第2編 物権:物に関して
第二編 物権
第2章 占有権:今は俺のものという権利
第二章 占有権
第2編 第3章 所有権:ずっと俺のものという権利
第2編 第1章 この編全体でいえること
第1節 今は俺のものという権利を取得するには
第1節 占有権の取得
《占有権》を手に入れるには
- 第180条重要
- 「今は俺のもの」という意志のもとで、土地や物を押さえていると、《占有権》が手に入ります。
原文
代わりの人が使い続けていたら
- 第181条重要
- 代わりの人が「頼んだ人以外の他の人には使わせないぞ」という意思を持って使い続けていたら、頼んだ人が《占有権》を手に入れることになります。
原文
《占有権》の引き渡しの方法
- 第182条重要
- 《占有権》は、他の人に引き渡しをすることで、引き渡された人のものになります。
- 2
- 対象の物がすでに他の人かその代理の人に渡してあれば、「引き渡しをするよ」と伝えるだけで《占有権》も引き渡された人のものになります。
原文
ものが移動しなくても
- 第183条重要
- 自分が実際に占有していないものでも、実際に占有している人が、占有権を自分に渡してくれると約束したら、占有権は引き渡されたことになります。
原文
預けたままでも
- 第184条難文
-
他人に物を預けたまま、持ち主が代わるためには、次のニつの手順が必要です。
- 預けている人に「持ち主が変わるけど、これからもその人のために預かり続けてね」と伝えておくこと。
- 他人に預かってもらっていることを、新しく持ち主になる人が認めてもらうこと。
原文
持っているだけでは
- 第185条重要難文
-
いくら他の人が使えない状態だとしても、他の人に使わせない意思がなければ、それだけでは占有権を獲得したことにはなりません。。
たとえ誰のものかわからぬものであったとしても、占有権を獲得したければ、誰からもわかるように「他の人には使わせないぞ」ということを示して、自分が使い続ける必要があります。
原文
占有するときの状態
- 第186条重要
- 「自分以外に持ち主はいない」と信じていて、他人からクレームをつけられることなく、そして自分だけがおおっぴらに使い続けられる状態になければ、占有者とはいえません。
- 2
- 占有が始まる時と占有が終わる時に自分が占有していた証拠があれば、たとえ途中に占有していた証拠や実績がなくとも占有は続いていたのだな、と認められます。
原文
占有を引き継ぐとは
- 第187条
-
占有を引き継ぐにあたり、引き継ぎを受けた人は次の二つの方法から引き継ぎに関する責任範囲を指定することができます。
- それ以前のことは知らないけれど、自分が引き継いだ時から自分の“もの”である
- 前の持ち主の経緯を含めて自分が引き継いだ“もの”である
- 2
- 前の持ち主の経緯を含めて“もの”を引き継いだ場合、前の持ち主が手に入れた際の方法に問題があったら、その問題も引き継ぐことになります。
原文
第2節 占有権があれば
第二節 占有権の効力
占有しているものの扱いは
- 第188条
- 自分が占有している“もの”をどう扱うかは、他人から指図されるものではなく、違法なことをしなければ、自分の判断で決めることができます。
原文
自分のものから得られるものは自分のもの
- 第189条
- 自分の“もの”から“得られたもの”も、“自分のもの”です。
- 2
- 裁判で、「“もの”から“得られたもの”は、“あなたのもの”ではない」との判決を受けたら、「もともと全て“自分のもの”ではなかった」ことになります。
“得られたもの”ことを《果実》といいます。
事実を知らないことを《善意》といいます。
事実を知っていることを《悪意》といいます。
原文
自分のものではないとわかっているなら
- 第190条
-
自分の持ち主ではない“もの”から得られた“もの”は、本来の持ち主に返さなければいけません。
もし得られた“もの”を「食べちゃった」とか「使ってしまった」とか「別のものに加工してしまった」という場合や、うっかり壊したり無くした場合は、弁償しなければいけません。 - 2
- “暴行したり・脅迫して奪い取ったり、他人の“もの”を隠し持っている場合も、得られた“もの”を返したり弁償する義務が適用されます。
原文
占有している人の損賠賠償
- 第191条難文
-
本来自分の“もの”ではないものを占有している人が、自分のせいで“もの”を失くしたり、壊してしまったら、本来の持ち主に賠償をしなければなりません。
もし他人の“もの”とわかっている場合は、(他人の“もの”ならば、気をつけて使わなければならないはずなので)損害の全額を賠償しなければなりません。
もし自分の“もの”だと思っていた場合は、(自分の“もの”として使っていたわけだからやむを得ないところもあるので)まだ手元に残っている部分や壊れていない部分について返還しなければなりません。
なお、“もの”を借りている人や、使わせてもらっている人は、基本的には他人の“もの”だとわかって使っているいるはずなので、全額賠償しなければなりません。
原文
購入した時点で自分のものに
- 第192条
- まっとうな売り手から購入して、人からクレームを付けられることもなく占有を始め、落ち度もなく「まさか他人の“もの”じゃないだろうか」と疑うこともなければ、購入した時点で自分の“もの”として扱うことができます。
原文
盗品や遺失物は返さなければなりません
- 第193条
- なんの疑いもなく“自分のもの”だと信じていたのに、実は《盗品》や《遺失物》でだったとしたら、盗まれたり紛失した時から2年以内に盗難の《被害者》や《遺失者》から「返せ」と言われたら、引き渡さなければなりません。
原文
- 第194条
- 裁判所が行う競売はもちろん、まっとうな売り手からまっとうな商品だと信じて購入したのに、それが盗品や遺失物だったとしたら、商品自体は本来の持ち主に返す必要がありますが、自分が払った代金分は持ち主から返金してもらうことができます。
《競売》には、ネットオークションも含まれると解釈しても良さそうです。
原文
生き物を保護していると自分のものに
- 第195条
- 家畜ではなく、ペットなどの生き物をだれが飼い主なのかわからない状態で、しかも誰も「自分が飼い主だから返してくれ」と言われることなく1ヶ月を超えて保護しつづけていたら、自分がその生き物の飼い主となることができます。
原文
占有費用の請求について
- 第196条
-
もし占有をしている間に、“もの”の維持管理などに必要であまり高額すぎない程度の経費を支払ったとしたら、その費用は“本来の持ち主”に支払ってもらうことができます。
しかし占有をしている間に、“もの”から儲けを得ていたら、“もの”の維持や保管のための費用は“占有している人”が負担すべきです。 - 2難文
-
占有をしている間に、“もの”の価値や評価をアップさせるほど高額な必要経費を支払ったとしたら、“その費用全額”か、あるいは“返還時点でも残っていると認められる価値の分の金額”のどちらかを占有物の本来の持ち主が選んだ方を支払ってもらうことができます。
ただし、“本来の持ち主”が裁判所に「すぐには払えない」と相談をしたら、その費用の支払いにはある程度の時間的な猶予を与えることを認められることとします。
原文
占有の訴えについて
原文
占有を妨害されたら
- 第198条
- 占有している時、他人に妨害された場合は、裁判所に「占有を続けさせて欲しい」と訴えを起こして、妨害をやめさせたり、妨害に対する損害賠償を求めることができます。
「占有を続けさせて欲しい」という主旨の訴えを《占有保持の訴え》といいます。
原文
占有を妨害されそうになったら
- 第199条
- 占有している時、他人に妨害されることが予想されたら、「占有をじゃまされたくない」との訴えを起こして、占有を妨害されないように予め手を打ったり、損害賠償となった場合の担保を求めることができます。
「占有をじゃまされたくない」という主旨の訴えを《占有保全の訴え》といいます。
原文
奪われたら「取り返して欲しい」と訴える
- 第200条
- 他人に奪われて占有ができなくなった時は、裁判所に「取り返して欲しい」とか「損害を賠償して欲しい」と訴え出ることができます。
- 2
- 「奪われたもの」と知っていて買い取ったとしたら「取り返して欲しい」という訴えを起こすことができますが、知らなかった場合は訴えは認められません。
「取り返して欲しい」とか「損害を賠償して欲しい」という主旨の訴えを《占有回収の訴え》といいます。
“もの”を奪った人から“もの”を買い取った人のことを《特定承継人》といいます。
原文
占有の訴えができるタイミング
- 第201条
-
《占有保持の訴え》は、実際に《占有》を「妨害されている最中」か、「妨害が止まった後の1年以内」に訴えを起こさなければなりません。
しかし、自分が占有している土地に対して占有妨害目的の工事が行われるようなケースで、「工事が着手されてしまって1年が過ぎた場合」や、「工事が完成してしまった場合」は、もはや訴えは起こすことができません。 - 2
-
《占有保全の訴え》は、実際に《占有》を「妨害されそうなおそれがある場合」に、訴えを起こすことができます。
自分が占有している土地に対して占有妨害目的の工事が行われるおそれがあるようなケースでも、実際に「工事が着手されてしまって1年が過ぎた場合」や、「工事が完成してしまった場合」は、もはや訴えは起こすことができません。 - 3
- 《占有回収の訴え》は、自分が《専有していたもの》が奪われてから1年以内に訴えを起こさなければなりません。
原文
占有権と所有権が裁判したら
- 第202条難文
-
占有者の主張が認められて占有を続けられる主旨の判決がおりたとしても、本来の持ち主であれば「占有をやめさせて欲しい」と訴えを起こすこともできます。
本来自分が本当の持ち主であるという主旨の判決がおりたとしても、占有をしている人であれば「占有できるように認めて欲しい」という訴えを起こすこともできます。 - 2
- 《所有権》が自分にあるだけでは「占有できるように認めて欲しい」という訴えを起こすことはできません。
《所有権》のことを《本権》と呼んでいます。
原文
第3節 占有権がなくなる時
第三節 占有権の消滅
占有権を失う場合とは
- 第203条
-
自ら占有をやめたり、占有しているものが自分のものでなくなると、占有権は消滅します。
ただし占有していたものを取り返そうと訴えを起こした時は、占有権を失うことはありません。
原文
代理占有権が失くなる場合とは
- 第204条
- 代理人が占有をしている場合は、次の理由により占有権が消滅します。
- 一
- 代理の依頼人が代理人に占有をやめさせた場合
- 二
- 代理人が依頼人に対して「これからは依頼人以外の人のために占有をする」と言い出した場合
- 三
- 代理人が占有物を失った場合
- 2
- 代理権が失くなったからといっても占有権が失くなるわけではありません。
原文
第4節 財産権にも同じように
第四節 準占有
- 第205条難文
- この章の占有に関する規定は、自分のものにするつもりで財産の保有を認めさせる権利についても同様に適用されます。
原文
第2編 第3章 所有権:ずっと俺のものという権利
第2編 第1章 この編全体でいえること
0 件のコメント:
コメントを投稿