動産を使用する権利を譲渡するケースや不動産によって収益を得る権利を譲渡するケースでも同じ用に適用されます。
原文
入会権…いりあいけんについて
第263条

土地などの共有所有的な形態の《入会権》については、各地方の慣習に従いますが、基本的にはこの節の規定を適用することとなります。
《入会権》とは、山林などを地域の共同体がみんなのものとして管理をするために与えられた権利…という感じみたいです。ここでは会員制リゾートクラブの入会特典のことではありません。
原文
所有権以外の財産権を共有する場合も
第264条

所有権以外で、財産に関わる権利を共有する場合も共有に関すること節の規定を同じ用に適用します。

とはいえ、他の法令で具体的な規定がある場合はそちらが適用されます。
原文
第4節 所有者と連絡がつかない土地

第四節 所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令

所有者と連絡がつかない土地で困ったことがあれば
第264条の2重要

所有者や共有者とどうしても連絡がつかない土地で困ったことがあれば、裁判所に請求してその土地の管理をする人を任命してもらうことができます。

任命された人のことを《所有者不明土地管理人》といい、管理を命じることを《所有者不明土地管理命令》といいます。
2

《所有者不明土地管理命令》となっていますが、この命令は土地だけを対象としたものではなく、その土地に立つ建物や構造物、その土地に置かれた物品なども対象となります。
3

所有者不明土地管理人がその土地や建物、物品などからお金を得ていた場合、いったん取り消しになった後でも、改めて命令が出されることがあります。
4

所有者不明土地管理命令には必ず所有者不明土地管理人が指定されます。
原文
所有者不明土地管理命令が出された土地などに関する権利は
第264条の3

所有者不明土地管理命令が出された土地や建物、物品の面倒をみたり、手放したりする権利は所有者不明土地管理人だけに認められます。
2

所有者不明土地管理人は次の行為をすることが認められていますが、それ以上のことをする場合は裁判所の許可が必要です。

裁判所の許可を得ないとまずい…とは知らない人が関わった場合、その人がしたことは取り消されることなどありませんが、所有者不明土地管理人はそれなりの責任を負わねばなりません。

維持管理、メンテナンス行為。

対象の土地や建物、物品の特徴を変えない範囲で利用したり、改良する行為。
原文
所有者不明土地などの訴訟の原告や被告に
第264条の4

所有者不明の土地やその土地の上の建物や物品に関する訴訟を行う場合、所有者不明土地管理人が原告や被告となります。
原文
所有者不明土地管理人に任命されたら
第264条の5

所有者不明土地管理人に任命されたら、自分の土地を大切にしているオーナーになったつもりで注意深く、きちんと対応してください。
2

複数の人の共有となっている土地の所有者不明土地管理人に任命されたら、オーナーのみなさんに対して公平に、注意深く、きちんと対応してください。
原文
所有者不明土地管理人に任命されたのに
第264条の6

任命された所有者不明土地管理人が、注意深く、きちんと対応しなかったために、その土地の価値をひどくおとしめたり、深刻な事態を招くことをしたら、裁判所によって所有者不明土地管理人をクビにされることがあります。

その土地の関係者がクビにする必要があると判断したら、裁判所に請求をしてください。
2

所有者不明土地管理人に任命されても、ちゃんとした理由があれば、辞任することが認められています。
原文
所有者不明土地管理人には報酬や前払いが
第264条の7

所有者不明土地管理人には裁判所が決めた報酬や、経費の前払いが認められます。
2

所有者不明土地管理人への報酬や前払い金は、所有者不明土地のオーナーが負担してください。
そのオーナーと連絡がつかないんですけど…。
原文
所有者と連絡がつかない建物で困ったことがあれば
第264条の8

所有者や共有者とどうしても連絡がつかない建物で困ったことがあれば、裁判所に請求してその建物の管理をする人を任命してもらうことができます。

任命された人のことを《所有者不明建物管理人》といい、管理を命じることを《所有者不明建物管理命令》といいます。
2

《所有者不明建物管理命令》は建物とそこに置かれた物品を対象とすると同時に、建物がその土地に建ち続けていられる権利やその土地で建物を使うことにより収益を上げることを認める権利も対象となります。
3

所有者不明建物管理人がその建物、物品などからお金を得ていた場合、いったん取り消しになった後でも、改めて命令が出されることがあります。
4

所有者不明建物管理命令には必ず所有者不明建物管理人が指定されます。
5

所有者不明建物管理命令が出された建物、物品の面倒をみたり、手放したりする権利は所有者不明土地管理人だけに認められ、維持管理などをすることは認められますが、それ以上のことをするには裁判所の許可が必要です。

所有者不明の建物やそこにある物品に関する訴訟を行う場合、所有者不明建物管理人が原告や被告となります。

所有者不明建物管理人に任命されたら、自分の建物を大切にしているオーナーになったつもりでその建物を注意深くきちんと対応し、共有の建物であれば、オーナーのみなさんに対して公平に、注意深く、きちんと対応してください。

正当な理由があれば所有者不明建物管理人を辞任することは認められますが、注意深くきちんと対応しないと裁判所によってクビにされることがあります。

所有者不明建物管理人には建物のオーナーからきちんとした報酬を受け取ることができることになっています。
原文
第5節 管理がなされていない土地のせいで

第五節 管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令

管理がなされていない土地のせいで迷惑を被っていたら
第264条の9

きちんと管理がなされていない土地のせいで迷惑を被っている人は、裁判所に請求してその土地の管理をする人を任命してもらうことができます。

任命された人のことを《管理不全土地管理人》といい、管理を命じることを《管理不全土地管理命令》といいます。
2

《管理不全土地管理命令》となっていますので、この命令は土地とそこに置かれた物品を対象としていて、その土地に立つ建物や構造物については対象外となります。
3

管理不全土地管理命令には必ず管理不全土地管理人が指定されます。
原文
管理不全土地管理命令が出された土地などに関する権利は
第264条の10

管理不全土地管理命令が出された土地や建物、物品の面倒をみたり、手放したりする権利は管理不全土地管理人だけに認められます。
2

管理不全土地管理人は次の行為をすることが認められていますが、それ以上のことをする場合は裁判所の許可が必要です。

裁判所の許可を得ないとまずい…とは知らない人が関わった場合、その人がしたことは取り消されることなどありませんが、>管理不全土地管理人はそれなりの責任を負わねばなりません。

維持管理、メンテナンス行為。

対象の土地や建物、物品の特徴を変えない範囲で利用したり、改良する行為。
3

裁判所の許可を得るには、管理不全土地のオーナーの同意が昼用です。
原文
管理不全土地管理人に任命されたら
第264条の11

管理不全土地管理人に任命されたら、その土地のオーナーに対してきちんと対応する使命感をもって、注意深く、きちんと対応してください。
2

複数の人の共有となっている土地の管理不全土地管理人に任命されたら、オーナーのみなさんに対して公平に、注意深く、きちんと対応してください。
原文
管理不全土地管理人に任命されたのに
第264条の12

ちゃんと役目を果たさないせいで管理不全土地管理命令の対象となった土地などに大きな損害を与えてしまったら、利害関係にある方々は裁判所に請求をすると、管理不全土地管理人をクビにすることができます。
2

管理不全土地管理人に任命されても、ちゃんとした理由があれば、辞任することが認められています。
原文
管理不全土地管理人には報酬や前払いが
第264条の13

管理不全土地管理人には裁判所が決めた報酬や、経費の前払いが認められます。
2

管理不全土地管理人への報酬や前払い金は、管理不全土地のオーナーが負担してください。
原文
管理がなされていない建物のせいで迷惑を被っていたら
第264条の14

きちんと管理がなされていない建物のせいで迷惑を被っている人は、裁判所に請求してその建物の管理をする人を任命してもらうことができます。

任命された人のことを《管理不全建物管理人》といい、管理を命じることを《管理不全建物管理命令》といいます。
2

《管理不全建物管理命令》は建物とそこに置かれた物品を対象とすると同時に、建物がその土地に建ち続けていられる権利やその土地で建物を使うことにより収益を上げることを認める権利も対象となります。
3

管理不全建物管理命令には必ず管理不全土地管理人が指定されます。
4

管理不全土地管理命令が出された土地や建物、物品の面倒をみたり、手放したりする権利は管理不全土地管理人だけに認められ、維持管理などをすることは認められますが、それ以上のことをするには裁判所の許可が必要です。

管理不全土地管理人に任命されたら、その土地のオーナーに対してきちんと対応する使命感をもって、注意深く、きちんと対応し、共有の土地であれば、オーナーのみなさんに対して公平に、注意深く、きちんと対応してください。

正当な理由があれば管理不全土地管理人を辞任することは認められますが、注意深くきちんと対応しないと裁判所によってクビにされることがあります。

管理不全土地管理人には裁判所が決めた報酬や、経費の前払いが認められ、管理不全土地のオーナーが負担してもらいます。
原文
第2編 第4章 地上権:用地として土地を使える権利

第2編 第2章 占有権:今は俺のものという権利
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民法改正に伴い

改正
  令和5年4月1日に施行される条文(かみくだし作業済)

改正 令和5年4月1日に施行される条文(かみくだし作業前)

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