第3編 債権:相手に何かをしてもらう権利
第三編 債権
第2章 契約:約束や取引を交わす14の方法
第二章 契約
第3編 第3章 事務管理:親切心でしてあげる作業
第3編 第1章 この編全般にいえること
第1節 この章全体にいえること
第一節 総則
第1款 契約が成立するためには
第一款 契約の成立
契約は自由に
- 第521条重要
-
契約をするかどうかは、誰でも自由に決めることができます。
もちろん、法令で制限の対象になっている人はその制限に従わなければなりません。 - 2
- 契約の当事者は、法令の制限内で、契約の内容を自由に決めてかまいません。
原文
契約を成立させるためには
- 第522条重要
-
契約の内容を相手に示して、契約を結びたいと伝えることを《契約の申込み》といいます。
契約を申し込まれた相手がこれを承諾したら、契約は成立します。 - 2
- 法令で義務化されているケースを除き、契約が成立するために、必ずしも契約書を交わすことなどは必要としません。
原文
承諾の期限を決めて申し込みをしたら
- 第523条
-
承諾の期限を決めて申し込みをしたら、その期間中に申し込みを取り下げることはできません。
もちろん、申し込みを取り下げる権利が認められている場合は撤回しても問題ありません。 - 2
- 「いついつまでに承諾をしてください」という内容を含む契約の申し込みをしたのに、「承諾します」という回答を得られなかった場合は、その申し込みは無効となります。
原文
承諾の回答が期限内に届かなくても
- 第524条
- 期限に遅れて承諾の回答が届いた場合、自分がした契約の申し込みとは別に、新たな契約の申し込みを受けたものとしてその回答に対応してもかまいません。
原文
申し込みを取り下げるためには
- 第525条
-
契約の申し込みを取り下げるためには、承諾の回答をもらうために必要十分な時間をかけた上でなければ認められません。
もちろん、申し込みを取り下げる権利が認められている場合は、承諾の回答をもらうまでもなく、撤回が認められます。 - 2
- 互いに顔を突き合わせて商談している最中であれば、契約の申し込みを口にしたとしてもその場で取り下げることが許されます。
- 3
-
互いに顔を突き合わせて商談している最中に行われた契約の申し込みに対して、その場で承諾をしなければ、申し込みはスルーされたことになります。
その場で保留の回答をしたら、申し込みに対する結論は持ち越されることになります。
原文
申し込みをした後で死んでしまったら
- 第526条
-
申し込みをした後でその人が死んでしまった場合、相手がその申し込みに対する承諾の返事をしていなければ、申し込みを無効にすることができます。
申し込みに際して、「自分が死んでしまったらこの申し込みは無効にする」と伝えていれば、申し込みを無効にすることができます。
意識が戻らない状態になったり、成年後見人などの契約を自分で結べない状態になった場合も、承諾の返事の前や、申し込みに際して無効のことを伝えていれば、申し込みを無効にすることができます。
原文
相手の承諾がなくても
- 第527条
-
申し込みをした相手からの承諾がなくても契約を成立させてかまわない、と申し込みをした本人が了解をしている場合は、相手が承諾したとわかる状況があれば、契約は成立となります。
また、社会一般的で通用するルールで、承諾がなくても契約を成立させてかまわないことになっている場合も、相手の承諾がなくても契約は成立となります。
原文
契約の申し込みに条件や変更が加わったら
- 第528条
- 契約の申し込みに対して、条件をつけたり、内容の一部を変更して承諾の返答が返ってきたら、元々の契約の申し込みはいったん拒否されて、新しい内容の契約の申し込みがされたものとみなされます。
原文
懸賞広告
- 第529条
- 「“ある行為”をした人には○○がもらえる」というキャンペーンの広告をしたら、たとえその行為をした人が何かもらえることを知らなかったとしても、広告の内容通りの義務を果たさなければなりません。
原文
期間が決められている懸賞
- 第529条の2
-
「この期間に“ある行為”をした人には○○がもらえる」というキャンペーンの広告をしたら、キャンペーンを中止することはできません。
中止をする可能性がある場合、あらかじめ広告の中で中止することがあるということも伝えておく必要があります。 - 2
- 「この期間に“ある行為”をした人には○○がもらえる」というキャンペーンの広告をしても、だれもその行為をしてくれなかった場合は、キャンペーンを無効にしてもかまいません。
原文
期間を決めずに、さしあたって誰もいないと
- 第529条の3
-
期間を決めずにキャンペーンの広告をしたケースで、さしあたって誰も“ある行為”をしていない場合、このキャンペーンを中止することが認められます。
しかし、広告の中でキャンペーンを中止しないことを伝えていたら、中止することは認められなくなります。
原文
懸賞を中止にしても
- 第530条
- 期間を決めずにキャンペーンの広告をしたケースで、誰も“ある行為”をしないという理由でキャンペーンを中止した場合、キャンペーンが中止になったことを知らない人に対しても、中止は有効になります。
- 2
- 誰も“ある行為”をしないという理由以外でキャンペーンを中止した場合、それを知らない人に対しては、中止が有効になりません。
原文
懸賞の報酬を受けるのは
- 第531条
- 複数の人が懸賞に応募している場合、一番最初に応募した人だけが受賞の権利を獲得できます。
- 2
-
複数の人が懸賞に同時に応募している場合、応募した人数の割合に応じて受賞の権利を獲得できます。
しかし、「大勢の人が分け合うことができないような懸賞内容」の場合や、「懸賞広告の中で受賞者が一人だけだと発表」している場合は、抽選で受賞者を決定します。 - 3
- 受賞者の選定方法や受賞者数については前二項以外の方法を懸賞広告で発表した場合は、発表した方法を採用することができます。
原文
最優秀者が受賞できる懸賞
- 第532条
- 複数の人の中から一番優秀な応募をした人が報酬を受けられる懸賞を行うには、必ず応募期間を設定してください。
- 2
-
最優秀者が受賞できる懸賞で審査員を発表しない場合は主催者が判定をしてください、
広告発表の中で審査員を決めている場合は、その人に判定をしてもらってください。 - 3
- 懸賞に応募した人は、懸賞主催者または審査員の判定結果にクレームをつけることはできません。
- 4
- たとえ最優秀の受賞者と応募内容が同等の人であっても、懸賞主催者または審査員の判定結果にクレームをつけることはできません。
原文
第2款 契約するとどうなるか
第二款 契約の効力
相手が債務を果たすまで
- 第533条重要
-
当事者が互いに何かをしてあげて、互いに見返りを受けると定めた契約を交わした場合、相手が債務を果たしてくれるまで、自分も債務を果たすことを拒否できます。
また、相手が契約した債務を果たせない場合、それに代わる損害賠償を果たしてくれるまで、自分も債務を果たすことを拒否できます。
もちろん相手が債務を果たす期限になっていなければ、「債務を果たせ」ということはできません。
相手が債務を果たすまで「自分も債務を果たさない!」、という原則のことを《同時履行の抗弁》といいます。
当事者双方が相手に何かをして見返りを受ける契約のことを《双務契約》といいます。
原文
- 第534条〜第535条
- 削除
債務を果たせない場合
- 第536条重要
-
お互いにやむをえない理由で自分の債務が果たせなくなったケースで、本来の債務の代わりに「こちらの都合で何かしてあげればいいでしょ」というわけにはいきません。
債権者である相手方に、代わりが「こちらの都合通りでいいのか」判断してもらう必要があります。 - 2
-
自分のせいで債務を果たせなくなった場合、必ず代わりに何かをする必要があります。
もし債務を果たさないことによって、利益を得ることがあれば、その利益は債権者に渡す必要があります。
原文
ある人に何かをしてあげて
- 第537条
- 「ある人に何かをしてあげて」という契約をしたら、そのある人は契約をした相手に直接何かをしてもらう要求をしてもかまいません。
- 2
- 「ある人に何かをしてあげて」という契約を結ぶにあたり、そのある人というのが具体的な誰かというのは決まっている必要はなく、なんなら架空の人物だとしてもかまいません。
- 3
- 契約で何かをしてもらえることになった、ある人が契約の内容を受け入れなければ、何かをしてもらえる権利は成立しません。
原文
人に何かをしてあげる義務が生じたら
- 第538条
- 人に何かをしてあげる義務が生じたら、その権利の契約をした当事者といえども、その内容を変更したり、契約解消はできません。
- 2
- 人に何かをしてあげる義務を果たさないからといって、何かをしてもらえる権利を得た人が承諾をしないかぎり、契約によって権利を与えた当事者といえども、契約を解除することはできません。
原文
何かしてあげる義務を果たさなくても
- 第539条
- 何かをしてもらえる権利がある人に契約上の問題があれば、何かしてあげる義務を果たさないことが認められる場合があります。
「何かしてあげる義務を果たさない」と、何かしてもらえる側に伝えることを《債務者の抗弁》といいます。
原文
第3款 権利や義務を別の人に
第三款 契約上の地位の移転
- 第539条の2
- 契約を交わした一方が、契約相手とは別の人との間で、自分の債権者としての権利や債務者としての義務などを譲ることを決めた場合、契約を交わしたもう一方の相手がそのことを承諾したら、その権利や義務がその人に移ることになります。
原文
第4款 契約はなかったことに
第四款 契約の解除
《解除》をするためには
- 第540条重要
- 相手が債務を果たしてくれないことを理由に、契約の内容や法律の規定で《解除》が認められる場合、相手に対して「この契約を解除する」とはっきり伝えることにより《解除》が認められます。
- 2
- ひとたび相手に「解除する」と伝えたら、これを撤回することはできません。
債務者がちゃんと契約を果たしてくれないので、契約を打ち切って契約をしていなかったことにすることを《解除》といいます。
【おさらい】
●契約をする気があるか?
・そもそも契約などしていない → 《不成立》
・契約を結ぶことを止める → 《撤回》
・契約はします
↓
《成立》
●《成立》した契約の内容に法律上問題は無いか?
・問題が有る
↓
●取消できるが、取り消すか?
・取り消す → 《無効》
・取り消さない
↓
・問題は無い ↓
↓ ↓
●債務をちゃんと果たしたか?
・ちゃんと果たしてくれない
↓
●契約を打ち切って、契約しなかったことにするか?
・打ち切る → 《解除》
・がまんしてそのまま続ける
↓
・ちゃんと果たしている ↓
↓ ↓
●《有効》な契約だが、途中で止めるか?
・このさきは止める → 《解約》(注)
・このまま続ける
↓
・契約を果たし終える
↓
《満了》
(注)解除と解約はグレーゾーン有り
●契約をする気があるか?
・そもそも契約などしていない → 《不成立》
・契約を結ぶことを止める → 《撤回》
・契約はします
↓
《成立》
●《成立》した契約の内容に法律上問題は無いか?
・問題が有る
↓
●取消できるが、取り消すか?
・取り消す → 《無効》
・取り消さない
↓
・問題は無い ↓
↓ ↓
●債務をちゃんと果たしたか?
・ちゃんと果たしてくれない
↓
●契約を打ち切って、契約しなかったことにするか?
・打ち切る → 《解除》
・がまんしてそのまま続ける
↓
・ちゃんと果たしている ↓
↓ ↓
●《有効》な契約だが、途中で止めるか?
・このさきは止める → 《解約》(注)
・このまま続ける
↓
・契約を果たし終える
↓
《満了》
(注)解除と解約はグレーゾーン有り
原文
債務を果たしてくれないので解除
- 第541条
-
契約相手が債務を果たしてくれず、十分な時間を与えて債務を果たすように催促をしても、一向に債務を果たしてくれない場合は、この契約を解除することができます。
とはいえ、果たしてくれない債務が一般的に「その程度のことなら…」といえるレベルであれば、何が何でも《解除》というものではありません。
原文
こんなケースは催促なしでも
- 第542条
- 次のケースでは、催促をしなくても即、契約を解除することが認められます。
- 一
- 相手に全く債務を果たす能力が無いケース。
- 二
- 相手が「債務を全く果たさない」と言い出したケース。
- 三
- 相手に債務の一部を果たす能力が無かったり、相手が「債務の一部を果たさない」と言い出したせいで、それでは契約をした目的が果たされないケース
- 四
- 契約の目的を果たすために必ず守って欲しい期日までに、相手が債務を果たしてくれなかったケース。
- 五
- いくら督促をしたって、相手が債務を果たしてくれる見込みが全く無いことが明らかなケース。
- 2
- 次のケースでは、催促をしなくても即、契約の一部を解除することが認められます。
- 一
- 相手に債務の一部を果たす能力が無いケース。
- 二
- 相手が「債務の一部を果たさない」と言い出したケース。
原文
自分のせいで履行してもらえないんだから
- 第543条
- 催促なしで解除できるケースに該当しても、債権者自身のせいで債務を履行してもらえない場合、債権者から催促なしで契約の解除はできません。
原文
一部の人だけでの解除は
- 第544条
-
複数の人を相手に契約をした場合、契約相手の全員をまとめて契約を解除することはできますが、その内の一部の人だけ契約を解除することはできません。
自分と他の複数の人といっしょに契約をした場合、他の全員の許可があれば契約を解除することはできますが、他の全員の許可無く自分だけで契約相手を解除することはできません。 - 2
- 複数の人との許可を得て解除をすることになったとしても、その内の一人でも解除をする理由がなくなったとしたら、他の人にも解除をすることが認められなくなります。
原文
解除をしたら
- 第545条
- 解除の話がまとまると、契約をした双方に契約前の状態に戻す義務が生じます。しかし、解除をするまでに契約の当事者以外の人にしてあげたことまでは戻すのは義務ではありません。
- 2
- 解除の話がまとまって、お金を返す場合、お金を受け取ってから返すまでの間の利息についても支払う必要があります。
- 3
- 解除の話がまとまって、お金以外のものを返す場合、それを受け取ってから返すまでの間に得た収益についても返す必要があります。
- 4
- 解除をすることとは別に、相手から受けた迷惑分に対して損害賠償を要求してもかまいません。
原文
決められた期限内に解除をするつもりがなければ
- 第547条
-
解除の期限が決められていなくても契約を解除することができる状態にあれば、十分な余裕のある期限を与えて、解除をしないのか返答をして欲しいと要求することができます。
この要求をしたにもかかわらず、その期限までに解除の通知を受けなければ、相手には解除をするつもりがない、と認められます。
原文
解除ができる立場の人でも返せなくなったら
- 第548条
-
契約を解除できる立場であっても、わざとあるいはうっかりミスによって契約相手から受け取ったものを次のようにしてしまったら、解除はできなくなります。
- 壊してしまった
- 何らかの理由で返却できなくなった
- 何か別のものに加工して元にもどせなくなった
しかし契約解除できる立場であることを知らずに、受け取ったものを返却できない状態にした場合は、解除ができなくなるとは限りません。
原文
第5款 色んな人に同じ内容の契約を結ぶためのルール
第五款 定型約款
《定型約款》の合意をもらって契約を結ぶには
- 第548条の2重要
-
“色んな人に対して同じ内容で内容で契約を結ぶためのルール”を《定型約款》といいます。
《定型約款》によって契約を結び、その契約の全ての項目に対して合意をしてもらうためには、次の条件をクリアーする必要があります。 - 一
- 《定型約款》に対して合意をしてもらうこと。
- 二
- 《定型約款》を用意した側から、示された側に予めきちんとその内容が伝えらていること。
- 2
- たとえ《定型約款》の条件をクリアーしたとしても、社会常識に照らしても法外で、合意する側の権利を一方的に小さくする内容であったり、合意する側の義務を一方的に重くするものであったら、その合意は認められません。
原文
《定型約款》を提示しないと
- 第548条の3重要
-
《定型約款》に提示されて契約を結ぶケースで、《定型約款》を書面やeメールなどで受けとっていないため契約内容に不明な点があれば、相手に《定型約款》を見せてもらうよう要求することが認められます。
要求を受けたら、できるだけ速やかに《定型約款》を再提示しなければなりません。 - 2
-
《定型約款》による契約をするにあたって、《定型約款》の提示がきちんと行われなかったら、《定型約款》に書かれていた内容について合意はなかったものと見なされます。
ただし通信障害などが発生したなどのやむを得ない事情により提示することができなかった場合は、合意したことが認められます。
原文
《定型約款》を変更したい場合は
- 第548条の4重要
- 《定型約款》を提示した側で、これを合意した多くの人に改めて一軒ずつ合意を取り直さずに変更したい場合は、次のどちらかの条件をクリアする必要があります。
- 一
- 変更をすることによって、合意した相手の方にメリットがあること。
- 二
- 変更をする必要性があり、変更する内容が妥当であり、変更する手続きが適切であり、変更する環境が整った上で、変更をしたとしても、契約を結んだ主旨が守られること。
- 2
- 《定型約款》を提示した側で、実際に変更を行う際には、実際に変更する時期を決めた上で、いつから、どのように変更するのかをインターネットやその他の適当な方法を使って、相手の方に伝えておく必要があります。
- 3
- 必要にせまられて《定型約款》を変更するケースで、相手の方に変更の時期やその内容を伝えておくことができなかった場合は、変更が認められません。
- 4
- 第548条の2第2項では、合意する側の権利を一方的に小さくする内容や合意する側の義務を一方的に重くする内容が法外な場合は《定型約款》を認めないとありますが、変更の場合は一方的過ぎであれば必ずしも法外でなくても変更を認めないことになります。
原文
第2節 贈与:あげたり、もらったり
第二節 贈与
贈与が成立するには
- 第549条
-
贈る人の気持ちを贈られる人が受け止めた時、贈与が成立します。
贈る人の気持ちを贈られる人が受け止めないと、贈与は成立しません。
原文
書面で贈与をすると伝えていなければ
- 第550条
-
贈与することを書面にして相手に伝えていなければ、贈与を取りやめることができます。
たとえ書面にしていなかったとしても、いったん贈与をし終えていたら取りやめるというわけにはいきません。
原文
贈与するものや権利のコンディション
- 第551条
- 贈与することが決まったら、贈与するものや権利のコンディションは贈与を決めた時点と同じクォリティで譲り渡してください。
- 2
- 何かをしてもらう代わりに贈与をする場合、贈与するものや権利のコンディションは商品の売買と同じクォリティで譲り渡さなければなりません。
原文
定期的に贈与する側でも受け取る側でも
- 第552条
- 定期的に贈与をする約束を結んでいたら、贈与をする側の人でもぞれを受け取る人で、どちらかがお亡くなりになったら、その約束は終了となります。
“毎月あるいは毎年のように、定期的に贈与を繰り返すこと”を《定期贈与》といいます。
原文
何かをしてもらう代わりの贈与には
- 第553条
- 何かをしてもらう代わりに贈与をする約束は、贈与に関する規定の他に、“相手に債務を果たしてもらうまでは自分の債務も果たす必要はない”ことを定めた規定も、同じように適用します。
“相手に債務を果たしてもらうまでは自分の債務も果たす必要はない”ということに条件の契約を《双務契約》といいます。
原文
お亡くなりになってから始まる贈与
- 第554条
- 贈る人がお亡くなりになると始まる贈与は、贈与に関する規定の他に、《遺贈》に関する規定についても同じように適用することとします。
《遺贈》について詳しくはこのあとの「第5編第7章 遺言」の規定を参照願います。
原文
第3節 売買:売ったり買ったり
第三節 売買
第1款 この節全体にいえること
第一款 総則
売買契約とは
- 第555条
- 何らかの財産権を相手に渡す約束に対して、相手からその代金の支払いをしてもらう約束をすると、売買契約が成立します。
原文
売買したいと伝えたら
- 第556条
- 売手が「売りたい!」と伝え、買手が「買います」と返事をした時、または、買手が「買いたい!」と伝え、売手が「売ります」と返事をした時、売買が成立します。
- 2
-
売買を了解するかしないかの返事をいつまでにするかを決めなかったためにその返事がもらえない場合は、改めて「いつまでに返事をくれるのか」催促をしてください。
それでも相手がその期間内に返事をくれないのであれば、それは売買をするつもりがない、ということになります。
原文
手付金を渡したら
- 第557条重要
-
手付金を渡したら、その手付金を放棄することにより、自分の都合で解除することが認められます。
手付金を受け取ったら、その手付金を倍返しすることにより、自分の都合で解除することが認められます。
ただし、相手がその約束を果たし始めてしまったら、手付金を放棄したり倍返しするだけでは解除を認めてもらえません。 - 2
-
手付金による解除が成立した場合は、損害賠償を要求することはできません。
解除と損害賠償の関係については第545条第4項に記載されています。
原文
契約の費用はワリカンで
- 第558条
- 売買契約にかかる費用は、当事者双方のワリカンとします。
原文
お金のやりとりを伴う契約についても
- 第559条
-
お金のやりとりを伴う契約には、この節の売買に関する規定を同じ様に適用します。
とはいえ、売買に関する規定がなじまないケースでは適用する必要はありません。
原文
第2款 売ったり買ったりしたら
第二款 売買の効力
売買が成立したら協力も
- 第560条重要
- 売買が成立したら、売主はものや権利を買主に移転するだけではなくて、買主が登記や登録をきちんと行えるように協力する必要があります。
原文
他人のものを売却したのなら
- 第561条重要
-
必ずしも自分のではなくても、つまり他人のものや権利であっても、売却すること自体なんら問題ありません。
しかし、他人のものを売却したのなら、そのものや権利を手に入れて買主に引き渡す義務があります。
原文
商品トラブルは売主が何とかせねば
- 第562条
-
買ったはずの商品が違っていたり、品質が劣っていたり、数が足りないなどのトラブルがあれば、売主に対して何とかするよう要求することが認められます。
売主側は、無用な負担や迷惑をかけない限り、必ずしも買主が要求したのとは違う方法で何とかしてもかまいません。 - 2
- 商品トラブルの原因が買主側にある場合、売主側に何とかするよう要求することは認められません。
原文
商品トラブルがなんともならなければ値引きしてらう
- 第563条
- 購入した商品が、買ったはずの商品と違っていたり、品質が劣っていたり、数が足りないなどのトラブルがあって、売主に何とかするように要求しても、決められた期限を過ぎても何とかしてくれない場合、問題の度合いに応じて値引きしてもらうことが認められます。
- 2
- 次の場合は、売主に何とかするように要求するまでもなく、また期限を決めるまでもなく、値引きしてもらうことが認められます。
- 一
- 何とかすることが不可能な場合。
- 二
- 売主が、何とかすることを明確に断った場合。
- 三
- その日、その時までに何とかしてくれなければ、商品を買った意味が無いのに、その期限を過ぎてもなんともならなかった場合。
- 四
- 売主が何とかするといったとしても、誰がどう考えてもなんともならないことが明らかな場合。
- 3
- 商品トラブルの原因が買主の方にある場合、売主に対して値引きしてもらうことは認められません。
原文
商品トラブルで損害賠償
- 第564条
- 商品にトラブルがあった場合、買主は値引きや何とかしてもらうよりも、損害賠償を請求したり、契約を解除することを優先してもかまいません。
原文
受け取った権利が契約内容とは違っていたら
原文
問題に気づいて1年以内に
- 第566条
-
購入した商品が契約したものと違っていたり、品質に問題があっても、それに気づいた時から1年以内に売主にクレームをつけなければ、なんとかしてもらうことも、値引きや、契約の取り消し、損害賠償の請求もできなくなります。
ただし、売主も商品を引き渡す時点で商品に問題があることを知っていたり、問題があることに気づけなかった場合は、1年以内にクレームをつける必要はありません。
原文
商品を受け取った後は
- 第567条重要
-
売主にも買主にも責任がないのに商品トラブルが発生した場合、それが商品を受け取った後には、トラブルを理由に何とかしろとか、値引きや損害賠償、契約解除の請求は認められなくなります。
もちろん代金は支払わなければなりません。 - 2
- ちゃんとした商品を売ってもらったのに、買主が一方的に受け取らない状況で売主にも買主にも責任がないのに商品トラブルが発生した場合、売主側が商品の引き渡しの段取りが整った時点より後には、何とかしろとか、値引きや損害賠償、契約解除の請求はできなくなります。
原文
競売で落札したはずなのに
- 第568条
-
競売について詳しいことは民事執行法などで規定されています。
売買契約の場合と同様に、競売で落札した品の場合も次のようなトラブルに見舞われたら、契約を解除したり、値引きを要求することができます。
- 2
- 落札した品にトラブルがあっても債務者に代金の返金が無理な場合、競売による代金を受け取った債権者に対して代金の返金を請求することが認められます。
- 3
- そもそも競売にかけられるものや権利がないことを債務者や債権者がわかっていたのに競売を開いた場合、落札してしまった人は彼らに損害賠償をすることが認められます。
- 4
- 商品の売買契約とは違い、競売に関しては、落札したもののクォリティに問題があったとしても、それを何とかしろと要求したり、契約の解除や値引きの要求は認められません。
原文
債権を売る時に
- 第569条
- 「必ず債務者はお金を払います」と言って債権者が自分の債権を売る契約をしたら、少なくともその時点における債権の財産的な価値に責任を負ったことになります。
- 2
- 「時期が来たら、必ず債務者はお金を払います」と言って債権者が自分の債権を売る契約をしたら、その時期における債権の財産的な価値に責任を負ったことになります。
原文
買主が抵当権を何とかしたら
- 第570条重要
-
不動産には、抵当権や先取特権、質権がついていて買主としては困った状態になっている場合があります。
買主の所有権をきちんとするため、このような状態を何とかするのに費用がかかってしまったら、この費用は売主に支払いを請求することが認められます。
原文
- 第571条
- 削除
なんとかしないと契約しても
- 第572条重要
-
買ったはずの商品と違っていたり、品質が劣っていたり、数が足りないなどのトラブルがあることを売主が知っていたら、契約の中で商品にトラブルがあっても何とかしないという内容が含まれていても、その責任から逃れることはできません。
売主が、買主以外の人に譲り渡すという内容の契約を結んだ場合も、契約の中でトラブルがあってもなんとかしないという内容が含まれていても、その責任から逃れることはできません。
原文
代金の支払期限
- 第573条
- 売ったものを引き渡す期限を設定したら、代金の支払いは同時に行うことが基本となります。
原文
代金の支払場所
- 第574条
- 売ったものの引き渡しと代金の支払いが同時の場合は、その場で行なうようにしてください。
原文
ものから産み出されたものと、支払いが遅れたら
- 第575条
- 売買契約成立後から売ったものを引き渡すまでの間に、その物から生み出されたものは、売手のものとします。
- 2
-
代金の支払いが遅れたら、引き渡しの日から代金に対する利息が発生することになります。
ただし、引き渡しの日以降に支払日が設定してある場合は、支払日から利息が発生することになります。
原文
買っても自分のものではなくなるかもしれない時は
- 第576条
-
せっかく購入した商品なのに、他人から「それは私のだから返せ」といわれて自分のものにできないリスクがある場合、リスクに応じて代金の支払いを拒否することができます。
もちろん、その時は代わりのものを譲り渡すと約束している場合は、その支払いに応じてください。
原文
抵当権つきの不動産を買ってしまったら
- 第577条重要
-
他人の抵当権がついた不動産を購入してしまったため、《抵当権消滅請求》をして、その結果が出るまで、代金の支払いを拒否できます。
とはいえ、いつまでも支払いを拒否されたら売主はかないませんので、さっさと《抵当権消滅請求》を進めてくれと要求されたら買主はこれに応えて対応してください。 - 2
- 抵当権の代わりに、買主にとって好ましくない先取特権や質権がついてる不動産の場合も、前項の規定を同じように適用することとします。
買手の希望する金額を支払う代わりに、抵当権を白紙にするよう抵当権者に要求することを《抵当権消滅請求》といいます。
原文
代金を支払ってもらえない場合は
- 第578条
-
他人のものになるリスクがある商品や不動産のせいで買手から代金の支払いを拒否された場合、買手に対してその代金を供託してもらうという手があります。
《抵当権消滅請求》のせいで買手から代金の支払いを拒否された場合も代金を供託してもらう手が使えます、
原文
第3款 お金を払って取り返す
第三款 買戻し
いずれ買い戻される土地
- 第579条
-
不動産の売買契約の中に、不動産を手放した売主がいずれ買い戻すとしていたら、代金と契約の諸経費を返せば、この売買契約を解除することが認められます。
契約の中で特に取り決めをしていたら、代金と契約の諸経費とは異なる金額を返すことで売買契約を解除してもかまいません。
契約の中で特に取り決めをしなければ、買手が所有していた時に得られた不動産からの利益と代金の利息とは相殺されるものとします。
原文
買い戻しの期限
- 第580条
-
買い戻しの期限を設定するなら、売買契約をした時から10年以内としてください。
この期限を超えた約束をしたとしても、超えた部分は無効となり、10年以内という約束をしたことになります。 - 2
- たとえ買い戻しの期限が10年未満として設定したとしても、ひとたび約束をしたら、後になってこれを引き伸ばすことはできません。
- 3
- 期限を設定せずに買い戻しの約束をした場合、5年以内に行なってください。
原文
登記した賃借人がいる不動産の買い戻し
- 第581条
- 売買契約と同時に買い戻しの約束を登記したら、たとえその不動産が契約をした相手以外の人に譲り渡されたとしても、その人から買い戻しができることになります。
- 2
-
買い戻しの登記をしていた不動産であっても、賃借していることを登記した賃借人がいる場合、賃借契約中の最大1年までは買い戻しを理由に賃借人を追い出すことはできません。
しかし買い戻した人に嫌がらせをするために賃借人になったとしたら、追い出すことも認められます。
原文
売手の代わりに買い戻しをされそうになったら
- 第582条
-
債務を果たす気のない売手のせいで、その売手の債権者に不動産を買い戻しされそうになったら、買手としては買い戻されないために次の手を打つことができます。
まず、裁判所で鑑定人を選んで決めてもらい、不動産の鑑定評価をお願いします。
続いて、その評価額から、売手が返済しなければならない金額の分を代わりに返済します。
そして、返済分は売手への代金支払いからは減額し、残った金額分だけは売手に支払います。
原文
買い戻しを実行する場合
- 第583条
- 買い戻しをするには、第580条に規定されている期限内に代金と契約に関わる経費を支払う必要があります。
- 2
-
不動産を買い戻すまでに立て替えた不動産に関わる経費は、買い戻すつもりの売手が支払ってください。
買い戻されるまでに不動産を良くするためにお金を使いすぎていて、売手が裁判所に泣きついて認められたら、立替費用の払い戻しは待たされることもあります。
原文
共有している不動産での買い戻し
- 第584条難文
-
何人かで共有の不動産で、一部の人が自分の持ち分について買い戻しの約束をしたとします。
それを買い受けた人がその不動産を分割した場合は、不動産全体ではなく、分割された部分だけが買い戻しの対象になります。
同じように、その不動産が競売にかけられた場合については、その代金分が買い戻しの対象になります。
しかし、買主が買戻しをするつもりの売主に無断で不動産の持ち分を分割したり、競売にかけようとしても、買い戻しの権利は優先されることになります。
原文
- 第585条難文
-
前条と同じケースですが、共有の不動産の一部の人が自分の持ち分について買戻しの約束をした上で売却した後に、その不動産が競売にかけられることになったため、その不動産を買い取った人が自分で落札をしたとしします。
元の売手がこの不動産を買戻しするためには、第583条で規定されている代金や経費に加え、競売の代金も支払う必要があります。
それだけの代金や経費の全てを支払ったとしたら、買戻しによって共有ではなくなった不動産の全ての所有権を獲得することができます。 - 2
-
一部の人が買戻しの約束をしている共有の不動産で、他の共有の持ち主がこの不動産の分割を要求したため競売にかけられることになり、買戻しの約束をしている買手が落札をしたとします。
この場合は元々の共有の不動産というわけではなくて買手の単独所有の不動産になっていますので、元の売手が「元々の共有の部分だけ買戻しをしたい」ということはできなくなります。
原文
第4節 交換:物と物とを交換する
第四節 交換
- 第586条
- 金銭以外の財産に関する権利について、当事者同士が相手に権利を譲り合うことを約束したら、《交換》が成立します。
- 2
- 当事者の一方が、交換と同時にお金を支払うことを約束したら、お金の支払いに関しては《売買》の規定を同じように適用します。
原文
第5節 消費貸借:同じ物を返す条件の貸し借り
第五節 消費貸借
使ってしまったものと同じ物を返す条件で
- 第587条
- 「借りたら使ってしまうので、後ほどそれと同じものを同じ数量を返します」ということを約束した上で、相手と物やお金の貸し借りをしたら《消費貸借》が成立します。
原文
契約書だけでも消費貸借
- 第587条の2
- 契約した時点では物やお金を受け取らずに、契約書だけ交わすというやり方でも《消費貸借》が成立します。
- 2
-
契約書を交わしても、物やお金を受け取るまでは借主側から契約を解除することが認められます。
契約を解除されても貸主は文句をいえませんが、契約を解除されたことにより具体的な損害が生じてしまった場合は損害賠償を請求することが認められます。 - 3
- 契約書を交わしてから、物やお金を受け取るまでの間に当事者のどちらかが破産してしまった場合、この契約は無効になります。
- 4
- 契約書は書面に限らず、パソコンやインターネットなどを使って行ったものでも有効です。
原文
借りたら同じものを返します
- 第588条
- 物やお金を貸しますという人がいて、借りる人が「同じものを同じ数量返します」という契約をしたら、《消費貸借》は成立します。
原文
利息はいるよね
- 第589条
- 利息を取るためには、「利息はいるよね」と取り決めておく必要があります。
- 2
- 「利息はいるよね」と取り決めをしたら、物やお金を借りた日から利息がかかることになります。
原文
貸すもののクォリティ
- 第590条
- 利息をとって消費貸借をする貸主は、貸すものや権利のコンディションは貸すことを決めた時点と同じクォリティで貸してください。
- 2
-
消費貸借によって借りたものが、契約したものと違っていたり、クォリティに問題があった場合、返すときにその分だけ差し引くことがみとめられます。
このことは利息をとるとらないには関係ありません。
原文
いつまでに返さなければならないか
- 第591条
- 消費貸借で、いつ返すのかを決めずに貸し借りをした場合、貸主としては程々と思える期限を決めて、それまでに「返すように」と催促することができます。
- 2
- 消費貸借では、期限を定めたかどうかにかかわらず、借主は期限の前ならいつ返しても問題ありません。
- 3
- 借主が期限よりも早く返してしまったせいで、貸主が損害を被ってしまった場合は、借主に対して損害賠償をすることが認められます。
原文
査定に見合う物や金額で
- 第592条
-
借りた物を返す際に、借りた時とは同等の品種や同数の量を返すことができなくなった場合、返却時点での借りた物の査定に見合う物や金額でお返しをしなければなりません。
もし通貨を借りた場合に、その通貨が流通できなくなっていたとしたら、第402条第2項の規定にあるように、新しい通貨でお返しをしなければなりません。
原文
第6節 使用貸借:無料で借りて使わせてもらう
第六節 使用貸借
無料で借りて使わせてもらうには
- 第593条
- 契約が終わって返すまで無料で借りて使わせてもらうことをことを約束したら《使用貸借》が成立します。
原文
借主が受け取るまでは
- 第583条の2
- 契約書を交わしていない場合、借主が借りるものを受け取るまでは、貸主側からその契約を解除することが認められます。
原文
借りた場合の使い方
- 第594条
- 契約で決められた以外の方法や、通常以外の使い方をしてはいけません。
- 2
- 借りた物は、貸主がいいといわない限り、借りた本人以外の人に使わせてはいけません。
- 3
- 変な使い方をしたり、勝手に他人に貸した場合、貸主は消費貸借の契約を解除してもかまいません。
原文
必要経費は誰が払うのか
- 第595条
- 借主は、借りた物を維持するために必要で高額すぎない経費を負担してください。
- 2
- 貸主は、貸したもののために必要で高額すぎない経費以外を負担する必要がありますが、借主が利益を得るためにかかった経費は借主が負担してください。
原文
貸すことが決まったら
- 第596条
- 《使用貸借》をすることが決まったら、貸すものや権利のコンディションは貸すことを決めた時点と同じクォリティで譲り渡してください。
原文
契約期間が終わったら
- 第597条
- 契約で返却期限を決めたら、それまでに返却しなければなりません。
- 2
- 契約で返却期限を決める代わりに借りる目的を決めた場合、その目的が達成できたら返却しなければなりません。
- 3
- 借主がお亡くなりになったら、返済期限や目的達成の度合いにかかわらず、返却しなければなりません。
原文
契約を解除して、返してくれ
- 第598条
- 契約の期限を決める代わりに借りる目的を決めた場合、借主がその目的が達成できたら、《使用貸借》の貸主は契約を解除して、返してくれと請求できます。
- 2
- 期限を決めず、借りる目的も決めていなければ、《使用貸借》の貸主はいつでも契約を解除して、返してくれと請求できます。
- 3
- 《使用貸借》の借主は、いつでも《使用貸借》の契約を解除して、返してくれと請求できます。
原文
借りた時の状態に戻してから返して
- 第599条
- 《使用貸借》の借主は、もとに戻すことができない場合や、もとに戻すのに度を超えた費用がかかる場合を除き、借りた時の状態に戻してから返してください。
- 2
- 《使用貸借》の借主が、借りたものに取り付けたものは、取り外してから返すことができます。
- 3
- 《使用貸借》の借主が、自分の責任による場合を除き、借りたものを壊した場合は、修理をしてもとに戻してから返してください。
原文
損害賠償や費用の請求は一年以内に
- 第600条
-
契約とは違い使い方をしたり、お金儲けをしようとして支払うことになった費用を借主が支払うことになったら、その分を貸主に請求することができます。
契約とは違い使い方をしたり、お金儲けをしようとして支払うことになった損害賠償を借主が支払うことになった場合も、その分を貸主に請求することができます。
ただし、貸した物を返してもらってから一年を過ぎたら、その要求はできなくなります。 - 2
- かかった費用や損賠賠償の請求は、使用貸借の契約が続く間は時効のカウントは始まりません。
原文
第7節 賃貸借:お金を払って物を借りる
第七節 賃貸借
第1款 この節全般にいえること
第一款 総則
借りたものを活用させてもらうには
- 第601条
- 相手に賃料を支払い、借りたものを活用させてもらうことと、期限が来たら借りたものを返すことを約束にしたら、《賃貸借》の契約が成立します。
原文
上限の期間が決められる賃貸借
- 第602条
-
次の賃貸借のケースで、“物をどう処分するかを決める権利がない人”が貸主側の契約をする場合、それぞれのケースで規定されている期間以内でしか賃貸借契約を結ぶことができません。
規定の期間よりも長期の契約を結んでも、規定の期間で契約をしたことになります。 - 一
- 樹木を植えたり伐採したりすることを目的として山林を賃貸借するケースでは、10年以内。
- 二
- 樹木を植えたり伐採したりすること以外の目的で山林を賃貸借するケースでは、5年以内。
- 三
- 建物を賃貸借するケースでは、3年以内。
- 四
- 不動産以外の物を賃貸借するケースでは、6ヶ月以内。
“物をどう処分するかを決める権利がない人”のことを《処分の権限を有しない者》といい、“不在者の代わりに財産を管理している人”“権限を定めていない代理人”“相続財産の管理人”といった人たちを指すそうです。
原文
期間が決められる賃貸借を更新するには
- 第603条
-
第602条のケースの契約は更新して期間を延長することができます。
土地なら期間が満了する1年前までに、建物なら満了3ヶ月前までに、不動産以外なら満了1ヶ月前までに更新してください。
原文
賃貸借の契約期間
- 第604条重要
-
賃貸借の契約期間は最長でも50年までとします。
50年を超える契約期間を結んだとしたら、その契約は50年で結んだことになります。 - 2
-
賃貸借の契約は、更新することにより期間を延長することができます。
更新により新たに設定できる契約期間は最長でも50年までとします。
原文
第2款 お金を払って貸し借りすると
第二款 賃貸借の効力
不動産を賃貸借していると登記しておけば
- 第605条重要
- 不動産を賃貸借していると登記しておけば、その不動産の持ち主が変わったとしても、借主はそのまま借り続けることができます。
原文
借り続ける権利のキープ
- 第605条の2
- 借地に建てた建物の登記をしたり、賃貸物件の鍵を受け取ることなどの方法により借り続ける権利を得ていたら、借地や賃貸物件の所有者が変わった場合でも、新しい所有者に対して借り続ける権利をキープできます。
- 2
-
元の土地や賃貸物件の所有者が変わっても、貸主としての権利が以前の所有者のままで変わらなければ、以前の所有者に対して借り続ける権利をキープできます。
その後、貸主としての権利が新しい所有者へと変わったら、新しい所有者に対して借り続ける権利をキープできます。 - 3
- 借地や賃貸物件の所有者が変わって、新しい所有者が借主に対して新しい貸主であることを正式に認めさせるには、新しい所有者であることを登記する必要があります。
- 4
- 第608条では、借りている土地や不動産の修理や補修のための借主が支払った費用は貸主に請求することが認められていますが、借地や賃貸物件の所有者が変わった場合には新しい貸主にこの費用を請求することが認められます。
借地に建てた建物の登記して借り続ける権利を得る方法は、借地借家法第10条に規定されています。
賃貸物件の鍵を受け取ることにより借り続ける権利を得る方法は、借地借家法第第31条に規定されています。
原文
もとの所有者が借りる側になって場合でも
- 第605条の3
-
借地や賃貸物件の所有者が土地や物件の所有権を手放す代わりに、新しい所有者から賃貸をしてもらうケースでは、その契約が成立した時点で新しい所有者に対して借り続ける権利が発生します。
この場合も、新しい貸主であることを正式に認めさせるには、新しい所有者であることを登記する必要があり、修理や補修のための借主が支払った費用は新しい貸主に請求することが認められます。
原文
借り続けることを邪魔する人がいたら
- 第605条の4
- 借地に建てた建物の登記をしたり、賃貸物件の鍵を受け取ることなどの方法により借り続ける権利を得ていたら、次のようなケースに遭遇したら、その相手に対して自分の主張を認めさせることができます。
- 一
- 借り続けることを邪魔する人がいたら、邪魔することをやめさせる権利。
- 二
- 勝手に借りている人がいたら、出ていってもらう権利。
原文
貸している物の維持管理
- 第606条
-
お金をもらって貸しているなら、借主に利用してもらうのに必要な維持管理を怠ってはなりません。
とはいえ、借主のせいでかかった修理代などまでは貸主が責任を負う必要はなく、借主がなんとかしなければなりません。 - 2
- お金を払って借りているといっても、貸主が維持管理を行うことを借主は拒むことはできません。
原文
借主が希望をしていないのに修理をすると言われても
- 第607条
- 借主が希望していないのに、貸主が修理や補修をして借主の邪魔をするせいで目的が果たせない場合は契約を解除してもかまいません。
原文
借りてる側が自分で修理
- 第607条の2
- 次のケースでは、借りてる側で修理をすることが認められます。
- 一
- 貸主に対して、「困っているから借りてるものを修理してくれ」とお願いしたのに、いつまでたっても修理をしてくれないケース。
- 二
- 困った状態が差し迫っているケース。
原文
借主が修理や補修などにお金を支払った時は
- 第608条重要
- 賃貸の借主がその物や不動産の修理や補修にどうしてもお金を支払う必要があったら、その代金はすぐにでも貸主に請求してもかまいません。
- 2
-
借主がその物や不動産をより良くするために、自分からお金を支払っていたら、第196条第2項の規定にもあるように、“その費用全額”か、“返還時点でも残っていると認められる価値の分の金額”かを選んで、返還する際にその代金を貸主から支払ってもらうことができます。
しかし、そのことで裁判になったら、その代金の支払いは貸主の事情も考慮して、ある程度時間的な猶予を与えてもらえます。
原文
収益が上回らないと賃料を負けてもらえる
- 第609条
- 借りた土地で耕作や牧畜をして生計を立てるつもりだったのに、やむを得ない事情で賃料に届かない作物しか得られなかった場合、得られた作物の金額まで賃料をまけてもらえるように要求することが認められます。
原文
収益が上回らないと契約解除
- 第610条
- 耕作や牧畜をするためにお金を払って借りた土地なのに、やむを得ない理由で2年以上も収益が賃料を上回らない場合、借主は契約を解除することができます。
原文
借りてる物が減ってしまったら
- 第611条
- 借主には何の落ち度もないのに、借りている物の量が減ったり機能しなくなってしまったら、その分の賃料を負けてもらうよう要求することができます。
- 2
- 借主には何の落ち度もないのに、借りてる物が減ったり機能しなくなってしまったせいで借りてる目的が達成できそうになくなったら、借主は契約を解除することができます。
原文
無断で又貸しはいけません
- 第612条
- 貸主が「いいよ」と言ってないのに、賃借権を他人に譲り渡したり、借りてる物を又貸ししてはいけません。
- 2
- 貸主が「いいよ」と言ってないのに、他人に借りてる物を使わせたり、賃料を取ることがあったら、貸主から契約を解除することができます。
原文
又貸しの賃料
- 第613条重要
-
又貸しをしても問題ないケースで、又貸しの貸主が元々の貸主に賃料を納めていない場合、又借りの借主は元々の貸主にその分の賃料も支払わなければなりません。
この場合、すでに又貸しの貸主に賃料を納めていても、元々の貸主には賃料を納めなければなりません。 - 2
- 前項の規定があっても、貸主はあくまでも又貸しの貸主に賃料の請求をしてもかまいません。
- 3
-
又貸しをしても問題ないケースでは、元々の貸主と借主の間で話し合いにより賃貸借の契約を解除したとしても、又借りの借主は元々の貸主との間で、借り続けることが認められます。
しかし、又貸しの貸主が元々の貸主に賃料を滞納していたために契約を解除することになった場合には、又借りの借主は元々の貸主との間で、借り続けることが認められません。
原文
賃料の支払い時期
- 第614条
-
物を借りたら、賃料の支払いは毎月末を原則とします。
建物や宅地を借りた場合も、賃料の支払いは毎月末を原則とします。
建物や宅地以外の土地や不動産を借りた場合の賃料の支払いは年末毎を原則とします。
ただし、収穫目的で土地を借りた場合には、年末ではなくて、収穫を終えたらすぐに賃料を支払ってください。
契約の当事者間で別の時期に支払いをすると取り決めたら、そちらが優先となります。
原文
借りてる物に何かあったら連絡を
- 第615条
-
借りた物に修理が必要になったら、取り急ぎその旨を貸主に知らせてください。
借りているのに「それは私の物です」という人が現れた時も取り急ぎその旨を貸主に知らせてください。
もっとも、貸主がそのことを知っていたら、連絡には及びません。
原文
お金を払っていても、ちゃんと使う
- 第616条
- お金を払って借りているからといって、契約で決められた以外の方法や、通常以外の使い方をしてはいけません。
原文
第3款 いつまで賃貸借を続けるか
第三款 賃貸借の終了
失くなったり、使えなくなったら
- 第616条の2
- 何らかの理由で借りているものが失くなったり、使えなくなったら、賃貸借の契約は終了となります。
原文
期間を決めていなかった場合
- 第617条
-
契約をした時に賃貸借の期間を決めなかったとしたら、貸主側も借主側も、いつでも「契約を終了したい!」と申し伝えることができます。
借りている物によっては、契約を終了と言われて即終了というわけにもいかない場合がありますので、次のような物の賃貸借の場合にはそれぞれ記載の期間が過ぎたところで終了することとします。 - 一
- 土地の賃貸借 1年
- 二
- 建物の賃貸借 3ヶ月
- 三
- 動産やレンタルスペースの賃貸借 1日
- 2
- 借りている土地で農作物の収穫をしていた場合、収穫が終わって次の耕作を始める前までに、「契約を終了したい!」と申し伝えなければなりません。
原文
唐突な契約の解除の禁止も取り決めていたら
- 第618条
-
契約で賃貸借の期間を決めると同時に、唐突な契約の解除の禁止も取り決めていたら、契約途中で契約を終了させる場合には、その場で即終了ということはできません。
いつ終了することができるのかといえば、前条で規定している一定の期間が過ぎた時ということになります。
原文
何もなければそのまま更新
原文
賃貸借契約が解除になったら
- 第620条
-
賃貸借の契約を途中で解除になったら、借主は速やかに借りているものを返さなければなりません。
賃貸借の契約を途中で解除になったら、貸主は解除以降の賃料を受け取るべきではありません。
しかし、解除されたことによって損害を受けたら、相手に損害賠償を要求してもかまいません。
原文
傷んだ時、壊した時、壊れた時
- 第621条重要
-
普通の使い方をしていれば普通に生じる傷みや、時間が経つとともに普通に生じる傷みであれば、借りる以前と同じコンディションに戻して返す義務はありません。
自分のせいで借りたものを壊してしまったら、借りる以前と同じコンディションに戻して返す義務があります。
自分には全く責任がないのに借りたものが壊れてしまったのなら、借りる以前と同じコンディションに戻して返す義務はあるとはいえません。
原文
使用貸借の場合と同様に
原文
第4款 敷金:いわゆる保証金
第四款 敷金
- 第622条の2
-
民法では、敷金のことを「その呼び方を問わず、これから始まる賃貸借契約で借主がお金を支払えない場合に備えて予め貸主に預けておく保証金」と定義します。
敷金を受け取っている貸主は、次の状況になったら、敷金から借主が支払うべき金額を差し引いて残った金額を借主に返金する必要があります。 - 一
- 賃貸借が終了し、借りていたものや不動産が帰ってきたとき。
- 二
- 貸主が貸しているものや不動産の賃料を受け取る権利を手放したとき。
- 2
-
もし借主が賃料を支払えなくなった場合には、貸主は受け取っている敷金をその支払いにまわすことが認められます。
もし借主が賃料を支払えなくなった場合でも、借主の方から預けている敷金をその支払いにまわしてくれと要求することはできません。
原文
第8節 雇用:雇ってもらう
第八節 雇用
雇用の契約
- 第623条
- 相手に雇われて働くことを約束し、相手がその働きに対してお金を支払うと約束したら、《雇用》の契約が成立します。
原文
報酬はいつ請求できるのか
- 第624条
- 約束した仕事が終わるまで、報酬を請求することができません。
- 2
- 仕事の期間を区切るように約束をした場合は、その期間が過ぎるまで報酬を請求することができません。
原文
約束した仕事が終われなくても
- 第624条の2
- 約束した仕事が終われなくても、次の場合は仕事の進捗に応じた報酬を請求することができます。
- 一
- 雇っている側にも責任のない事情で、仕事を続けられなくなった場合
- 二
- 仕事の途中で、雇い続けてもらえなくなった場合
原文
雇い主の権利と労働者の義務を
- 第625条
- 労働者が承諾しなければ、勝手に他人に雇い主の立場を譲り渡すことは許されません。
- 2
- 雇い主が承諾しなければ、勝手に自分の仕事を他人に代わってもらうことは許されません。
- 3
- 勝手に自分の仕事を他人にやらせたら、解雇されてもしかたがありません。
原文
5年を超えて雇用契約を解除するには
- 第626条
- 5年を超える期間や終了時期を決めずに雇用契約を結んだ場合、5年を超えた時点でどちらの当事者でも雇用契約を解除することができるようになります。
- 2
-
5年を超えて、雇っている側から雇用契約を解除する場合は3ヶ月前までに解除することを伝えてください。
5年を超えて、雇われている側から雇用契約を解除する場合は2週間前までに解除することを伝えてください。
原文
雇用期間と辞める時期
- 第627条
-
契約の中で雇用期間を決めていなければ、雇われた側が「辞めたい」という希望も、雇い主から「辞めてくれ」という希望も、いつでもかなえられます。
この場合、相手の解約の希望を伝え聞いてから2週間が過ぎた時にその契約は終了します。 - 2
-
クールごとに報酬金額を決めている場合、最初のクールが終わって次のクール以降はで辞めてもらうことが認められます。
しかし辞めてもらうには、雇用のクールの前半期の内に辞めてくれと伝える必要があります。 - 3
- 6ヶ月以上のクールごとに報酬金額を決めて雇用契約を結んだ場合、辞めてもらうには、残り3ヶ月となる前に辞めてくれと伝える必要があります。
原文
やむを得ない事情があれば
- 第628条
-
たとえ期間を決めて雇用契約をしたとしても、やむを得ない事情があれば、雇い主でも労働者でもその場でこの契約を解除することが許されます。
その事情というのが相手の不手際によるものだったとしたら、相手から損害を賠償してもらうことができます。
原文
満了後もそのまま仕事を続けたら
- 第629条
-
雇用の契約期間が満了した後でも、そのまま仕事を継続し、その事に雇い主から異議が出なければ、以前と同じ労働条件で雇用契約が更新されたものと判断されます。
雇用契約が更新されても雇い主側でも労働者側でも契約を希望しなければ、「雇用契約を解約したい」と希望を伝えれば、その2週間後に雇用契約を終えることができます。 - 2
-
雇用の契約が更新されれば、労働者から預かった身元保証金はそのまま雇用主が預かり続けることができます。
それ以外に労働者から担保をとっていた場合、雇用契約が終了したら、それらの担保を取る必要はなくなり、更新されたとしても新たに担保の取り決めをしない限り、その担保は労働者に返還しなければなりません。
原文
雇用契約を途中で終了したからといって
- 第630条
-
雇用契約を途中で終了しても、それまでに受け取った賃金を返す必要もありませんし、契約途中にトラブルがあれば損害賠償を要求してもかまいません。
詳しくは、途中で賃貸借の契約を終了した場合(第620条)の条文を同じように適用します。
原文
雇い主が破産してしまった場合
- 第631条
-
雇い主や企業が破産してしまったら、雇用契約の期間中であっても、労働者は「辞めさせてもらう」ことができます。
同様に、破産管財人からは、「辞めてもらう」ことができます。
この場合、雇用契約が途中で終わったとしても雇い主に損害賠償を要求することはできません。
原文
第9節 請負:仕事をやり遂げることを約束したら
第九節 請負
請負の契約とは
- 第632条
- 仕事をやり遂げることに対して、依頼主がその報酬を支払うことを約束したら、《請負》の契約が成立します。
原文
いつ報酬を支払うのか
- 第633条
-
やりとげた仕事の成果の引き渡しと同時に、依頼主から報酬を支払ってもらえます。
成果の引き渡しが必要のない仕事の場合は、仕事が終わったタイミングや決められた期間が経過したところで報酬を支払ってもらえます。
原文
完成前に中断したら報酬は
- 第634条
- 次の事情で請け負った仕事が完成前に中断したとしても、それまでの成果によって依頼主にメリットがあれば、それまでの仕事の分の報酬を請求することが認められます。
- 一
- 依頼主に責任が無いにも関わらず、注文した側の事情で仕事を続けてもらうことができなくなった場合。
- 二
- 依頼主から発注がストップされた場合。
原文
- 第635条
- 削除
発注者のクレームが認められない場合
- 第636条
-
依頼主から支給された材料の使用や、契約以外のオーダーにより、契約した内容とは違うものが納品された場合、依頼主は「契約通りにやり直せ」とか、「報酬を減らすよ」とか、「損害賠償を請求するよ」とか、「契約を解除するよ」などというクレームは、認められません。
ただし、支給された材料や契約以外のオーダーに問題があることを依頼主に伝わっていないと、クレームが認められることになります。
原文
契約した内容とは違うものが納品されたら
- 第637条重要
- 依頼主からの材料やオーダー以外の理由で契約内容とは違うものが納品された場合、依頼主は「契約通りにやり直せ」などのクレームが認められますが、契約内容と違うことに気づいてから1年以内に言わないとクレームが認められなくなります。
- 2
- 請け負った人が契約したものと違うものを納品していることに納品する時点で知っていたり、うっかりして見逃していた場合、気づいてから1年以内に限らず、発注者のクレームが認められることになります。
原文
- 第638条〜第640条
- 削除
依頼主の都合で取り下げるには
- 第641条
- 依頼主の都合で完成前に仕事の依頼を取り下げざるには、請け負ってくれた人に損害を補償しなければなりません。
原文
依頼主が破産したら
- 第642条
- 依頼主が破産してしまったら、請け負った人や破産管財人は契約を解除することができます。
- 2
- 依頼主が破産してしまったら、報酬やそれまでの経費を受け取ることはできなくなるので、他の債権者とともに残っている財産の分配を受け取るため、破産財団に参加することが認められます。
- 3
- 契約を解除したことによる損害に対して、破産管財人が請負契約を解除した場合は破産財団に参加して賠償を要求できますが、請け負った人の方から請負契約を解除した場合は賠償を要求することができません。
原文
第10節 委任:人に任せて約束事をすること
第十節 委任
委任の仕方
- 第643条
- 自分の代わりにプランの実現を委ねて、相手がプランの実現を約束したら、《委任》が成立したことになります。
“自分の代わりにプランを実行すること”を《委任》といいます。
原文
任された人は一流のホテルマンのように
- 第644条重要
- 委任された人は、は一流のホテルマンがお客様に向き合うように、任されたシゴトに取り組んでください。
“一流のホテルマンがお客様に向き合うようにシゴトに取り組む義務のこと”を《善良な管理者の注意義務…善管注意義務》といいます。
原文
他の人に再委任をするには
- 第644条の2
- やむを得ない事情でもない限り、委任した人の承諾が無いのに、委任された人が他の人に再委任をすることは認められません。
- 2難文
-
代理として委任を任された人が、他の人に自分の代理として再委任をした場合、代理を認めた範囲内で委任をした人の代理であると認められます。
これにより、委任を任された人と同じ権利を持ち、責任を負うことになります。
原文
委任業務の報告
- 第645条
-
委任を依頼した人から要求があったら、委任を引き受けた人は任された業務の現状報告をしなければなりません。
また、その業務を遂行した時は、できるだけ早くその経過と結果を報告しなければなりません。
原文
委任で何かを得たら
- 第646条
- 委任を引き受けた人は、任された業務をやり遂げる過程でお金や物を受け取ったり、何か良い物を生産したら、依頼をした人にちゃんと引き渡してください。
- 2
- 委任を引き受けた際に依頼した人の名義でなんらかの権利を獲得したら、その権利は依頼した人に引き渡してください。
原文
委任のお金や物を使い込んだら
- 第647条
-
委任を引き受けた人が、業務をやり遂げるために預かったお金や物を自分のために使い込んでしまったら、当然返さなければいけないのですが、使い込んだ日からの利息も返さなければなりません。
使い込みがひどくて、お金や物を返してもなお損害が出てしまったとしたら、賠償もしなければなりません。
原文
委任の報酬の請求
- 第648条
- あらかじめ「やり遂げたらお礼を受け取る」ことを約束していなければ、委任した人に対して報酬を請求してはいけません。
- 2
-
報酬を請求できるのは、委任された業務をやり遂げた後になってからです。
もちろん、期間を決めて報酬を受け取れるように約束していた場合は、その期間が過ぎた時に報酬を請求することができます。 - 3
- 次の状況になったら、やり遂げた業務の割合に応じて報酬を請求することができます。
- 一
- 委任された人には責任が無い事情で業務を続けることができなくなった場合。
- 二
- 委任された業務が途中で終わってしまった場合。
原文
委任の成果に対する報酬
- 第648条の2
- 委任業務で得られる成果を引き渡すと報酬が支払われることになっている場合は、成果を引き渡す時に報酬を請求してください。
- 2
- 委任した側の事情などで業務の途中で委任が中断しても、それまでの成果によって委任した側にメリットがあれば、それまでの業務の分の報酬を請求できます。
原文
委任の費用を請求されたら前払い
- 第649条
- 委任された業務をやり遂げるために経費がかかる場合は、引き受けた人の請求に応じて委任した人が費用を前払いで負担してください。
原文
業務をやり遂げるための費用や、損害の賠償
- 第650条
- 委任された業務をやり遂げるため立て替えた経費があれば、支払った日からの利息と合わせて、委任した人に返還を請求してください。
- 2
-
委任された業務をやり遂げるために債務を負った場合には、委任した人が代わりに債務を負担するよう要求してください。
もしいつまでに債務を果たすかの期限がはっきりしない場合は、念のため、それなりの担保を出してもらってもかまいません。 - 3
- 何の落ち度もないのに、委任された業務をやり遂げるために損害を受けてしまったら、委任した人にその損害賠償を要求してもかまいません。
原文
いつでも委任は解除できる
- 第651条
- 委任をした人からでも、それを引き受けた人からでも、委任はいつでも解除することができます。
- 2
- やむを得ない事情があるわけでもないのに、次のケースで委任を解除したために相手に損害を与えたら、損害を賠償しなければなりません。
- 一
- 相手に不利な時期に委任を解除したケース。
- 二
-
やり遂げることによって委任を受けた人自身にもメリットがある業務の委任を解除したケース。
この場合に報酬をもらうための委任の場合は損害賠償は認められません。
原文
委任を解除したからといって
- 第652条
- 第620条の規定と同様に、委任を途中で解除したからといって、それまでに受け取っている報酬を返還する必要はありませんし、やりかけの業務を元の状態に戻す必要もありません。
原文
強制的に委任を終了することになる場合
- 第653条
- 以下の場合には、委任の契約の途中であってもその時点で委任の契約は終了となります。
- 一
- 委任した人、または委任を引き受けた人がお亡くなりになった場合
- 二
- 委任した人、または委任を引き受けた人が破産した場合
- 三
- 委任を引き受けた人が被後見人になった場合
原文
委任が終了した後も
- 第654条
-
委任の契約が終了したせいで困った事が起こるかもしれない場合、委任した人が業務を執り行うことができるようになるまでの間、委任を引き受けていた人は困ったことにならないように必要な処置をしてください。
委任を引き受けた人の代わりに、その相続人や法定代理人も、同様に必要な処置をしてください。
委任した人の代わりに、その相続人や法定代理人が業務を執り行うことができるまでの間も、同様に必要な処置をしてください。
原文
委任契約の終了を認めてもらうには
- 第655条
- 理由を相手に知らせた場合や、理由を相手が知っていた場合でなければ、委任契約の終了を相手に認めてもらうことはできません。
原文
ちょっとした業務の委任
- 第656条
- 取引や約束事とまではいえないちょっとした業務についても、この節の委任に関する規定と同じように適用するものとします。
原文
第11節 寄託:物をきちんと預かること
第十一節 寄託
寄託の成立
- 第657条
- 「これ預かって」と頼まれて、了解したら、《寄託》は成立します。
原文
寄託の契約を解除できるのは
- 第657条の2
-
《寄託》の契約が成立しても、実際に預けるまでは契約を一方的に解除することが認められます。
実際に預けなかったことで、《寄託》を了解してくれた人に迷惑をかけたら、その分の損害賠償をする必要があります。 - 2
-
ただで預かる場合、実際に預かるまでは契約を一方的に解除することが認められます。
ただで預かる場合でも、契約書を交わしていた場合、契約を一方的に解除することは認められません。 - 3
-
いつまでたっても頼まれた物を預けに来ない場合、期限を決めて預けに来るよう伝えた上で、それでも預けに来ない場合、契約を一方的に解除することが認められます。
ただで預かる契約書を交わしていた場合も、期限を過ぎて預けに来ない場合、契約を一方的に解除することが認められます。
原文
勝手に使わず、責任をもって預かる
- 第658条
- 「預かった」からといって、預けた人の許しを得ずに、勝手に使ったり、他人に預けることは許されません。
- 2
- 他人に預けることが許されている場合、第百五条と第百七条の規定の通り、ちゃんと保管してくれているかチェックする責任があります。
- 3
- 人が預かっている物を預けられた人は、預かっている人と同じく責任をもって預からなければなりません。
原文
ただで預かっても
- 第659条
- 預かることをただで引き受けた場合、そのために特別何かをする必要はありませんが、少なくとも自分の所有物と同じ注意を払って預かる義務を負うことになります。
原文
裁判に負けて預かったものを取られる前に
- 第660条
- 「それは自分の物だ」という人に裁判を起こされたり、差押えなどの処分を受けたら、できるだけ早く預けた人に知らせてください。
- 2
-
預かっている以上、裁判に負けて預かった物を持って行かれても、預かった物を返す責任から逃れることはできません。
裁判に負けたことを預けた人が知っていれば、預かったものを持って行かれても責任から逃れられるので、裁判に負けたことはできるだけ早く知らせる必要があります。 - 3
- 裁判に負けて預かったものを取られることになっても、取られる前に預けた人に返してしまえば、たとえ誰かに迷惑がかかったとしても責任は問われません。
原文
寄託したせいで損害が生じたら
- 第661条
-
預かった物のせいで預かった人に迷惑をかけたら、損害を賠償しなければなりません。
とはいえ、預けた人が注意を払っいたにも関わらず、預けた物の問題に気づけなかった場合や、預かった人は事前に問題があることを知っていた場合は、損害が発生しても賠償とはなりません。
原文
いつでも返してくれと
- 第662条
- 当事者同士で「いつ返すか」を決めていても、預けた人はそれにこだわらず、いつでも「返してくれ」と言い出してもかまいません。
- 2
- 決めていた時期よりも早く「返してくれ」と言われて返還の予定が早まったせいで損害が出た場合、預けていた人に対して損害賠償を請求することが認められます。
原文
いつ返すのか決めていなければ
- 第663条
- 当事者同士でいつ返すのかを決めていなかったら、預かった人はいつ返してもかまいません。
- 2
- いつ返すのか決めていたら、やむをえない理由がない限り、その時まではしっかり預かり続けてください。
原文
どこで返すのか
- 第664条
-
預かった物は、預かっていた場所で返却してください。
ちゃんとした理由があって預かる場所を当初とは違う所に変更していた場合、変更した所で返してもかまいません。
原文
預けている間に発生したお金の請求
- 第664条の2
-
預けたものの一部が失くなったり、壊された場合の損害賠償は返してもらってから一年以内に請求をしてください。
預かっていたものの保管のためにかかった費用は返してあげてから一年以内に請求をしてください。 - 2
-
預けたものが失くなったり壊されたのがずっと昔の話であったとしても、返してもらってから一年の間、その損害賠償の時効は成立しません。
預かっていたものの保管のために費用を支払ったのがずっと昔の話であったとしても、返してあげてから一年の間、その請求の時効は成立しません。
原文
寄託でも委任の規定と同じように
原文
同じ物なら一緒にして預かることも
- 第665条の2
- 別々の人から全く差異の無い同一の物を預かった場合、預けた人全員が了解したら、一緒にして預かってもかまいません。
- 2
- いっしょに預けた人全員が了解した場合、数量さえ合っていれば、返してもらう時にどれかを指定する必要はありません。
- 3
-
他の人と一緒にして預けている物の一部が失くされてしまった場合、残った中から自分が預けた割合に応じて返してもらうことが認められます。
この場合は、減ってしまった分の損害賠償を求めてもかまいません。
原文
預かった物は使ってもかまわない場合
- 第666条
- 預かった物は使ってもかまわない契約になっている場合、預けたのと同等の物を同じ数量だけ返す必要があります。
- 2
-
預かった物は使ってもかまわない契約で、利息をつけて返すことになっている場合、契約した時点のクォリティで預けてください。
預かった時点とは同じクォリティで返すことができなくなった場合、その差額は査定に見合う物や金額でお返しをしなければなりません。 - 3
-
預金や貯金としてお金を預けた場合、期限にかかわらず、いつ返してもらっても問題ありません。
早めに返してもらった場合に、相手に迷惑をかけたら、損害を賠償する必要があります。
原文
第12節 組合:共同で何かの事業を行うこと
第十二節 組合
組合の契約
- 第667条
- 関係する人々が出資した上に、自分たちで共同して「事業をしよう」と約束を交わしたら、《組合》の契約が成立します。
- 2
- 出資には、金を提供すること以外に、労力を提供することも含みます。
原文
他の人が果たさなくても
- 第667条の2
-
組合の契約を交わした間柄においては、自ら率先して債務を果たす必要があり、他の人が自分の役割を果たすまで自分は何もしないという言い分は通用しません。
組合の契約では、本来の自分の債務が果たせなくなっても、自分の判断で自分ができる債務を果たすことが通用します。 - 2
- 他の組合員が債務を果たさないとしても、それを理由に組合の契約を解除することが認められません。
原文
組合員の内の一人の無効でも他の人には
- 第667条の3
- 組合員の内の一人に対する組合契約が無効であったり、取り消しになったとしても、他の組合員に対してはそのことで影響はありません。
原文
財産は組合員の共有で
- 第668条
- それぞれの組合員が提供したお金や労力あるいはそれら以外の組合の財産は、全ての組合員の共有の持ち物です。
原文
金銭を出資しない場合の責任
- 第669条
- お金を出資することが求められているにもかかわらず、組合員がお金を出資しなかった場合、かかった利息はもちろん、損害には賠償もさせられることになります。
原文
業務を行うためには
- 第670条
- 組合することは、組合員の投票による過半数で決め、組合員は決定に従って活動してください。
- 2
- 契約の中で決めておけば、他の組合員や組合員以外の人に投票や活動を委任してもかまいません。
- 3
-
投票や活動を委任されたら、組合での投票や活動をすることが認められます。
何人かがいっしょになって組合の活動をする場合、いっしょに活動する人の過半数が同意したやり方で、進めてください。 - 4
-
何人かがいっしょになって組合の活動をする場合でも、そのやり方は全組合員が決めてもかまいません。
何人かで決めたことでも、全組合員がいっしょになって活動してもかまいません。 - 5
-
組合で行う通常業務についてはわざわざ投票までしなくても、個々の組合員の判断で活動してもかまいません。
しかし、業務を終える前に他の組合員が「待った!」をかけたら、その業務は見直す必要があります。
委任契約を結んで業務を執り行う組合員のことを《業務執行者》といいます。
原文
組合の代理として
- 第670条の2
- 組合員の過半数が支持している場合、組合員の代表者による活動は他の組合員の代理として行ったものだと認められます。
- 2
-
組合の活動を実際に行う人が決まっている場合、組合員の過半数の支持を得るまでもなく、その人による活動は他の組合員の代理として行ったものだと認められます。
組合の活動を実際に行う人が複数いる場合、その中の過半数が支持している場合、その人による活動は他の組合員の代理として行ったものだと認められます。 - 3
- 組合で通常行われる活動については、担当する組合員が単独で行っても、他の組合員の代理として行ったものだと認められます。
原文
委任の規定を同じように適用
原文
組合の活動を委任されたのだから
- 第672条
- 組合活動の進め方を決めることや、実際の活動を委任された組合員は、正当な理由もなく勝手にその役割を辞めることは認められません。
- 2
- 正当な理由がある場合、他の組合員がそろって同意したら委任された組合員を解任させることが認められます。
原文
組合員なら活動や財産の状況を
- 第673条
- 活動を実際に行わない組合員も、組合の活動や財産の状況を検査をすることができます。
原文
組合員の利益や損害の分配の割合
- 第674条
- 組合員の間で、利益や損害をどのように分配するのかを決めていない場合は、組合に出資した資金や労力を金額に換算した比率に応じて分配の割合を決定します。
- 2
-
利益の分配の割合だけを決めた場合は損害が出た時も同じ割合で分配します。
損害の分配の割合だけを決めた場合は利益が出た時も同じ割合で分配します。
原文
組合の債務の負担
- 第675条
- 組合の債務は、組合の財産から果たしてください。
- 2
-
組合員の間で利益や損害の分配の割合を決めていたら、その割合に応じて各組合員は債務を果たすことになります。
債務が発生する時点で、分配の割合を債権者が知らない場合、全ての組合員に対して等分での債務負担を求められることもあります。
原文
自分だけ組合の債務や債権を
- 第676条
- 組合員が組合の財産から自分の持ち分を手放したとしても、組合の債務から逃れられるわけではありません。
- 2
- 組合の債権は、自分の持ち分だからといって組合員が勝手に行使することができません。
- 3
- 組合の財産を清算するまで財産の分前を要求することはできません。
原文
組合員が債権者だったら
- 第677条
- 組合員が組合に対する債権者だったら、組合の財産から債務を果たしてもらうことは認められません。
原文
組合の新規加入
- 第677条の2
-
新しく組合に加入するためには、全組合員の同意が必要です。
新加入の方法を組合のルールで決めていれば、全組合員の同意に関わらず、加入が認められます。 - 2
- 新しく加入した組合員に、加入前からあった組合の債務を負わせることはできません。
原文
組合からの脱退
- 第678条
-
いつまで組合を続けるかを契約の中で決めていなかったら、いつ組合から脱退してもかまいません。
死ぬまで組合員でありつづける、と契約した場合も、いつ組合から脱退してもかまいません。
とはいえ、よほどやむを得ない理由がなければ、組合が困るタイミングで脱退することは控えてください。 - 2
- いつまで組合を続けるかを契約の中で決めていたとしても、やむを得ない理由があれば、組合から脱退することができます。
原文
- 第679条
- 組合員が自分からやめる以外では、以下の理由により組合から脱退となります。
- 一
- お亡くなりになった時
- 二
- 破産した時
- 三
- 被後見人となった時
- 四
- 組合から除名された時
原文
組合員を除名するには
- 第680条
-
正当な理由があって、他の組合員が一致した場合、組合員を除名することができます。
除名をした場合は、必ずその組合員本人に除名したことを通知しなければ、本人にとっては除名が成立したことになりません。
原文
脱退しても組合の債務は
- 第680条の2
-
債務を負っている組合を脱退しても、組合員個人としての債務は果たさなければなりません。
脱退した組合員が組合員個人としての債務は果たしたのに、組合が債務を果たしていない場合、組合に対して担保を要求したり、自分の債務は果たしていることを認めるように要求できます。 - 2
- 脱退した組合員が、組合に代わって債務を果たした場合、この組合員は組合に対して損害賠償の請求が認められます。
原文
脱退した組合員に払い戻しをする場合
- 第681条
- 脱退のため組合の財産から持ち分を払い戻す場合、組合が清算する時点ではなくて、組合員が脱退する時点の組合財産をもとに持ち分を計算してください。
- 2
- 脱退した組合員が金銭以外の形で出資をしていた場合でも、金銭で払い戻してもかまいません。
- 3
- 脱退した組合員に払い戻しの計算をする際に、組合の活動が完了しないと総額がわからない場合、活動が完了してから払い戻しの計算をしてもかまいません。
原文
組合が解散する時
- 第682条
- 組合は、次の状況になると解散できます。
- 一
- 組合の活動が成功した時と、活動が成功できなくなった時
- ニ
- もともと予定していた組合の活動期間が終わった時
- 三
- 組合の規約の中で予め想定していた解散の状況になった時
- 四
- 全ての組合員が解散することに賛成した時
原文
組合の解散を要求するには
- 第683条
- 組合員であっても、やむを得ない理由なければ、組合の解散を要求することができません。
原文
途中で組合が解散しても
- 第684条
-
賃貸借契約を途中で終了した場合の規定(第620条)は、組合が途中で解散した場合でも同じように適用します。
組合が途中で解散した場合、組合員から受け取っている組合費は返還の必要がありません。
原文
組合の清算
- 第685条
-
組合が解散したら組合のお金関係は、組合員が共同で精算します。
組合員が選んだ《清算人》が精算することも認められます。 - 2
- 《清算人》は、全ての組合員が投票を行って、過半数を得られたら決定となります。
組合を清算するための職務を任された組合員のことを《清算人》といいます。
原文
清算人については
原文
組合員の清算人に正当な理由がなければ
- 第687条
- 契約によって組合員の中から清算人を選んだ場合、正当な理由なく清算人を辞めさせることはできません。
原文
清算人の職務権原と残った財産の分配方法
- 第688条
- 清算人の行う職務は次の通りです。
- 一
- 現在までの業務の終了
- 二
- 債権の取立てと債務の弁済
- 三
- 残った財産の引き渡し
- 2
- 清算人は前項の職務を行うために必要な全ての行為を執り行うことができます。
- 3
- 残った財産は各組合員の出資した労力と金額の割合に応じて分配します。
原文
第13節 終身定期金:死ぬまで定期的もらえるお金
第十三節 終身定期金
終身定期金とは
- 第689条
- 自分が死ぬまで定期的に、お金を受け取ることができたり、サービスの提供を受ける契約のことを《終身定期金》といいます。
《終身定期金》とは年金のことかと思っていたのですが、本当のところは全く別物のようで、日本では《終身定期金》は事実上該当するものは無いようです。
原文
終身定期金の計算
- 第690条
- 終身定期金の支払い額は日割計算してください。
原文
終身定期金契約の解除
- 第691条
-
契約して終身定期金の元本のお金を渡していたのに、終身定期金を支払ってくれなかったり、サービス提供の義務を果たさないならば、その受取人は元本を返せと要求できます。
そうなった場合、受け取っていた終身定期金は返還しなければなませんが、その元本によって得られた利息は返還せずに受け取ってもかまいません。 - 2
- もちろん、利息を差し引いたからといっても、損害賠償を請求してもかまいません。
原文
終身定期金の契約を解除したら
- 第692条
- 終身定期金の契約を解除する場合、第533条の規定を同じように適用することとし、元本を返却してくれるまで受け取っていた終身定期金の返還する必要はありません。
原文
対象者が亡くなったとしても
- 第693条
-
終身定期金の債務者のせいで終身定期金の対象者が死亡したとしたら、まだ生き続けたであろう時までその終身定期金の支払いを受け続けることができます。
そのためには、終身定期金の債権者が継続するための手続きをとり、それが裁判所によって認められる必要があります。 - 2
- 契約の継続を求めない場合、第691条に認められるように元本の返却や損害賠償の請求をしてもかまいません。
原文
遺言により成立する終身定期金
- 第694条
-
当人が契約を結ばなくても、遺言によって終身定期金を贈ることを書き遺した場合も、終身定期金を受け取る権利を獲ることができます。
その支払いを日割計算することや解除、死亡した場合の規定も、遺贈の場合でも同じように適用することとします。
原文
第14節 和解:話し合って折り合う
第十四節 和解
和解をするには
- 第695条
- 言い争っている者同士が、互いに譲り合うことによって争うことをやめる約束をしたら、《和解》が成立します。
原文
和解が成立したら
- 第696条
-
権利について争っていた相手から、その権利を譲り受けるという内容の和解が成立したら、相手にその通りにしてもらうことができます。
権利について争っていた相手に、その権利を譲り渡すという内容の和解が成立したら、自分がその通りにしなければなりません。
原文
第3編 第3章 事務管理:親切心でしてあげる作業
第3編 第1章 この編全般にいえること
2 件のコメント:
とても理解しやすく活用させていただいております。
ありがとうございます。
以下、誤りがあるようです。ご確認いただければ幸いです。
第六百五十三条
以下の場合には、委任の契約の途中であってもその時点で委任の契約は終了となります。
三
委任した人、または委任を引き受けた人が、被後見人になった場合
【原文】
第六百五十三条
委任は、次に掲げる事由によって終了する。
三
受任者が後見開始の審判を受けたこと。
ご指摘、誠にありがとうございました!
ついつい惰性で「委任した人、または」と入れてましたね。
原文の通り、後見開始で影響するのは「受任者」だけですので、惰性の部分は削除とさせていただきました。
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