CONTENTS



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2.物権 10.抵当権

第2編 物権:物に関して

第二編 物権

第10章 抵当権:譲り受けない不動産で担保する権利

第十章 抵当権

第3編 債権:相手に何かをしてもらう権利

第2編 第9章 質権:貸す代わりに何かを預かる権利
第1節 この章の全般に言えること

第一節 総則

抵当権とは
第369条

持ち主や借り手が利用している状態のままの不動産を借金などの担保とし、その借金などの返済ができなくなった場合は最優先でこの不動産を処分して、そのお金を借金の返済にまわしてもらえる権利を《抵当権》といいます。
2

不動産を所有していなくても、その土地を優先的に使える権利…《地上権》《永小作権》を有していれば、抵当権の対象にすることができます

《地上権》《永小作権》に《抵当権》を設定する場合についてもこの章の規定を同じように適用できることとします。
原文
抵当権で差し押さえができる対象
第370条

抵当権は、土地と建物を別々に設定することができます。

土地だけに抵当権を設定した場合には、建物部分は差し押さえの対象とはなりませんが、それ以外に土地に付帯しているものは差し押さえの対象となります。

ただし、抵当権の契約をする際に個別に定めをしている場合は差し押さえの対象を建物まで及ぼすことができます。

また、詐害行為取消権(第424条)の規定により、差し押さえを免れるためにわざと抵当権のついた土地の価値を下げさせないことを裁判所に要請している場合も、差し押さえの対象を建物まで及ぼすことができます。
原文
第371条

抵当権を設定してまで借りたお金を返済しないと、その不動産から得られる家賃などの収益についても抵当権を持つ人のものとなります。
原文
他の権利と同じように適用する規定
第372条

次の規定は抵当権にも同じように適用することとします。
  • 留め置きは小分けして返す必要はありません(第296条
  • 代わりの金や物で払ってもらおうじゃないの(第304条
  • 他人の借金のために質入れしたのに(第351条
原文
第2節 抵当権はどんな効果をもたらすか

第二節 抵当権の効力

抵当権の優先順位
第373条

一つの不動産に複数の抵当権が設定された時は、設定された順番が早い人から優先されることになります。
原文
抵当権の順位変更をするには
第374条

抵当権を持つ人たちの間で合意が得られれば、抵当権の順位は変更をすることができます。

ただし、抵当権の順位が代わることによって金銭面で影響を受ける人がいる場合は、その人にも承諾を得ておかなければなりません。
2

合意や承諾を得て抵当権の順位を変更する時は、必ず登記の手続きをしてください。
例えば、抵当権の順位が下がったことで抵当権者に貸したお金が帰ってこなくなる心配のある人のように、金銭面で影響を受ける人のことを《利害関係者》といいます。
原文
抵当権での利息などの扱い
第375条

抵当に入れられた不動産を競売にかけて得られたお金を返済にまわす場合は、抵当の金額分はもちろん返済の対象となりますが、それに加えて競売時点の2年前までの利息や《定期金》の分の金額も支払いの対象となります。

抵当の分と2年前までの利息などの分の支払いを済ませた上でも競売により得たお金に余りがある場合、他に抵当権者がいれば、2年前よりもさらに前の利息や定期金の分の金額を支払いの対象とする前に、その人の抵当の金額分が支払いの対象となります。

競売時点の2年前以前の利息や定期金について他の抵当権者よりも優先的に支払いを受けるためには、その抵当権者に特別な登記をすることを認めてもらいその登記が受理される必要があります。
2

借金の返済が遅れて競売によって損害賠償金を支払うように請求することになった場合も、抵当権の規定と同じように競売前2年分について優先的に支払いを受けることができます。

ただし、利息や定期金の支払いを受けられるのは、抵当権の規定と違い、競売前2年前の分までです。
2年前に発生した損害賠償金や利息・《定期金》は抵当権の対象外の負債ということになります。
家賃や年金などのように一定の期間ごとに支払われるお金のことを《定期金》といいます。
原文
抵当権を手放す方法
第376条

抵当権を別件の借金をするために担保に入れることは可能です。

他人に抵当権を譲ることも、抵当権の順位の低い人のために抵当権の順位を譲ることも、抵当権を放棄することも可能です。
2

抵当権の順位の高い人が自分の順位を譲ったり放棄をして抵当権者が抜けた場合、残っている順位の低い抵当権を有している人たちは元の順番から抜けた人の分だけ繰り上がります。
原文
抵当権の順位が変わったら
第377条難文

抵当権の順番を譲ったり放棄する場合は、債権の果たす相手を変える場合の規定(第467条)を同じように適用するので、変わる事情を債務者にちゃんと通知するか、きちんと了解してもらいましょう。

そうしないと債務者や保証人は抵当権がどうなっているのかわからなくなってしまい、抵当権の順位の変動の影響により得られるはずだった人はそのメリットを受けられなくなるかもしれません。

そうなった時に「抵当権の順位が変わったなんて知らなかった…」とクレームをつけられたとしたら、抵当権の順位を譲った人がその言い分を聞かなければならなくなります。
2難文

債務者が抵当権の順位が変わったことを知りながら、順位が下がった債権者に債務を果たした場合、順位が上がった債権者からクレームをつけられたら、その言い分通り債務を果たす必要に迫られることにもなりえます。
原文
不動産を買い取った人が抵当権を消したい場合
第378条

抵当権付き不動産を買い取った人が、その抵当権を消したい場合は、元の不動産の持ち主に代わって抵当権者に抵当権分の支払いをする必要があります。

抵当権付き不動産の地上権を買い取った人が、その抵当権を消したい場合も、同様に支払いをする必要があります。
抵当権は消滅しますが、不動産を売った人は本来の借金を返済したわけではありませんので、不動産を買ってくれた人に対して支払ってもらった分の借金を新たに負うことになります。
原文
抵当権を消す方法
第379条

購入した不動産についている前の所有者の抵当権を消すには、抵当権消滅請求をする方法があります。

これは、第383条に規定されています。
原文
第380条

次の人たちは抵当権消滅請求をすることができません。
  • 不動産を抵当に入れてお金を借りている当人
  • その保証人
  • 彼らの立場を引き継いだ人
原文
第381条

「ある条件がかなったら購入する」という条件をつけて購入の契約をした不動産の場合、抵当権がついていたとしても、その条件がかなうまでは、抵当権消滅請求をすることができません。
原文
抵当権消滅請求の請求できるタイミング
第382条

抵当権消滅請求は、抵当権によって不動産が競売のために差し押さえをされる前にしなければなりません。
原文
抵当権消滅請求の手続
第383条

抵当権消滅請求をするには、抵当権を登記していて支払いを待っている人々に対して、以下の内容を記した書面を送付して請求することを通知してください。

  • いつ(取得した年月日)
  • 誰が(新しい取得者の氏名・住所)
  • 誰から(元の取得者の氏名・住所)
  • どんな不動産を(不動産の所在地と土地の状況)
  • いくらで(購入金額と関連経費)
  • どうしたか(購入したのか・譲られたのかなど)

自分が該当の不動産を新たに手にしたことが記されている他、関連する全ての登記事項を証明する《登記事項証明書》

今後2ヶ月以内に抵当権による競売を行う予定がないならば、自分が元々の不動産の持ち主に代わって、一に記載した購入金額もしくは自分が適当と思われる金額で、抵当権の順位に従いその支払いを行う(受け取ってもらえない場合はその金額を供託する)という内容
原文
承諾したとみなされる場合
第384条

前条に規定されちる抵当権消滅請求の書面が送られてきて、次のような場合になれば、そこに記載されている金額で抵当権消滅請求を承諾したものとみなします。

抵当権消滅請求の書面が送られてきてから2ヶ月以内に抵当権による競売の申立てをしない場合

抵当権による競売の申立てを取り下げた場合

抵当権による競売の申立てが裁判所に却下された場合

抵当権による競売の申立てをしたのに、裁判所で手続きを取り消されることが確定した場合

詳しくは次のどちらかの場合です。
  • 民事執行法第63条第3項を同じように適用する民事執行法第188条の規定の場合
  • 民事執行法第68条の3第3項の規定の場合

ただし、民事執行法第183条第1項第五号に規定のある謄本が提出されたために同条第2項の規定による決定をした場合は除かれます。
原文
競売申立ての通知
第385条

競売の申立てをして抵当権消滅請求を承諾しないためには、抵当権消滅請求の書類が送られてから2ヶ月以内に、元の不動産の持ち主と新しい不動産の持ち主に、その不動産を競売にかけるということを通知する必要があります。
原文
抵当権消滅請求により抵当権が消滅するには
第386条

抵当権消滅請求によって不動産の抵当権を消すには、次の二つの条件を満たす必要があります。
  • その不動産を購入した人が提示した額面を、登記している全ての抵当権者が承諾すること
  • その額面の支払い、もしくは供託を完了すること。
原文
抵当権の設定がある不動産を賃貸する場合
第387条

抵当権が設定されている不動産を有料で貸し出す場合も登記を行うことができます。

その登記を行う際には、抵当権による競売をすることになってもその不動産を借りている人が借り続けられるように、抵当権を登記している人たち全員に「不動産を賃貸ししていることを同意している」ということの登記もしてもらってください。
2

もし前項の抵当権を登記している人が、その抵当権を担保としてお金を借りているような場合は、そのお金を貸している人などにも予め承認を受けた受けでないと、「有料での貸し出しの登記」に同意が得られたことにはなりません。
原文
抵当権により設定される地上権
第388条

もともと土地も建物も一人の持ち物だったのに、土地だけ、または建物だけに抵当権を設定した場合、借金が払えなくなって競売にかけられた結果、土地と建物は別々の所有者ということになったら、その建物には《地上権》が法律上自動的に設定されます。

この場合の土地の利用代金は、土地と建物の各所有者が裁判所に決めてもらうこととなります。
建っている建物を利用する権利のことを《地上権》といいます。
抵当権の実行に設定された地上権のことを《法定地上権》といいます。
原文
抵当権のついている土地に建物を建てると
第389条

建物が立っていない土地に抵当権を設定していたら、そこに建物を建てたとしても、《法定地上権》が設定されることにはなりません。

従って、その土地が抵当権により競売にかけられることになったら、建物も土地とセットにして競売にかけることができます。

ただし、得られた代金から優先的に受け取ることができるのは、土地の代金分だけで、建物の代金分は元の建物の所有者に渡さなければなりません。
2

土地と建物がセットで競売にかけられるとはいっても、その建物に土地の抵当権よりも優先的な権利が認められている場合は、まとめて競売することはできなくなります。
“抵当権を持つ人よりもさらに優先的に土地を使用することが認められる権利”というのは抵当権よりも先に《地上権》や《借地権》が設定されていてすでに登記もされていた場合のことです。
原文
抵当権付き不動産を買った人でも競売で不動産を買える
第390条

抵当権が設定されている不動産を買いとった人は、抵当権により競売が行われてもその競売に参加することができますので、競り勝つことにより土地を買取ることが可能です。
原文
抵当権付き不動産購入に必要な経費などは
第391条

抵当権が設定されている不動産を買う際にかかった必要経費や、その不動産をグレードアップするためにかかった費用は、他の支払いを待っている人たちへの支払いよりも優先的に、購入するための代金から差し引くことができます。

とはいえ、不動産をグレードアップして、その不動産から利益をあげていた場合には、そのグレードアップの費用は不動産購入代金から差し引くわけにはいきません。

詳しくは、第196条を同じように適用します。
原文
まとめて抵当権を設定したら
第392条

担保価値が足りない場合、複数の不動産に対してまとめて抵当権を設定することがありますが、競売にかけなければならなくなったら、複数の不動産の競売の総額から支払いを受け取ることができます。

支払いをしても競売で得られたお金が余ったら、土地ごとの価格の比率に応じて元の不動産の持ち主に返金したり、他の抵当権を持つ人の支払いにあてることができます。
2

まとめて複数の不動産に抵当権を設定しても、その中の一部の不動産だけを競売にかけることもできます。

そこで得られたお金をまるまる支払いにあてて、他の抵当権を設定された不動産は全く手付かず済むことになりますが、競売された不動産に後順位の抵当権を持つ人がいると、その人の抵当権の担保価値は減ってしまうことになります。

それでは、公平でとは言えませんので、減ってしまった担保価値の救済措置として、手付かずの不動産の抵当権を引き継ぐ形で救済措置分の抵当権を入れ替えて設定することが認められます。
この改正で、《按分》に“あんぶん”のふりがながふられました。
原文
引き継いだ抵当権の登記
第393条

第392条第2項の救済措置的に抵当権を引き継いだ人は、その抵当権を引き継いだことを登記に記載しておくことができます。
原文
抵当権付きの不動産以外の財産を処分して
第394条

抵当権付きの不動産を競売にかけても支払い額が不足してしまう場合に限り、その抵当権付き不動産以外の抵当権のつかない財産を処分して支払いを受けることが認められます。
2

抵当権の付かない財産を処分して支払いを待つ人たちの間で分配をすることになった場合、抵当権付き不動産を速やかに競売にかけないでその分も自分の取り分として主張して。他の人の取り分を減らすようなことをしてはいけません。

抵当権付き不動産の競売が先に行われないのであれば、一時的に他の財産を供託することにより保全しておき、競売が済んで支払を待つ人たちの間で適正な取り分をはっきりさせてから分配をする方法をとってもかまいません。
原文
借りていた不動産が競売にかけられても
第395条

借りている不動産が地主の事情で抵当権により競売にかけられ、住まいや働き場所から立退きをしなければならなくなった人でも、場合によっては、新しい地主の不動産になったとしても、すぐに引き渡しをしなければならないわけではありません。

以下の項目に該当すれば、その時から6ヶ月以内までの引き渡し猶予が認められます。

競売の手続きの開始前から住まいや働き場所として借りていた人

《強制管理(抵当権によらない差し押さえ)》《担保不動産収益執行(抵当権による差し押さえ)》が行われた後にその建物を住まいや働き場所として借りた人
2

もし、競売後の1ヶ月分以上の家賃がきちんと請求されたにもかかわらず、その期限までに家賃を支払われない場合は、6ヶ月以内の猶予は認められなくなります。
“その建物を借りていた人”や“その不動産により儲けを得ていた人”のことを“抵当建物使用者”といいます。
《強制管理》《担保不動産収益執行》は、いずれも建物を差し押さえたまま競売せずに裁判所が選んだ管理人により運用を続けることをいいます。
原文
第3節 抵当権がなくなるかどうか

第三節 抵当権の消滅

抵当権が時効でなくなるか
第396条

抵当権は、その担保となるべき元の支払い自体が時効でなくならない限り、時効によってなくなることはありません。
原文
時効により不動産が他人のものになったら
第397条

いくら不動産に抵当権を設定していても、時効が成立するまで当事者以外の人が占有し続けたら、その土地は専有していた人のものになって本来の当事者のものではなくなります。

それに伴いその土地の抵当権もなくなります。
原文
地上権や永小作権を手放しても抵当権は
第398条

地上権や永小作権に対して抵当権が設定された場合、たとえそれらの権利を放棄してその土地から離れたとしても、抵当権分の料金はきちんと全額払わなくてはなりません。
原文
第4節 借入金額変動型抵当権について

第四節 根抵当

根抵当権とは
第398条の2

貸してもらえる金額の上限と担保を決めて契約を結び、この金額の範囲内であればいつでも借入金を追加できるタイプの抵当権を設定することができます。
2

このタイプの抵当権は、特定の相手と行う取引か、一定の種類の取引で発生する借入金だけしか担保の対象とすることできません。
3

前項の規定の他に、抵当権を設定した相手との間で発生する特定の理由による借金や、手形・小切手、オンラインによる債権による請求についても、このタイプの抵当権を設定することができます。
“上限金額の範囲内で借入金を追加できるタイプの抵当権”のことを《根抵当権》といいます。
“オンラインによる債権”について詳しくは《電子記録債権法第2条第1項》で規定されています。
原文
根抵当権ではどこまでを保証の範囲とするか
第398条の3

契約で決めた金額の上限の範囲内で、その時点での借入金を精算するために借入金額の追加を制限して借金の元本とその利息や定期的に支払われる金、あるいは支払いが遅れた場合の損害賠償金について、再優先で支払いを受けることができます。
2

根抵当権の契約を交わした相手ではない人との取引の支払いのために発行した手形や小切手、オンラインによる債権が、他の人を経由した後に根抵当権の契約を交わした相手に対して回ってきたとします。

この場合、以下の事態が発生する前に入手した手形や小切手の請求は、根抵当権の担保不動産を競売する場合にはこれも合わせて優先的に支払いを受けられるものとします。

ただし以下の事態が発生した後に入手した手形や小切手、オンラインによる債権の請求であっても、なぜそのような手形や小切手が回って来たのかを知らない場合は、根抵当権により優先的に支払いを受けられるものに含めることができます。

返済が滞った時

借金をした人が破産したり、借金をした会社が更生手続きが取られたり、民事再生手続きが取られた時

抵当権を設定した不動産を競売することになったり、差し押さえられた時
原文
根抵当権でいくら保証するか誰が保証するかを変更するには
第398条の4

精算をするために借入の追加を止めるまでは、“どんな案件についての借入を認めるのか”とか、“借入金の返済を誰からしてもらうか”を変更することができます。
2

“どんな案件の借り入れを認めるのか”や“誰から返してもらうか”を変更することについては、優先順位が低い抵当権を持つ人やその他の人の承諾を得る必要はありません。
3

借入の金額や誰から返してもらうかを変更した時は、必ず登記をしなければ、裁判所でも「変更した」と認めることはできません。
原文
根抵当権の極度額を変更するには
第398条の5

根抵当権を設定している当事者の合意の他に、その根抵当権を設定している不動産に後順位の抵当権を設定している人の承諾を得なければ、根抵当権の上限金額は変更できません。
根抵当権の変動可能な優先的に支払いを受けられる上限金額を《極度額》といいます。
原文
根抵当権の借入金額の変動を止める期日を決めるには
第398条の6

根抵当権は、借入金額の変動を止める期日を予め決めておくことができます。

またこの期日は途中で変更することもできます。
2

根抵当権に関して“借入の案件”や“誰から返してもらうか”を変更することについても、あらかじめ決めておくこともできますし、途中で変更することもできます。
3

“根抵当権の借入金額の変動を止める期日”は最長で5年目までとし、変更をする場合も五年を超えて設定することはできません。
4

“根抵当権の借入金額の変動を止める期日”を変更する場合は、必ず期日が来る前にその登記を行ってください。

期日を過ぎてから「期日を変更する」と登記をしても変更は認められず、いったんその日に借入金額は確定することになります。
“根抵当権の借入金額変動を止める”ことを《元本の確定》といいます。
原文
根抵当権の借入金額の変動を止める前に
第398条の7

たとえ根抵当権の借入金額の変動を止める前に、根抵当権を譲り受けたとしても、当人に代わってこの根抵当権を行使することはできません。

同様に、根抵当権の借入金額変動が止まる前に当人に代わって借金を返済してあげたとしても、当人に代わってその根抵当権を行使することはできません。
2

根抵当権の借入金額変動が止まる前に、根抵当権の当人の債務を肩代わりする人がいたとしても、その人に対して根抵当権の影響を及ぼすことはできません。
3

普通の抵当権であれば、当事者に代わって債務の責任を引き受ける人が現れたら、債権者としてはこの人の財産などに担保を移すことが認められます。(第472条の4第1項)

しかし根抵当権の場合、根抵当権の借入金額変動が止まる前に、当事者に代わって債務の責任を引き受ける人が現れたとしても、債権者がこの人の財産などに担保を移すことは認められません。
4

普通の抵当権であれば、債権者が代わる契約を巻き直した場合、代わる前の債権者から根抵当権を移し替えることが認められます。

また、債務者が代わるように契約を新たに巻き直した場合、代わる前の債務者の財産であっても根抵当権の担保を移し替えることが認められます。(第518条第一項)

しかし、根抵当権の場合、債権者が代わる契約を巻き直しても、代わる前の債権者が代わった後の債権者に根抵当権を移し替えようとすることは認められません。

また、根抵当権の債務者が代わるように契約を新たに巻き直しても、代わる前の債務者が代わった後の債務者の財産に担保を移し替えることは認められません。
原文
根抵当権の相続
第398条の8

借入金額変動を止める前に根抵当権の契約によりお金を貸す側の権利を相続により譲られたら、お金を借りる側の合意を得た上で、相続前に発生していた借金を返してもらう権利はもちろん、相続後に発生した借金を返してもらう権利についても有効となります。
2

借入金額変動を止める前に根抵当権の契約によりお金を借りる側の義務を相続により譲られたら、お金を貸す側の合意を得た上で、相続後に借りたお金を返す義務はもちろん、相続前に発生していた借金を返す義務についても有効となります。
3

当事者の間で根抵当権の相続を合意をした場合にも、第398条の4第2項の規定を同じように適用するので、優先順位が低い抵当権を持つ人やその他の人の承諾を得る必要はありません。
4

第1項や第2項にある根抵当権に関する相続を相手に合意をしてもらった場合には、相続から6ヶ月以内に登記をしなければ、根抵当権の借入金額変動は止まえうことになり、根抵当権によってそれ以降の支払いの義務や権利は有効にはなりません。
原文
根抵当権を設定している法人の合併
第398条の9

借入金額変動を止める前に根抵当権の契約によりお金を貸す側の権利を持つ法人が合併した場合、合併してできた法人がそれ以前の借金を返してもらう権利と、その後に発生した借金を返してもらう権利の対象となります。
2

借入金額変動を止める前に根抵当権の契約によりお金を借りる側の義務を負う法人が合併した場合、合併してできた法人がそれ以前の借金を返す義務と、その後に発生した借金を返す義務の対象となります。
3

根抵当権の契約によりお金を貸す側の権利を持つ法人やお金を借りる側の義務を負う法人が合併をした場合、借入金額変動を止めて借入金額を確定させるように要請することができます。

ただし、根抵当権によりお金を貸している側の法人と、お金を返す側の法人との合併の場合は、借入金額を確定させる必要はありません。
4

根抵当権のの契約によりお金を貸す側の権利を持つ法人が他の法人と合併して借入金額を確定させる場合は、確定の時期は合併した時点となります。
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根抵当権の契約によりお金を借りる側の義務を持つ法人が他の法人と合併をしたため、お金を貸す側の企業が借入金額を確定させるための要請ができるのは、合併したことを知ってから2週間以内か、合併から1ヶ月以内に行わなれけばなりません。
原文
根抵当権を設定している法人の分割
第398条の10

借入金額変動を止める前に根抵当権を契約していてお金を貸す側の権利を持つ法人が複数の法人に別れることになったら、その中で元の事業の権利や義務を引き継ぐ法人がそれ以前の借金を返してもらう権利とその後に発生した借金を返してもらう権利の対象となります。
2

借入金額変動を止める前に根抵当権を契約していてお金を借りる側の権利を持つ法人が複数の法人に別れることになったら、その中で元の事業の権利や義務を引き継ぐ法人がそれ以前の借金を返す義務とその後に発生した借金を返す義務の対象となります。
3

根抵当権の借入金額変動を止めて借入金額確定をしたり、その時期と期限を決めることに関する規定(第三百九十八条の九条第三項から第五項まで)は、根抵当権によりお金を貸したり借りたりしている法人が複数に別れる場合も同じように適用することとします。
原文
根抵当権は手放すことができない
第398条の11

借入金額変動を止める前の根抵当権については、抵当権の順位の低い人のために、第376条第1項に規定されている次の行為することはできません。
  • 根抵当権を譲ること
  • 根抵当権の順位を譲ること
  • 根抵当権自体を放棄すること

ただし、根抵当権を担保にすることについては認められます
2

借入金額変動を止める前の根抵当権は抵当権と違い、債務者が順位が変わったことを知りながら、順位が下がった債権者に債務を果たても、順位が上がった債権者の言い分通り債務を果たす必要に迫られることはありえません。
原文
根抵当権を譲り渡す時には
第398条の12

根抵当権の債務者の承諾を得れば、借入金額の変動を止める前でも、根抵当権を他人に譲り渡すことができます。
2

自分が持つ根抵当権を二つ以上に分割して、その内の一方の権利を譲り渡すこともできます。

担保がついている根抵当権の場合、分割して譲渡された側の根抵当権には担保がつかず、手もとに残った根抵当権に全額分の担保が設定されます。
3

根抵当権に担保を設定している人がいる場合、根抵当権の切り分けた一部を譲り渡すためには、予め彼らの承諾を得ておく必要があります。
原文
根抵当権を部分的に譲って共有するには
第398条の13

根抵当権の債務者の承諾を得れば、借入金額変動を止める前でも、自分が持つ根抵当権を他の人との共有の権利にすることができます。
原文
根抵当権を共有している場合は
第398条の14

根抵当権を共有にした場合は、共有の割合に応じて支払いを受けられます。

しかし借入金額変動を止める前に、共有の割合とは違う割合で支払いを受けたり、一方が優先的に支払いを受けるという取り決めをしていれば、共有の割合に応じた支払いを求める必要はありません。
2

根抵当権を共有している場合でも、別の共有者の同意と根抵当権の債務者の承諾を得ていれば、借入金額変動を止める前でも、根抵当権を他人に譲り渡すことができます。
原文
優先順位が上がった根抵当権を譲り受けたら
第398条の15

権利の譲渡や放棄により優先順位が上がった根抵当権を(一部でも)譲り受けたら、そのまま上がった優先順位が通用します。
原文
複数の不動産をまとめた根抵当権
第398条の16

契約をすると同時に登記しなければ、複数の不動産をまとめて一つの根抵当権の担保として設定することはできません。
《共同抵当(第392条第393条)》と同様に、複数の不動産で一つの根抵当権を設定することを《共同根抵当》といいます。
原文
まとめた根抵当権の変更
第398条の17

「複数の不動産をまとめて一つの根抵当権の担保として設定」したことを登記する場合、それらをちゃんと有効にするには、必ず全ての不動産についての登記をしなければなりません。
  • 根抵当権の担保する借金の金額の変更
  • 借金の支払いをしなければならない人の変更
  • 根抵当権の上限金額の変更
  • 根抵当権の権利を譲り渡すこと、または一部を譲り渡すこと
2

複数の不動産が根抵当権の担保として登記されている場合、ひとつの不動産に関してのみ借入金額の変動を止めようとしたら、全部の不動産の根抵当権の借入金額の変動が止まることになります。
原文
複数の根抵当権を設定している場合
第398条の18

複数の不動産の担保をまとめた根抵当権とは違い、あちこちの土地を担保にしてそれぞれの根抵当権を設定してお金を借りた場合は、それぞれの上限金額まで合計してお金を借りることができます。
“あちこちの土地を担保にしてそれぞれの根抵当権を設定してその合計のお金を借りる”ことを《累積根抵当権》といいます。
原文
根抵当権の金額変動を止めさせるには
第398条の19

根抵当権を設定してから3年が経過したら、根抵当権により借金をしている人はその根抵当権の金額変動を止めてもらえるようになります。

金額変動を止めさせ後、2週間を経過したらその支払い金額が確定します。
2

根抵当権によりお金を貸している人は、自分の都合でいつでも根抵当権の金額変動を止めさせることができます。
3

根抵当権の金額変動を止める期日が予め決まっている場合は、前の2項の規定のように期日より前に金額変動を止めることはできません。
原文
根抵当権の変動する借入金額を確定するには
第398条の20

次のような場合には、根抵当権の借入金額の変動が止まり金額が確定します。

根抵当権が設定されている不動産に対して、裁判所に次の手続きをした場合。
  • 競売
  • その不動産から得られる利益の裁判所による差押え
  • 担保物件がお金に代わった場合の差押え

ただし、実際に「競売」や「差押え」が行われる場合に限ります。

根抵当権がかけられた借金の支払いが滞り、根抵当権が差押えられた場合。

根抵当権を設定している人が、「根抵当権の設定された不動産が競売にかけられた」「借金を滞納したので差押えにあった」ということを知ってから2週間を経過した場合。

根抵当権を設定されている人または借金の支払う義務のある人が裁判所から「破産した」との裁定をされた場合。
2

競売や差押え(前項第3号)または破産(前項第4項)との裁判所の裁定が、よくよく調べて無効となった場合は、いったん確定しかけた借入金額は確定しないこととみなします。

ただし、借入金額が確定したと判断してすでにその根抵当権やそれに関わる権利を入手した人がいるような場合は、やはり借入金額は確定したこととします。
原文
根抵当権の上限金額の減額要求
第398条の21

根抵当権の借入金額の変動を止めた後には、根抵当権により支払い義務を負う人は、一般的な抵当権と同じようにその根抵当権の上限金額を「実際に借りている金額」に加え、変動を停止してから2年間分の「利息と支払いが滞ったことによる損害賠償」との合計に限ってもらえるように要求することができます。
2

前項の規定に基づき、複数の不動産を同時に一つの根抵当権の設定をしていること(第398条の16)を登記されている根抵当権の上限金額を減額する場合は、複数ある不動産の内の一つの不動産について減額の要求をすれば、全体の不動産についての減額を請求したことになります。
原文
根抵当権の消滅を要求するには
第398条の22

他人が根抵当権を設定するために自分の不動産を担保にしてあげた人と、根抵当権がついている不動産を手に入れたり、地上権・永小作権・裁判所にも認めてもらえる賃貸権を手に入れた人だけに該当する条文です。

根抵当権の借入金額の変動を止めた後、決めていた上限金額を上回る借入金があるとわかった場合は、その上限金額に相当する金額だけを支払うか供託すれば、その根抵当権は無しにしてもらうように要求してもかまいません。

この場合の支払い(または供託)は、借入金の返済をしたこととして認められます。
2

複数の不動産をまとめた根抵当権を設定している場合、前項の要求を該当する不動産の内の一つにすれば、それによって他の全ての不動産に対しても根抵当権を無しにする要求をしたことになります。
3

第一項はあくまでも特定の人を対象にした規定なので、抵当権を無しにする規定(第380条第381条)に該当する場合は、根抵当権についても同じ様に適用するため、無しにしてもらう要求はできません。
原文
第3編 債権:相手に何かをしてもらう権利

第2編 第9章 質権:貸す代わりに何かを預かる権利
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民法改正に伴い

改正
  令和5年4月1日に施行される条文(かみくだし作業済)

改正 令和5年4月1日に施行される条文(かみくだし作業前)

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