CONTENTS



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5.相続 3.相続の効力

第5編 遺産をどうするか

第五編 相続

第3章 相続をしたら

第三章 相続の効力

第5編 第4章 相続を受けるか放棄するか

第5編 第2章 相続を受ける人
第1節 この章全体でいえること

第一節 総則

相続で引き継ぐ権利と義務
第896条重要

相続が始まったら、相続人が遺された全ての権利と義務を引き継ぐことになります。

ただし、被相続人の当人だけしか受け取ることができない権利は、その相続人であっても受け継ぐことはできません。
原文
祀り事は誰が引き継ぐのか
第897条

遺産相続の結論とは別に、家の系譜や祭事の用具・祖先のお墓などは、地域や家の慣習に従って祖先を祀る役目を受け継ぐ人が引き継ぐことになります。

しかし、先代が特に指名をして引き継ぐ人を決めている場合には、指名された人が引き継ぐこととします。
2

地域や家の慣習がはっきりしないために、誰が引き継ぐべきか決められない場合は、家庭裁判所が指名をすることになります。
原文
相続財産が目減りしないように
第897条の2

相続財産が目減りすることがないように、家庭裁判所が財産の管理人を選び出し、必要な処置をするように命じることがあります。

相続財産の利害関係者の他に、検察からの要請で家庭裁判所は処置をする命令を発します。

ただし次のようなケースでは処置の命令を発することはありません。

  • 相続人が一人だけで、その一人が全ての相続をすると認めている場合。
  • 複数の相続人の間で、誰が何を相続するか、円満に認め合うことになった場合。
  • 相続財産の清算人が選任されている場合。
2

相続財産の管理人に任命されたら、財産目録を作ってください。

相続財産の保存や利用、改善以上のことを管理人がするには、家庭裁判所に許可を得る必要があります。

管理人の不正を防ぐため、家庭裁判所から適当な担保を課すよう命じられることがあります。
原文
複数の人で相続する場合
第898条

一つの権利を複数の人で相続を場合、その権利の扱いは相続した人たちの間で共有となります。
2

共有で相続した権利の持ち分について詳しいことは第900条から第902条の規定を適用します。
原文
第899条

二人以上の人が分け合って相続を受ける場合、分け合う割合に応じて権利や義務を引き継ぐことになります。
原文
法定相続分を超える遺産を自分のものと認めてもらうには
第899条の2

第900条第901条で規定される《法定相続分》を受ける権利を持つ人は、自動的に自分の権利として認められます。

しかし、《法定相続分》を超える分を手に入れた人が自分の権利として認められるためには、登記や登録などの対応をしておく必要があります。

これを怠ると、登記や登録をした人が権利を主張した場合、自分の権利として認められないこともありえます。
2難文

債権の相続人から、遺言の内容とともに他の相続人の割合が通知され、その中に《法定相続分》を超える分を手に入れた人がいたとしたら、債務者としてはその通知通りに債務を果たすことになります。

《法定相続分》を超える分を手に入れた債権の相続人から、遺言の内容とともに他の相続人の割合が通知されたとしたら、債務者としてはその通知通りに債務を果たすことになります。
原文
第2節 相続の分け前

第二節 相続分

法律で決められた分け前
第900条重要

最優先で相続を受ける権利を持つ人が何人かいる場合、その関係性によって割合を次のように定めます。

結婚相手と、子が1人の場合は、他に親や兄弟がいても関係なく、結婚相手と子にそれぞれ2分の1ずつ遺産を相続する権利があります。

子がいなくて、結婚相手と、親が1人の場合は、他に兄弟がいても関係なく、結婚相手に3分の2、親に3分の1の遺産を相続する権利があります。

子と親がいなくて、結婚相手と、兄弟または姉妹が1人の場合は、結婚相手に4分の3、兄弟または姉妹に4分の1の遺産をを相続する権利があります。

法律的には、結婚相手は1人、親は2人、子や兄弟姉妹は1人以上いると考えられます。

子が何人かいる場合、子の分の遺産を子の人数分で等分してください。

親が父・母ともに健在の場合は、親の分として受け継いだ遺産を父と母で2等分してください。

兄弟が何人かいる場合、兄弟として受け継いだ遺産を兄弟の人数分で等分してください。

ただし、片親だけが同じ兄弟の場合は、両親とも同じ兄弟の半分の割合しか受け取る権利がありません。
“民法によって決められている遺産を相続する権利”のことを《法定相続分》といいます。
わざわざ民法に記載はありませんが、結婚相手1人だけ、子が1人だけ、親が1人だけしかいない場合は、その人がすべての遺産を相続する権利があります。
原文
親や兄弟の分として、その子が遺産を
第901条重要

相続するはずの子がお亡くなりになっていたなどの事情により受け取るはずだった遺産を孫が引き継ぐ場合、子が受け取る相続の割合を孫がそのまま引き継ぎます。

孫が何人もいる場合は、子の分として引き継ぐ分を孫の人数で等分してください。
2

相続するはずの兄弟がお亡くなりになっていたなどの事情により受け取るはずだった遺産を甥や姪が引き継ぐ場、兄弟が受け取る割合をそのまま引き継ぐことになります。

兄弟の子が何人もいる場合は、兄弟の分として引き継ぐ分を甥や姪の人数で等分してください。
原文
遺言により受け取る人や分け前を変える
第902条重要

被相続人の希望を遺言として書き遺すと、法律で決められた相続人に限らず、相続を譲り渡す人を増やしたり、相続の割合を変えることができます。

被相続人の希望を遺言として書き遺すと、法律で決められた相続人に限らず、相続を譲り渡す人を増やしたり、相続の割合を変えることを他の人に決めてもらうこともできます。
2

遺言によって、特定の相続人の分け前について書き遺した場合、つまり、その人以外の相続人の分け前が遺言に書き遺されていない場合、記載の無い相続人の分前は残った額の法定相続分によって決められます。
原文
法定相続分と違う場合の債務負担
第902条の2

遺言によって相続する割合が法定相続分とは異なることになった場合、相続財産の中の債務の債権者がその割合に応じた債務の負担を認めれば、その割合に応じて各相続人は債務を果たすよう要求することになります。

しかし、債権者が割合が変わったことを知らなかったり、認めなかった場合は、各相続人に対して法定相続分と同じ割合で債務を果たすよう要求することが認められます。
原文
特別な便宜があった場合の遺産の分け方
第903条重要

複数の相続人がいる場合、遺産を残してお亡くなりになる前後の特別な付き合いや関係により得られた便宜を踏まえて、次の手順で分け前を計算します。

  • 遺産の総額を算出するために、その時点での遺産額を算出する一方、生前に相続人へ贈与された財産や相続人のために出費した財産があるのかを確認します。

  • 生前の贈与や出費があれば、あえて返してもらう必要はありませんが、計算上はその分も遺産の総額に含めます。

  • 遺言によって遺産を受け取る権利を得た人がいれば、その分は優先して分け前として認められ、遺産の総額から引かれることになります。

  • 遺言による分け前分を差し引いても遺産の総額に残額があれば、被相続人と相続人との続柄に基づく法定相続分により分け前を算出します。

  • 遺言による分け前が法定相続分より多くても、その差額を返す必要はありません。

  • 遺言による分け前を得た人でも、自分の法定相続分が遺言による分け前よりも多ければ、その差額は法定相続分として受け取る権利があります。

  • 生前の贈与や出費してもらった人でも、自分の法定相続分が贈与や出費分よりも多ければ、その差額は法定相続分として受け取る権利があります。

その他の人は、法定相続分により分け前を受け取る権利が与えられます。
2

生前の贈与や出費してもらった分が、法定相続分と同額以上の場合、その人が受け取る遺産に法定相続分はなくなります。
3重要

被相続人が、遺言で法定相続分による分け前の決め方ではない方法を指示していたら、その指示が優先されます。
4重要

20年以上連れ添った夫婦であれば、自分が生きている内に相方のために住み慣れた家や敷地を贈与したり、遺言で相手に譲り渡すことを記載したら、その家や敷地を遺産分割に回さずに済ますことが認められます。
“遺言を書き遺して遺産を譲り渡す”ことを《遺贈》といいます。
《遺贈》があっても最低保証分として法定相続分の1/2を取り返すことができる権利を《遺留分》といいます。
お亡くなりになる前後の特別な付き合いや関係により得られた便宜のことを《特別受益》といいます。
原文
第904条

遺産の額を決めるのは相続をした時点の価値で決めるので、遺贈や生前贈与を受け取る側の事情や行いによって価値が無くなったとしても、その分が補償されることはありません。

価値が増えたとしても没収されることはなく、減ったとしても補償されることはありません。
原文
貢献した分は差し引いて
第904条の2

被相続人の商売を手伝ったり、看病や身の回りの世話をして、財産や生活費に特別な貢献をした人には、その貢献度に応じて遺産の分け前が認められます。

この分け前は、他の相続人に貢献を認めてもらう必要があります。

貢献が認められれば、その分け前は遺産の総額から貢献度に応じて差し引かれます。

この分け前をもらった人でも他の相続人と同じように法定相続分の分け前も受け取ることができます。
2

他の相続人が貢献分の分け前を認めてくれない場合や、貢献分の分け前について話し合ってくれない場合は、家庭裁判所に請求をしてください。

請求を受けた家庭裁判所では、寄与した時期、寄与の内容、寄与の影響、寄与した時の状況など色々なことを考慮して、寄与による分け前分を決めることになります。
3

寄与による分け前は、《遺贈》を差し引いて、残った遺産から受け取ることになります。
4

家庭裁判所に貢献分の請求をするには、遺産分割全体のことを家庭裁判所に相談する(第907条第2項)ことが必要です。

ただし、相続を受け取る権利があるのに相続による遺産分割を受け取ることができなかったため、家庭裁判所に相談する場合(第910条)も、貢献分を請求することができます。
貢献による分け前のことを《寄与分》といいます。
原文
相続が始まって10年が過ぎると
第904条の3

相続が始まってから10年が過ぎると、お亡くなりになる前に特別な便宜を受けていたとしても遺産の分け方でその便宜の分を考慮する必要がなくなってしまいます。

相続が始まってから10年が過ぎると、お亡くなりになるまで貢献をしていてもそれに応じた遺産の分け前を請求することはできなくなってしまいます。

ただし、次のケースに該当すると、10年が過ぎても便宜の分を考慮したり、貢献の分を請求することが可能です。

10年が過ぎるまでに家庭裁判所に対して遺産分割の請求をしていた場合。

相続が始まってから9年6ヶ月を過ぎた時点で遺産分割の請求をすることができないやむを得ない事情があってそのまま10年が過ぎた状況で、その事情がなんとかなったのでそれから6ヶ月以内に家庭裁判所に足して遺産分割の請求をしていた場合。
原文
遺産を受け取る権利が赤の他人に譲られても
第905条

遺産を分割する前に、遺産を受け取る権利を赤の他人に譲り渡してしまう相続人がいたら、遺産分割の話し合いに赤の他人が加わることになります。

他の相続人がそんなことを望まない場合は、受け取る分け前に見合うお金をその他人に渡して話し合いには加わらせないことが認められます。
2

とはいえ、話し合いに参加させないようにするには、権利が譲られてから1ヶ月以内に限ります。
原文
第3節 遺産を分けるには

第三節 遺産の分割

どういう基準で分け前を決めるのか
第906条

遺産を分割する時は、遺産がどんな物か、どんな権利か、相続人の年齢や職業、健康や生活の状況、その他色々な事情をよくよく考慮して分け方を決めてください。
原文
分け合う前の遺産の一部が使われても
第906条の2

複数の相続人の間で、分け合う前に遺産の中の金目のものが使われていた場合、使われた分も分け合う遺産として確かに存在していたことにできます。

そのためには遺産を分け合う全ての相続人が同意することが必要です。
2

一部の相続人が、分け合う前の遺産の中の金目のものを使ってしまった場合、それに関わった相続人から同意を得なくても、かかわらなかった全ての相続人が同意すれば、使われた分も分け合う遺産として存在していたことにできます。
原文
遺産の分け方の話し合いがまとまれば
第907条

相続人同士で話し合いがまとまれば、いつでも遺産の分け方を決めることができます。

ただし、遺言によって遺産の分割を禁じた場合や相続人同士で遺産を分け合わないように申し合わせた場合は、遺産を分け合うことができません。
2

相続人同士で話し合いがまとまらず、いつまでたっても遺産の分け方を決めることができない場合は、家庭裁判所に分け方を決めてもらうことができます。

相続人同士で話し合いをすることができない場合も、家庭裁判所に分け方を決めてもらうことができます。

家庭裁判所に頼ろうとしても、遺産の一部を分けてしまうと残りを受け取る相続人に対してダメージを与えてしまう場合は家庭裁判所でも決めてもらえないことがあります。
原文
遺言の中で指示したことは
第908条

遺言の中で次の指示があったら、相続人は従う必要があります。

  • 遺産の分割の具体的な方法の指示
  • 遺産の分配を誰が仕切らせるかについての指示
  • 相続が始まってから五年以内の遺産分割の禁止の指示
2

相続人同士で話し合いをして一定の期間内は遺産を分け合わないように申し合わせをすることが認められています。

この期間は最長で5年以内か、遺産相続が始まって10年目までに限られます。
3

遺産を分け合わないように申し合わせができる期間は、最長で5年間更新することが認められています。

ただし遺産相続が始まって10年を超えて更新することは認められていません。
4

相続人同士で話し合いがまとまらず、いつまでたっても遺産の分け方を決めることができない場合は、家庭裁判所に一定の期間は遺産を分け合わないよう命じられることがあります。

この期間は最長で5年以内か、遺産相続が始まって10年目までに限られます。
5

遺産を分け合わないように家庭裁判所に命じられる期間は、最長で5年間更新されることが認められています。

ただし遺産相続が始まって10年を超えて更新されることはありません。
原文
遺産を分割する前にさかのぼって
第909条

相続が始まってから分割の手続きが完了するまでの間、遺産は共有財産の状態となります。

遺産分割の手続きが終わると、相続開始の時にさかのぼって共有状態は無かったことになり、相続人の財産となっていたことになります。

共有状態の時に相続とは無関係の人に財産を譲り渡した場合は、さかのぼって相続人の財産になっていたことにはなりません。
原文
ひとまず使える遺産の預貯金
第909条の2重要

遺産の預貯金についても、遺産分割協議がまとまるまでは全ての相続人の共有財産ということになるのですが、それだと簡単にお金を使うことができなくなって、葬式代や生活費の支払いにも支障が出てしまいます。

そこで、相続人の中の誰であってもひとまず法定相続分の3分の1については遺産分割協議がまとまる前でも自分のお金として使うことが許されます。

とはいえ、使うことが許されるのはあくまでもこの相続に関わる人にとって常識的な葬式代や生活費などの金額までで、具体的には法務省令によって上限額が決められます。

なお、このお金は遺産相続協議の結果により受け取る額を前払いしてもらったことになるため、その分の金額は受け取る額から引かれることになります。
原文
新しい相続人には現金で我慢を
第910条

相続の手続きが終わった後で、認知が認められたなどの理由で相続人が増えることがあります。

新しい相続人が増えた時点で現金以外の遺産の分配が終わっていたり、その遺産の現金化が終わっていたら、現実的にはその遺産そのものを新しい相続人に分配することは困難です。

その場合、新しい相続人には、その遺産の現物の代わりとして、現金での受け取りで我慢してもらうことになります。
原文
自分の分け前に不良や過不足があったら
第911条

分配されて受け取った遺産が不良品だったら、お店で商品を購入した場合と同じ様に、他の相続人に修理や交換、あるいは賠償を要求できます。

分配されて受け取った遺産に過不足があったら、お店で商品を購入した場合と同じ様に、他の相続人に補充、あるいは賠償を要求できます。

分配されて受け取るべき遺産がいつまでたっても受け取れない場合は、お店で商品を購入した場合と同じ様に、他の相続人に賠償を要求できます。
原文
相続した遺産の債権が回収できない場合
第912条

遺産の中の未回収の債権が回収できなくなった場合、他の相続人は自分の受け取った分け前の割合に応じて、回収できなかった債務の分をなんとかしてあげる必要があります。

その責任は遺産を分割した時点の債務を対象とするので、その後の経緯で回収ができなくなった場合については責任の対象とはなりません。
2

時間のかかる債権や、条件がかなった場合にかえしてもらえるような債権に関しては、債務を果たしてもらえるようになった時点で回収ができない場合、他の相続人は自分の受け取った分け前の割合に応じて、回収できない債務の分をなんとかしてあげる必要があります。
原文
なんとかしてあげられない場合
第913条

回収できなかった債権をなんとかしするときに、その中の1人がなんとかできない場合、その他の相続人と回収できなかった当人で分け前の割合に応じてさらになんとかしてあげることになります。

しかし、その当人のせいで相続の債権を回収できなくなった場合は、さらになんとかしてもらうことはできません。
原文
遺言で、他の責任の負わせ方をしても
第914条

次の規定が気に入らないと思ったら、遺言の中で別の方法を指示してもかまいません。
  • 自分の分け前に不良や過不足があった場合の規定(第911条
  • 相続した遺産の債権が回収できない場合の規定(第912条
  • なんとかしてあげられない場合の規定(第913条
原文
第5編 第4章 相続を受けるか放棄するか

第5編 第2章 相続を受ける人
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民法改正に伴い

改正
  令和5年4月1日に施行される条文(かみくだし作業済)

改正 令和5年4月1日に施行される条文(かみくだし作業前)

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